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時間を味方につける

2015.07.17

睡眠が脳を育てる・迷ったら寝てしまう

米山 公啓

脳に学ぶ経営戦略

健康 身体

睡眠が「忘れない記憶」に整理する

睡眠時間が短くなると、運転など視覚関連の仕事でミスが多くなることがわかっている。だから仕事のクオリティーを維持するためには、最低4時間半から6時間の睡眠が必要になる。

足りない分は土日に長めに寝て、7時間半くらいの睡眠を取ることが重要になってくる。毎日の規則的な睡眠が必要というわけではなく、2週間くらいの間に睡眠不足を解消していけばいい。

睡眠が脳を休ませるというだけでなく、記憶の定着化、つまり忘れない記憶に変化させているという考え方は、わりと最近の考え方だ。

私が小説を書いているとき、ストーリー展開に行き詰まり、その展開を考えながら寝てしまうと、目がさめたときに解決策を思いつくことが多かった。これは単なる偶然ではない。睡眠中に記憶の整理がされて最適化が起こるようなのだ。

睡眠が脳を休ませるという考え方より、むしろ脳は積極的に使われていると考えるべきだ。睡眠中は脳の血液の量が増えるし、神経栄養因子も増えて脳は活性化してくる。そして寝る前の様々な情報を整理し、忘れない長期記憶に変化させていると考えられている。つまり日常生活で情報を取り入れたり、何かを学習したあと、寝ることによって学習効果が上がってくるのだ。

バスケットボールの選手を使った研究では、普段の睡眠よりもさらに眠るように指示した場合、運動の反応性や、フリースローの精度が上がることがわかっている。運動もある種の記憶だから、よく眠ったほうが運動プログラムの最適化が起きて、スキルアップすることが考えられる。

もはや眠ることはサボっているわけではなく、脳の活性化を作り出していると考えるべきだろう。

睡眠にはレム睡眠とノンレム睡眠があるが、深いノンレム睡眠のときに「嫌な記憶」を消し去り、浅いノンレム睡眠のときに運動プログラムの記憶整理をしたり、いろいろな記憶を関連づける作業をしている。これは記憶を思い出すときに、そういった関連性がたくさんあればあるほど思い出しやすくなる。

脳の掃除と睡眠

最近では、さらに別なこともわかってきた。ハツカネズミの脳血流量と脳脊髄液を観察すると、睡眠中に脳の掃除機能が活性化することがわかってきた。起きているときに比べ、その能力は10倍にもなる。脳細胞を支える役目のグリア細胞は睡眠時に60%小さくなり、脳脊髄液が流入できるように大きな空間を作り出す。それによって脳の中の掃除が効率よくできるのだ。

アルツハイマー型認知症では、アミロイドβという余分なタンパク質が作り出されて蓄積することが神経細胞を破壊する原因になるので、この脳の掃除機能がより働けば、それを予防できる可能性がある。

やはり睡眠は脳にとって非常に重要な時間であることがわかる。

若いうちは睡眠を削って仕事ができるかもしれないが、ある程度の歳になれば、脳の記憶定着機能と掃除機能を活発化させるために、十分な睡眠が必要になる。何か決断に迷ったら、ちょっと寝てしまうというのも良い方法かもしれない。

なお、眠り付けなくて悩む人は多いが、早く布団に入ってしまって、そこから眠るまでに時間がかかることで不眠を訴える場合も多い。そんなときは眠くなるまで布団に入らない。これが早く寝付くコツだ。

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プロフィール

米山 公啓 (よねやま きみひろ)

1952年山梨県生まれ。作家、神経内科医。元聖マリアンナ医科大学第2内科助教授。現在までに280冊以上を上梓。講演会、テレビ・ラジオ出演、テレビ番組企画・監修なども行う。日本老年学会評議員、日本脳卒中学会評議員、日本ブレインヘルス協会理事。