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人を組み替える

2015.05.08

脳の学習機能が、新しい発想の邪魔をする

米山 公啓

脳に学ぶ経営戦略

方法論 イノベーション

私たちは見えない“規制”の中で発想している。自分は自由な発想ができる、アイデアを出せると思っていても、やはりまったく知らない世界の発想で仕事はできないものだ。

例えば、マンションのリノベーションの仕事において、キッチンの位置を工夫したり、対面式にしたりはできるだろう。しかし、自宅で料理もせず、コンビニとデリバリーで大丈夫という生活スタイルのお客に対して、設計者が「キッチンは必要ないからガス台を撤去する」というところまでは発想しないものだ。

人は平均値で考え、従来からの仕事の延長、知っている範囲で工夫するということしかできないからだ。つまり「思考の習慣化」とも言えることが起きる。これが起きてしまうと、大胆で画期的な発想ができないのは、当然とも言える。

学習機能が発想の邪魔をする?

脳は、同じ刺激を受けることによって神経細胞ネットワークをつくりだす。それが次第に情報処理の効率化を図り、最終的には無意識のうちに処理できるようになる。

分かりやすい例は、ゴルフのスイングである。練習を続けることによって、スイングのプログラムが脳にできあがっていき、初めは肩の位置やグリップなどを気にしているが、最後は無意識にスイングできるようになる。つまり、学習が完成するのだ。

しかし、こうやって一度できあがってしまったスイングを変えることは非常に難しい。より上手になろうとすると、スイングの改造に非常に時間がかかってしまう。これは脳の持つ機能であるが、欠点でもある。学習効果によってできあがった脳内プログラムが仇となって、さらなる進歩を邪魔するのだ。発想も同じで、習慣的な発想を続けていれば、それを打ち破ることがいかに難しいか分かるはずだ。

常識を打ち破る発想法

では、どうすれば画期的な発想ができるのだろうか。

1)外部からの発想を取り入れる

町おこしの問題点は、町内の仲間が集まっていくら思いを巡らせても、ありきたりのものしか思いつかないということだ。日本の観光地の多くが、外国人によってその良さを発見されている。日本アルプスは1896(明治29)年にウォルター・ウェストンがイギリスへ紹介したことで、逆に日本人がその良さに気付くことになった。軽井沢も避暑地として1886年にアレクサンダー・クロフト・ショーが友人に紹介したことから、次第に知られることになる。町おこしや地域おこしでは結局、外からの視点が重要になってくる。内部からの発想には限界があると考えるべきだろうし、外からの意見を取り入れる柔軟性が必要になる。

2)異業種の発想を利用する

日本における白物家電のデザイン性の悪さを指摘してきたのは、建築家だった。「ユーザーは機能を重視する」というのが家電を作る側の従来の視点だったが、その延長線上では「キッチンに収まる“洗濯機”」という発想は出てこない。

「洗面所でもキッチンでも美しく、出っ張りのないスッキリしたデザイン」という洗濯機は、作る側の発想からは出てこないのだ。異業種の意見を取り入れる勇気があるかどうかだろう。

3)自らは発想できないと理解すること

会議でいくら考えても、画期的な発想にたどり着くことはまずできない。自分という習慣的な思考プログラムから、全く新しいアイデアは出てこないものだと理解することが重要である。習慣的になった脳の回路からは、画一的なものしか出てこないことを、まずは認めるべきだろう。

4)“思考の習慣化”のスイッチを入れないようにする

・会議室での会議をやめる

会議室では新しい発想ができないと言われるように、まさに会議室に行くという行動自体が同じような発想を誘く。場所や雰囲気を変えて会議するのは、想像以上に重要なことだ。

・「コーヒーを飲みながら」をやめる

リラックスするために飲み物を飲みながらというパターン化された行動が、やはり習慣的な思考のスイッチを入れてしまう。思考の習慣化を促すような行動・感覚的な刺激を防ぐことが、新しい思考を可能にするための一歩となる。

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プロフィール

米山 公啓 (よねやま きみひろ)

1952年山梨県生まれ。作家、神経内科医。元聖マリアンナ医科大学第2内科助教授。現在までに280冊以上を上梓。講演会、テレビ・ラジオ出演、テレビ番組企画・監修なども行う。日本老年学会評議員、日本脳卒中学会評議員、日本ブレインヘルス協会理事。