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人を組み替える

2016.05.02

相手を支配してはいけないのか

米山 公啓

脳に学ぶ経営戦略

感情 競争

相手を支配するとか征服するという言葉は否定的な意味で使われてしまう。大きな意味では国家間の問題となり、個人的な意味では、常に喧嘩やいじめの原因となる。

しかし、何かを支配したいという気持ちは、人間の非常に根源的な欲求であり、それがあるから様々な意欲が生まれるとも言える。こういった脳を、善い方向でうまく仕事に使うことはできないだろうか。

支配欲を作り出すテストステロン

テストステロンは男性ホルモンの代表格で、人間の行動に様々な形で影響している。脳の中では重要な神経伝達物質として作用している。動物でも、このテストステロンが多いほうが勝者となって生き残り、自分の子孫を残せる確率が上がってくる。

テストステロンは男性だけでなく、女性においても分泌され、行動に影響を及ぼしている。常に競争して売り上げを伸ばそうと仕事している女性は、専業主婦の女性よりもテストステロンが多いことがわかっている。

テストステロンは人を暴力的にしたり、権力に立ち向かおうとさせる。そのために、反社会的になったり、死亡率を上げるというリスクもある。逆に言えば、それくらいの闘争力を作りだすテストステロンがあるからこそ、実業家として成功していくのだろう。支配したい、すべてを手に入れたい、そんな欲望が経営者にあってこそ、会社は成功していくのだ。

従順な社員を望めば経営は失速する

いま、戦後に大きく伸びた大手企業の経営が行き詰まっている。これは大企業がたどり着く一種の結論のようなものだ。

急成長するには、テストステロンが多い経営者の下、従順な(つまりテストステロンの少ない)社員が黙々と働き続けることで、会社は伸びていく。しかし、そこには限界がある。ある商品で急成長しても、消費者には必ず飽きられてしまう。だから、あるときからその商品は売れなくなり、経営は悪化してくる。

そこでテストステロンの多い経営者がいくら努力しても、それを突破できるアイデアは出てこない。無論、従順なる社員からもアイデアは出てこない。社員の中に、闘争力があり、権威に反抗的である者がいて、画期的な突破口を見いだせる組織でなければ継続的な成長は望めないのだ。

成長していた組織がだめになっていくとき、ほとんどがそういった状況に陥っているわけだ。将来を考えるなら、統率力のある経営者がどれだけ自分のリスクを冒しながら、自分に反抗できうるテストステロンの多い社員を採用できるかが重要ではないだろうか。

脳の仕組みは、そこに必要性が存在する

意欲や快感を生み出すドーパミンは、時にギャンブル依存を作り出してしまう。金を稼ぐことだけに快感を覚えてしまえば、自分自身をだめにしていく。また、活動性を作り出すノルアドレナリンが出続けてしまうと、強度のストレス状態となり、心身共に疲弊していく。テストステロンは仕事をしていくためには必要であるが、それだけに支配されていくと、今度は組織そのものが崩壊していくのだ。

こういった脳内物質は私たちの行動を大きく支配しているが、それは生物として必要なものだからである。しかし、それが会社や社会にとって重要なものであるにもかかわらず、いまだに“適度な分泌”をコントロールできないでいるのも確かだ。私たちの遺伝子変化が社会の進歩についていけないのか、あるいは遺伝子変化が起こるには、あまりにも時間がかかってしまうからなのか。

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プロフィール

米山 公啓 (よねやま きみひろ)

1952年山梨県生まれ。作家、神経内科医。元聖マリアンナ医科大学第2内科助教授。現在までに280冊以上を上梓。講演会、テレビ・ラジオ出演、テレビ番組企画・監修なども行う。日本老年学会評議員、日本脳卒中学会評議員、日本ブレインヘルス協会理事。