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時間を味方につける

2016.01.21

脳科学を応用した講演力

米山 公啓

脳に学ぶ経営戦略

コミュニケーション プレゼンテーション

人前で話をするとき、いかにその内容を伝えれば良いだろうか。

そういうときは聴く側の脳の特徴を活かして話すと良い。私自身、年間30回から40回くらいの講演をしている。昔は人前でしゃべるのが苦手だったが、聴き手の脳の働きを考慮するようになって、いまや聴衆が多いほど、しゃべっていることが楽しく感じられるようになった。

医学部での講義を10年くらいやって、そこで基本的な講義の仕方に慣れ、次第に講演のテクニックも学んだ。現在は認知症や脳活性についての講演を全国で行っているが、その講演方法はやはり脳の特徴を活かして行っている。

マクラの重要性

落語でいうマクラは導入部分のことで、重要な意味を持つ。講演において聴く側というものは、始めに緊張感を持っている。まず、これをリラックスさせることが必要である。緊張感を持って聴いている場合、共感や感動を生み出しにくくなる。本題に入る前にリラックスさせることで、聴く側の脳をより柔軟にすると、イメージが膨らみやすくなる。

私の印象に残っている名マクラは、ある漫談家のもの。まだ森繁久彌さんがお元気だった頃、「いま、連絡がきまして、入院療養中の森繁久弥さんが……病院で看護師さんと家族に見守られて昼食を取りました」というネタだった。一瞬、不幸があったのかと緊張させて、笑わせてしまうその落差こそが、マクラとして非常に効果のあるものだった。

初頭効果と新近効果

1時間の講演であれば、始めの10分くらい(初頭効果)と、終わりの10分くらい(新近効果)を記憶していて、真ん中のことは記憶に残りにくくなるのが記憶の特徴だ。それは個々人の能力差というより、普通のことである。

だから、講演会で長々と説教のようなことをやっても、聴衆の記憶には残りづらい。導入部分の時間と終わり頃の時間に、集中して自分の思いを何度も強調するべきだろう。

笑いの必要性

ユーモアは講演に不可欠の要素である。研修であろうと、教育であろうと、そこに笑いがないと、退屈な講義や講演だと思われてしまう。優秀な研究者であろうと、自分の思いだけでは、相手の心を揺さぶることは難しい。

笑いは一種の共感である。同じように面白いと感じたから笑うのであって、笑いがあることは、いまの自分の講演が受け入れられているということでもある。

私自身、笑いの要素を10分おきくらいに入れることを意識的に行っている。また、聴衆の反応でどこか眠くなっているような雰囲気があれば、覚醒させる意味でも笑えるような話を入れるようにしている。

熱い自分の思いをいくらしゃべっても、相手の気持ちを共感させなければ、退屈な説教で終わってしまう。何しろ、内容の正しさ以上に退屈かどうかに左右されるのが現代人の感覚だ。

エピソードを入れる

客観的な事実だけをしゃべるなら本を読めばいいわけで、わざわざ講演を聴く必要もない。そう判断されるのが昨今だ。やはり実体験からくるエピソードこそ、共感できるし、話に嘘がないのだ。

わかりやすいエピソードを必ず講演には入れていくべきだろう。医療であれば、実際の患者さんの話を聞くとイメージしやすくなる。イメージさせることは右脳を刺激できるので、それ自体が記憶に残りやすくなる。

まとめは必要

講演の終わり頃には、必ずまとめを入れるべきである。これにより記憶はチェックされ、強調によって印象づけられ、忘れない記憶にしていくことができる。

講演会の場合、聴く側が面白かったと感じるだけで終わっては意味がない。その人の行動が変わるくらいのインパクトが欲しい。そのためにも、行動に結びつくような要点を3つくらい絞り込んで、最後のまとめを話すとよい。

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プロフィール

米山 公啓 (よねやま きみひろ)

1952年山梨県生まれ。作家、神経内科医。元聖マリアンナ医科大学第2内科助教授。現在までに280冊以上を上梓。講演会、テレビ・ラジオ出演、テレビ番組企画・監修なども行う。日本老年学会評議員、日本脳卒中学会評議員、日本ブレインヘルス協会理事。