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カネを活かす

2016.12.20

税務調査で否認されない「領収書」の要点

樋口 秀夫

事業主さんのための攻めの節税

法律 節税 制度

自分で金額を書き込んでもいい? 領収書のない支払いは?

今秋10月6日の参院予算委員会で、稲田朋美防衛相に「政治とカネ」の問題が浮上しました。報道によれば、稲田氏の資金管理団体「ともみ組」の政治資金収支報告書に添付された領収書のうち、約520万円分の領収書の宛名、日付、金額の筆跡が同じであり、事実上、稲田氏側が金額を記載したというもの。この問題に絡み、政治資金規正法を所管する高市早苗総務相は「領収書作成方法は法律で規定されておらず、法律上の問題は生じない」との見解も示しています。

この国会でのやり取りを聞いて、高市総務相が示したように「法律に領収書の作成方法が規定されていないから、どのような方法で作成しても法律上の問題がない」というのは、国民の一般常識からかなりかけ離れた見解で、大臣側の答弁に納得された方はほとんどいないのではないかと思われます。

身近なところで考えれば、税務調査において、宛先や日付が不明な領収書が出てくれば当然問題視され、経費性を疑われます。また、社内で経費精算しようとしても、経理担当者からクレームがつくのは当然予想されることです。まして稲田防衛相のように、白紙で受領した領収書に自身で金額を書いたような場合は、取引の証拠として認めてもらえないというのが一般的な見解かと思われます。

ではいったい、どのような形で領収書を受領すれば税務調査などで問題にならないのか、また領収書がもらえないような場合、経費性を証明するのにどのような対処方法が考えられるのか、検討していきたいと思います。

1. 領収書の役割と形式

私たちは商品を購入したり、サービスに対する支払いをしたとき、その支払いを証明する証憑をもらいます。その証憑は、コンビニにおける少額の支払いであるような場合はレシートであるかもしれませんし、金額が多額になる場合は宛名の書かれた領収書をもらうかもしれません。この領収書とは、どのような役割を果たすものなのでしょうか。

[1]領収書の果たす役割

領収書とは、商品やサービスなどに対して金銭などの受け渡しがなされたときに、それを証明するために「金銭の受け取り側」が発行する書面です。つまり金銭の受領の証拠としての役割を果たしているのが「領収書」です。その受領を怠ると、再度の支払い、二重払いのおそれがあります。

[2]領収書の発行時期、作成方法

(1)領収書の発行時期

領収書を発行する場合、領収書は金銭の支払いと同時に行うことが通常です。法律は、「弁済をした者は、弁済を受領した者に対して受取証書の交付を請求することができる」(民法第486条)と規定しています。

ここで規定されている受取証書が領収書で、領収書の交付と金銭の支払いとは同時履行の関係になり、金銭を受け取る方は、領収書を発行しなければそれを受け取ることはできず、これとは逆に金銭を支払う方は、領収書を発行してもらわなければ、その支払いを拒否するこができるということになります。

(2)作成方法

領収書の作成方法に関しては、高市総務相の見解のように法律で一定の決まりはありません。従って市販の領収書でも、名刺の裏に手書きで作成しても問題はなく、パソコンでテンプレートを利用してワード・エクセルなどを使用して作成することもできます。

しかし、領収書は金銭を受け取ったという証拠の役割を果たしますので、その性格上、絶対的に記載しなければならない事項があります。

金額:変造されないように記載します(「金額」については、後から変造を防止するため、金額の始めに「金」「¥」、後には「也」「-」を記載します。また3桁ごとにカンマを入れます)。
受取権者:この記載がないとお金の受け取りの証拠としての役割を果たすことができないことになります。
但書:支払内容を特定するために具体的に記載します。
日付:利息、遅延損害金などで問題が生じないために記載します。
宛名:領収書が他に流用されないように、受取人が記載します。

[3]領収書作成上の問題点

(1)日付について 日付の異なる領収書は有効か

領収書の日付を実際に金銭を支払った日と異なった日付にして作成することが行われていると思われます。実際に金銭を支払った日付と異なった日付が記載された領収書の効力は、果たして有効なのでしょうか。

法律上は、お金を支払い、それを受け取ったという事実がある以上、日付が異なっていても領収書(受取証書)としての効力には問題がないとされています。

しかしながら、異なった日付けの領収書を使用することによって、経費として計上する年度が異なってしまうようになると、不正に税金を免れたり、不正に税金の還付を受けるようになる結果となります。その場合、取引自体が仮装行為となりますので、その結果、重加算税を徴収されたり刑罰を科せられる恐れがありますので十分注意が必要です。

(2)領収書の宛名

領収書の宛名は、お金の支払人を記載することが通常ですが、商慣行上「上様」と記載される場合があります。「上様」の場合、他人に流用される恐れがありますので、税務調査のときにはクレームがつくこともあります。従って、会社の名刺を提示するなどして、できる限り支払人の氏名・商号を宛名に記載してもらうことが適当です。

(3)金額を支払者自身で記載した場合

稲田氏のように金額を支払者自身で記載した場合は、どのようなことが考えられるでしょうか。税務調査において、筆跡が支払者自身であった場合、調査官は受取人に対して反面調査を行うかもしれません。受取人側の帳簿書類を調査し、日付、金額などが一致していれば問題はないと思われますが、一致していない場合は申告内容の訂正を求められるものと思われます。

最悪の場合、自分で領収書の金額を書き入れると、正式の領収書とは認められず全額否認される可能性もあります。稲田氏のような場合は例外と考えたほうが良いと思われます。

2. 領収書がない場合の対処方法

[1]領収書がない場合の証明方法

様々な事情で領収書をもらえなかったり、領収書をなくしたりしたときは、後になって税務調査で問題となることを防ぐために、別に支払った証拠をきちんと残さなければなりません。

買い物など、通常の経済取引において領収書をもらえないケースはまず起こらないと思いますが、仕事上の“お付き合い”で葬儀に参列した際の香典や、関係者の結婚披露宴、パーティーに参加したときのお祝い金などは慣習上、領収書をもらうことはできません。

また、単純に領収書を発行してもらったものの、紛失してしまうケースも考えられます。この場合、法律上、発行者に再発行義務はありませんので、事実上の問題として再発行をお願いするしかありませんが、それが拒否される場合も考えられます。

税務調査においては、基本的に領収書がないと経費を支払った証拠とはならず、領収書がない場合、支払ったことを証明するのにひと苦労します。しかし、そもそも領収書は支払いをした事実を証明するための証拠書類ですので、別の方法で以下のことが証明できれば、領収書が無くても税務調査を乗り切ることができるものと思われます。

・いつ(日付)
・誰が(宛名)
・誰に対して(領収した人)
・何を(但書)
・いくら(金額)

領収書をなくしてしまっても簡単にはあきらめないで、証拠資料を見つける努力をしましょう。飲食店などで領収書をなくしてしまったならば、手帳などに記載した予定表・メモから、いつ、誰と、どこで飲食したなどが判明すれば、金額は飲食店などに確認することが可能でしょう。この場合、客観的に見て金銭の授受があったことを示せる証拠があるかどうかが重要なポイントになると思われます。

[2]領収書の代替となる具体的な証拠

また、領収書がもらえないからといって税務申告で必ず問題が生ずるかといったら、そんなことはありません。以下のように領収書の代わりとなるものはたくさんあります。

領収書を補完する資料

3. 税務調査に備える

税務調査において、領収書があればすべて経費として認められるかというと、決して100%というわけにはいきません。

話は少し逸れますが、脱税の手口といえば、売り上げの隠ぺい、経費の水増しなどが容易に想像されます。そして経費を水増しする手口のうち、もっとも簡単に行われるのが領収書に手を加える方法です。架空の領収書なども利用されるようですが、反面調査などで発覚する可能性は高く、国税当局もそのような手口を「B勘」と呼び、マークしているようです。

税務職員は、税務調査における領収書の確認作業の過程で、不正な手法によるものではないかという視点も含め、様々な角度から不正を追及しようとします。その努力の結果、大きな不正が発覚することもあると言います。

そのように税務調査が行われていますから、脱税を意図して行っていないにもかかわらず、ちょっとした油断で白紙の領収書をもらってきてしまったような場合、きちんと対処をしておかないと、不正を指摘されてしまうような結果になることも考えられます。

広島市議会においては、各地で政務活動費の不正受給が相次いだことなどを受け、政務活動費の領収書に関してインターネットで公開することを申し合わせたそうです。政治の世界でも、白紙の領収書や、いい加減な領収書では通用しない時代が来ていると言えるでしょう。

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プロフィール

樋口 秀夫 (ひぐち ひでお)

IAU税理士法人・樋口事務所所長。1952年東京都生まれ、立教大学経済学部経済学科卒。1982年税理士試験合格、1985年6月税理士事務所開業。税理士は税務における納税者の弁護人であるという理念に基づいた業務内容に特徴があり、多種多様な業種のクライアント多数。