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カネを活かす

2015.10.01

相続税を節税するには、生前贈与で現金預金を減らす──不動産編

樋口 秀夫

事業主さんのための攻めの節税

老後 法律 節税

贈与税の基礎控除を利用する(110万円)

贈与税は、その年の1月1日から12月31日までの1年間に贈与により取得した財産の合計額(複数からの贈与によって財産を取得している場合はその合計)を計算の対象とするのですが、贈与により取得した財産の合計額から基礎控除額110万円を差し引いて課税価格を計算し、これに税率を乗じて税額を計算します。

基礎控除を使うことにより、1年間に相続人1人あたり110万円の贈与を無税とすることができます。

贈与税の特例──居住用不動産の配偶者控除を利用する(2000万円)

婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、居住用不動産又は居住用不動産を取得するための金銭の贈与が行われた場合、基礎控除110万円のほかに最高2,000万円まで控除(配偶者控除)できるという特例です。その要件は以下のとおり。

・夫婦の婚姻期間が20年を過ぎた後に贈与が行われたこと
・配偶者から贈与された財産が、自分が住むための国内の居住用不動産であること又は居住用不動産を取得するための金銭であること
・贈与を受けた年の翌年3月15日までに、贈与により取得した国内の居住用不動産又は贈与を受けた金銭で取得した国内の居住用不動産に、贈与を受けた者が現実に住んでおり、その後も引き続き住む見込みであること

この制度を使うことによって、法定相続人である配偶者に2110万円(110万円基礎控除含む)の贈与をすることができます。ただし、相続時においても配偶者控除はありますので、どちらが有利か考慮する必要があります。

相続時精算課税制度を利用する(2500万円)

平成15年1月1日から、通常の贈与制度と選択できるという形で「相続時精算課税制度」が導入されました。この制度を選択すると、贈与された額が複数年にわたり利用できる特別控除額(限度額:2,500万円。ただし、前年以前において、既にこの特別控除額を控除している場合は、残額が限度額となります)までは贈与税を支払うことはなく、これを超える部分について一律20%の贈与税が課税されます。

そして、この相続時精算課税を選択した者の相続発生時には、その贈与価格を相続財産に加算して相続税を計算して精算します。ただし、相続時に加算される贈与財産の評価は、相続開始時ではなく、その贈与時の価額により、既に納付した贈与税額は相続税から差し引かれます。

※相続時精算課税に係る贈与税額を計算する際には、暦年課税の基礎控除額110万円を控除することはできませんので、贈与を受けた財産が110万円以下であっても贈与税の申告をする必要があります。

適用されるのは、贈与者については、贈与をした年の1月1日において60歳以上の親又は祖父母、受贈者については、贈与者の推定相続人である贈与を受けた年の1月1日において20歳以上の子又は孫とされています。

※ただし、次にかかげるような住宅取得等の資金の贈与の場合は、贈与者(原則として父母)の年齢が60歳未満であっても相続時精算課税を選択することができます。

(1)贈与を受けた年の翌年の3月15日までに、住宅取得等資金の全額を居住用の家屋の新築又は取得のための対価に充てて新築又は取得をし、同日までに自己の居住の用に供したとき又は同日後自己の居住の用に供することが確実であると見込まれるとき

(2)贈与を受けた年の翌年の3月15日までに、住宅取得等資金の全額を自己の居住の用に供している家屋について行う一定の増改築等の対価に充てて増改築等をし、同日までに自己の居住の用に供したとき又は同日後自己の居住の用に供することが確実であると見込まれるとき

贈与財産の種類、金額、贈与回数に制限はありません。ただし、適用を受ける人は、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に、同制度を選択する旨の「選択届出書」、「贈与税の申告書」に添付して税務署に提出しなければなりません。

この制度のデメリットとして以下があります。

・この制度を利用し取得した、相続時に小規模宅地等の特例が受けられなくなりますので、相続時に小規模宅地等の特例の適用対象となるような宅地は、財産評価上この特例を利用しない方が有利になります。
・この制度を利用した場合、その贈与者からの贈与は暦年課税(110万円までは非課税)に戻すことができなくなります
・不動産の贈与の場合、移転コストが高い
登録免許税を考えると、相続であれば0.4%、贈与の場合は2.0%となりますので、かなり不利になります。

また、以下のことに注意が必要です。

・住宅の贈与は現金よりも住宅のほうが節税になります
住宅取得資金として現金を贈与するよりも、贈与者が住宅を建ててそれを贈与するほうが贈与時の財産評価額が下がるため、相続税の節税になります。
・孫が受贈者の場合、相続税の面で不利になることもあります

例えば祖父から孫(代襲相続人を除く)へ相続時精算課税を適用して贈与があり、祖父に相続が発生した場合、孫は相続人ではないため相続税の2割加算の対象になることになります。

住宅取得資金に係る贈与税の非課税措置を利用する(最大3000万円)

この制度は平成31年6月30日までの間に、父母や祖父母などの直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた受贈者で、下記に掲げる要件に該当する場合、住宅取得等資金のうち以下の表に掲げる金額について贈与税が非課税となります。

※平成26年以降の非課税金額枠は以下のようになります。
住宅取得資金に係る贈与税の非課税措置

この制度については以下のように要件があります。

《受贈者》

・贈与を受けた年の1月1日時点で20歳以上である
・贈与者の直系卑属(子や孫)である
・贈与を受けた年に国内に住所を有する(例外あり)
・贈与を受けた年の所得税に係る合計所得金額が2000万円以下

《住宅取得等資金の範囲》

住宅取得等資金とは、受贈者が自己の居住の用に供する家屋を新築若しくは取得又は自己の居住の用に供している家屋の増改築等の対価に充てるための金銭をいいます。なお、居住用の家屋の新築若しくは取得又はその増改築等には、次のものも含まれます。

・その家屋の新築若しくは取得又は増改築等とともにするその家屋の敷地の用に供される土地や借地権などの取得
・住宅用の家屋の新築(住宅取得等資金の贈与を受けた日の属する年の翌年3月15日までに行われたものに限ります)に先行してするその敷地の用に供される土地や借地権などの取得

《居住用の家屋及びその増改築等》

(1)居住用の家屋の要件

居住用の家屋とは、次の要件を満たす日本国内にある家屋をいいます。なお、居住の用に供する家屋が二つ以上ある場合には、贈与を受けた者が主として居住の用に供すると認められる一つの家屋に限ります。

・家屋の登記簿上の床面積(区分所有の場合には、その区分所有する部分の床面積)が50平方メートル以上240平方メートル以下であること。

・購入する家屋が中古の場合は、次のいずれかの要件を満たす必要があります。
(イ)耐火建築物である家屋の場合は、その家屋の取得の日以前25年以内に建築されたものであること。
(ロ)耐火建築物以外の家屋の場合は、その家屋の取得の日以前20年以内に建築されたものであること。
(ハ)地震に対する安全性に係る基準に適合するものとして、一定の「耐震基準適合証明書」、「住宅性能評価書の写し」又は既存住宅売買瑕疵担保責任保険契約が締結されていることを証する書類により証明されたものであること。

・床面積の2分の1以上に相当する部分が専ら居住の用に供されるものであること。

(2)増改築等の要件

特例の対象となる増改築等とは、贈与を受けた者が日本国内に所有し、かつ、自己の居住の用に供している家屋について行われる増築、改築、大規模の修繕、大規模の模様替その他の工事のうち一定のもので次の要件を満たすものをいいます。

・増改築等の工事に要した費用が100万円以上であること。なお居住用部分の工事費が全体の工事費の2分の1以上でなければなりません。
・増改築等後の家屋の床面積の2分の1以上に相当する部分が専ら居住の用に供されること。
・増改築等後の家屋の登記簿上の床面積(区分所有の場合には、その区分所有する部分の床面積)が50平方メートル以上240平方メートル以下であること。

この制度の利用にあたって、親の自宅を引き継ぐ予定のある場合は注意が必要です。例えば、この制度を使って家を手に入れ、その後相続で親の自宅も引き継ぐような場合です。この場合、相続税の計算で土地の評価が最大80%も下がる「小規模宅地の特例」という優遇制度があります。この優遇策の対象となるためには、「同居」が条件となっており、住宅を引き継ぐ相続人が持家に住んでいた場合は使えないことになってしまいます。将来、両親が住んでいた不動産を相続する予定の場合は注意が必要です。

次回は不動産以外の生前贈与について解説します。

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プロフィール

樋口 秀夫 (ひぐち ひでお)

IAU税理士法人・樋口事務所所長。1952年東京都生まれ、立教大学経済学部経済学科卒。1982年税理士試験合格、1985年6月税理士事務所開業。税理士は税務における納税者の弁護人であるという理念に基づいた業務内容に特徴があり、多種多様な業種のクライアント多数。