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カネを活かす

2015.09.29

相続税の節税──相続財産の評価額を如何に引き下げるか

樋口 秀夫

事業主さんのための攻めの節税

老後 法律 節税

平成27年度より相続税が大幅に増税されました。今回の改正の特徴は、基礎控除の引き下げにより課税ベースが下がり、課税対象者が大きく広がったこと、つまり「富裕層の税金」とのイメージが強かった相続税が、かなり「身近な税金」になったことです。財務省の試算によると、課税対象となる割合は改正前の4.2%から6%程度に増えると予想されています。東京23区に至っては、4人に1人が課税されるという試算もあります。各地で対策セミナーや相談会が開かれるなど、今までは相続税に無縁だった方が、相続税の節税対策を考えなければならない状況になっていると言えます。

相続税節税のキーポイントは相続財産の評価額を下げること

相続税の計算においては、相続、遺贈により取得した財産の100%が課税対象となるわけではありません。

(1)相続税の基礎控除
基礎控除3000万円 + 法定相続人1人あたり600万円 × 相続人の数
配偶者と子供2人というような家庭の場合、4800万円までは相続財産より控除されますので、相続税はかからないことになります。

(2)相続税の配偶者控除
被相続人の配偶者が遺産分割や遺贈により実際に取得した正味の遺産額が、次のどちらか多い金額となるまでの額について、配偶者に相続税はかからないという制度です。
・相続税の配偶者控除枠 1億6,000万円
・配偶者の法定相続分

例えば、配偶者の法定相続分が2億円であれば、2億円までが非課税となります。法定相続分が1億円であれば、1億6,000万円までが非課税となります。

相続税額の計算は、相続財産の評価を含めてかなり複雑なものです。しかし単純に言えば、上記のように相続や遺贈によって取得した財産が、相続税の基礎控除、配偶者控除以下の場合は、相続税は課税されないということです。

そして、控除額を超えるような場合には、累進的に最高税率55%の相続税が課税されます。ではこれを節税するにはどうすればいいか。相続税節税のカギは、相続税の課税価格である相続財産の評価額を如何に引き下げるかということにつきます。なぜなら相続税法においては、評価額がその評価の仕方によっては時価よりもかなり低い価額になることがあるからです。

「財産評価基本通達」には財産評価の原則として、次のように規定されています。

 財産の評価については、次による。
(1)評価単位
 財産の価額は、評価単位ごとに評価する。
(2)時価の意義
 財産の価額は、「時価」によるものとし、時価とは、課税時期(相続、遺贈若しくは贈与により財産を取得した日若しくは相続税法の規定により相続、遺贈若しくは贈与により取得したものとみなされた財産のその取得の日又は地価税法第2条《定義》第4号に規定する課税時期をいう。以下同じ。)において、それぞれの財産の現況に応じ、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額をいい、その価額は、この通達の定めによって評価した価額による。
(3)財産の評価
 財産の評価に当たっては、その財産の価額に影響を及ぼすべきすべての事情を考慮する。

「通達」とは、行政機関が所属の組織や職員に対して、法令の統一的解釈や事務取扱の基準を示した文書のことです。本来的には「法令」ではない通達が、法律と同様な拘束力を持つ「通達行政」と言われるような状況は、租税法律主義に反するのではないかとの批判もあるところです。しかし、相続税の実務界ではこの「財産評価基本通達」が法律に代わるものとして代用されているのが現実です。

相続財産を現金預金で保有していると不利になる

例えば現金預金については、次のように評価方法が規定されています。

 預貯金の価額は、課税時期における預入高と同時期現在において解約するとした場合に既経過利子の額として支払を受けることができる金額(以下203≪預貯金の評価≫において「既経過利子の額」という。)から当該金額につき源泉徴収されるべき所得税の額に相当する金額を控除した金額との合計額によって評価する。
 ただし、定期預金、定期郵便貯金及び定額郵便貯金以外の預貯金については、課税時期現在の既経過利子の額が少額なものに限り、同時期現在の預入高によって評価する。

相続時の預金残高に「既経過利子の額(源泉所得税を考慮)」を加算した金額が、相続税評価額となります。

預貯金(定期預金)の評価額=預貯金残高+既経過利子-源泉所得税相当額

預貯金と比較して、不動産(建物、土地)については評価方法が複雑です。土地の評価額の基礎とされる路線価は、不特定多数の当事者間で自由な取り引きが行われる場合に通常成立すると認められる価額よりも、低めに設定されているようです。土地の価額には、公的時価として公示価格、路線価、固定資産評価額等がありますが、公示価格を1とすると相続税の評価の基準となる路線価は0.8倍、固定資産評価額は0.7倍と言われています。

また、土地については、その形状、使用形態によって評価減が計上でき、一定面積以下の小規模宅地等については特例等により、課税額が時価に比較してかなり低めに計算できる仕組みになっています。

逆に、相続時に現金預金が多くあるという状態は、相続税の節税上、評価の特例を利用できるような財産で保有している状態に比べ、かなり不利になると言えます。

以上のことを踏まえつつ整理すると、多額の現金預金を保有している方には、次のような節税策が考えられます。

(1)贈与税の非課税の特例を利用して、将来の相続人に生前贈与する
(2)不動産の評価減の特例等の利用により、相続税評価額の有利な財産に変える
(3)生命保険等非課税財産に変える(相続人1人あたり500万円の非課税限度額)

次回に続きます。

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プロフィール

樋口 秀夫 (ひぐち ひでお)

IAU税理士法人・樋口事務所所長。1952年東京都生まれ、立教大学経済学部経済学科卒。1982年税理士試験合格、1985年6月税理士事務所開業。税理士は税務における納税者の弁護人であるという理念に基づいた業務内容に特徴があり、多種多様な業種のクライアント多数。