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カネを活かす

2015.09.01

高級スポーツカーは経費として認められるか

樋口 秀夫

事業主さんのための攻めの節税

制度 法律 節税

会社の経営者にはスポーツカーからモーターボート、はたまたヨットなどのマリンスポーツといった趣味を持つ方も多いのではないでしょうか。特にポルシェ、フェラーリなどのスポーツカーは憧れの的ですから、一度は所有してみたいと考える方も多いのではないかと思われます。まして、その購入費用が会社の経費で落とせるのであれば、一石二鳥ということになるのではないでしょうか。

フェラーリが経費として認められた判例

では高級乗用車の場合、いったいどのような基準で経費として認められたり、否認されたりしているのでしょうか。その基準は、どんな種類の乗用車であっても事業の用に供していれば、経費として認められるということです。

一例として、過去に次のような判例があります。

「フェラーリの減価償却費」

消費者金融業を営む同族会社A社は、取引先の上層部への接待や従業員の福利厚生のための船舶(プレジャーボート)と、役員の通勤及び出張時の交通手段であるフェラーリを、会社の資産として取得し、減価償却していた。

これに対し課税庁は、これらは代表者の個人的趣味により取得したものであり事業の用に供しているとは認められないとして、同族会社の行為計算否認の規定により、取得価額を役員賞与と認定したうえ、減価償却費を損金の額から減算した。

(1)船舶について
船舶については、燃料を給油した事実は認められるが、船舶利用規定の定めもなく、誰をどのような目的で乗船させ運航したかの説明はないので、事業の用に供したかどうかを確認することができない。役員個人が負担すべき船舶の維持費などの支出をA社に転嫁したことになり、利潤を追求することを目的とする経済人の行為として不合理・不自然であると認められる。

(2)フェラーリについて
A社は、他の役員用の乗用車としてロールスロイスとベンツを所有しており、これらの車は、使用する役員自身が運転し、運転記録は作成していない。A社の出張旅費規程によると社用車による日帰り出張の場合は旅費は支給しないことになっている。

フェラーリは、社長の通勤及び支店を巡回指導する際の交通手段として使用されており、このフェラーリを選定した理由は排気量が大きく堅固であること、遠方の支店に出張する際は安全性もあり、運転が楽であること、中古車として売却する際の価値もあることのほか、社長の個人的趣味もある。

車検記録を調査したところ、3年間に7598km走行しており、社長に対しては交通費及び通勤手当は支給されていない。フェラーリが、主として使用する社長の個人的趣味によって選定されたものであるとしても、現実にA社の事業の用に使用されていることが推認できる以上は、課税庁の主張を採用することはできない。

租税判例DB-WIKI

判例を整理しますと、課税庁は次のような更正処分を下しました。

・プレジャーボート及びフェラーリを購入したという行為は個人的支配ができる同族会社だからできることである。
・プレジャーボート及びフェラーリとも個人的な趣味により取得したものである。
・従って維持管理費及び減価償却費の計上は認められない。
・取得のために支出した費用は役員賞与とする。

会社側は、この更正処分を不服として提訴したところ、国税不服審判所は以下のような裁決を下しました。

(1)プレジャーボートに対する採決
・従業員の利用規定や運航事績等の記録が無い。
・全従業員が公平に利用できない。
・購入費を役員賞与とする。

(2)フェラーリに対する採決
・社長の出張旅費の支給実績を検討したところ、別途交通費は支給されていない事実が認められる。
・イタリア製の高級車で一般常識からみても個人的趣味の範囲内であり、同族会社ゆえにできる行為であると主張するが、社長自身が別に外国製の車両3台を個人的に所有しており、会社所有の減価償却資産としていないことを併せ考えると、会社が本件車両を資産として計上していることを不相当とする理由は認められない。
・スポーツカーについては会社の主張を認める。

以上のような結論となりました。

ここで重要なのは、資産の種類ごとにモーターボートは経費として認められないが、スポーツカーなら経費として認められるということではなく、それら資産を会社が事業の用に供していた事実を立証できるか否かという事だと思われます。

同族会社の行為計算の否認

※参考論文:「同族会社の行為計算否認の準用規定創設の意義」税経新人会全国協議会 東京会 関本 秀治

本来、会社の所有に属する資産を、その法的形態を否認して課税処分をしたのですが、その根拠は、次の規定が法人税法に存在するからです。

(同族会社等の行為又は計算の否認)
第132条 税務署長は、次に掲げる法人に係る法人税につき更正又は決定をする場合において、その法人の行為又は計算で、これを容認した場合には法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるものがあるときは、その行為又は計算にかかわらず、税務署長の認めるところにより、その法人に係る法人税の課税標準若しくは欠損金額又は法人税の額を計算することができる。(以下略)

この法律については、「同族会社は、少数の株主が支配する会社であるから、法人税の負担を軽減するために、通常の会社であれば行わないような異常な法形式などをとる場合があり、それを放置するとその法人の税負担を著しく軽減させることがあるので、それを防止、是正するためにはこのような措置が必要である」と説明されています。

そしてこのような考え方の根底には、税法の領域においては、外見上の法形式や取引形態に捉われずに、その経済的実態を把握して、その経済的実態に即した課税を行う必要があり、それが税法の立法や執行のすべての過程において負担の公平を確保するための適切な手段であるという「実質課税の原則」があります。

しかし憲法第84条に規定する租税法律主義のもとでは、国民の代表機関である議会のみが課税権を行使することができ、国民は法律の定めるところ以上には租税を徴収されないという権利を有すると解されています。

第八十四条 あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。

この原則から、「税法の領域においては、不確定概念、概括条項、自由裁量規定は禁止され、下位法である政令や省令への委任は、個別的・具体的でなければならず、包括的・一般的な委任命令は違憲無効であるとされています。さらに、租税法律主義の内容の一環として、税法の類推解釈、拡張解釈は禁止され、行政先例法や行政慣習法等の不文法は成立する余地がないこと、法律の明文規定によっても、納税者の不利益に租税法律を遡及的に適用することは許されないなどの具体的法理が抽出されます。」(「現代税法事典」北野弘久 中央経済社)

租税法律主義の課税要件は、法律で個別的・具体的に定めなければならないという要請からみると、同族会社のどのような行為、どのような計算が否認の対象になるのかは明示されていません。従って「同族会社等の行為又は計算の否認」に関する法人税法や所得税法の規定は、あまりにも包括的・概括的な規定であり、租税法律主義の要請である法的安定性、予測可能性の要件を満たしているとはいえません。

具体的な対応策

法人税法における「同族会社等の行為又は計算の否認」や「実質課税の原則」は、租税法律主義のもとで違憲の疑いも残る規定ではありますが、この法律が存在する限りは税務調査で指摘される可能性はあり、課税庁側から否認をされないようにしっかりと対策を講じることが重要です。

法人税法上、会社の損金として計上できる基準は、その資産を会社が事業の用に供しているという事実です。

ただし課税庁側から見れば、会社が社用車としてクラウンやベンツを購入してそれを事業の用に供しているという状況と、スポーツカーであるフェラーリやランボルギーニを購入して事業の用に供しているという状況を比較して、“税務署ウケ”という面で差が出てくることは事実だと思われます。

通常の税務調査は、調査対象となる納税者の活動拠点に出向いて、日々の取り引きが記帳された帳簿書類などを調査する「実地調査」と言われるものですが、書面上における調査が主たる作業になるわけで、事前に調査官が資産の使用実態を掴んでいるということはありません。従ってスポーツカーを購入するというような、課税庁側が無条件には認容しがたい状況になるようなケースでは、課税庁側を納得させるような、状況証拠をきちんと固める努力をしなければいけないということになります。

具体的には、次のような事実の積み重ねではないかと思われます。

・自動車通勤が必要な状況にあること(定期代が会社から支給されている状況は問題になります)
・支店、営業所、工場、得意先、仕入先等事業の関係先への利用が証明できること⇒自動車の利用事績簿、ETCの利用明細書
・出張旅費の規定や利用状況に関する議事録等を整備すること
・私的な所有ではないことを証明⇒駐車場の実態─会社の近くに駐車場を借りている等

経費性を主張するのは会社自身であり、スポーツカーを購入し、名義が会社になっているという証拠ではなく、それを事業に使用しているという証拠を提示する必要があるということです。

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