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カネを活かす

2016.06.15

個人所得税、資産税に関する平成28年度税制改正

樋口 秀夫

事業主さんのための攻めの節税

法律 節税 制度

平成28年度税制改正案については4月1日より施行されています。前回は法人関係の改正点について説明をしましたが、今回は以下に掲げる個人所得税、資産税関係の改正点について、その概要を解説します。

1. 三世代同居に対応した住宅リフォームに係る特例──税額控除
2. 空き家に係る譲渡所得の特別控除
3. セルフメディケーション推進のためのスイッチOTC薬控除(医療費控除の特例)の創設
4. 通勤手当の非課税限度額の引上げ

1. 三世代同居に対応した住宅リフォームに係る特例

自己の有する家屋に三世代同居対応工事を行い、平成28年4月1日から平成31年6月30日までに居住の用に供したときに特例を適用することができる制度です。

これは少子化対策の一環としての制度で、出産・子育ての不安や負担を軽減することが重要な課題であることを踏まえ、世代間の助け合いによる子育てを支援する趣旨から設けられたようです。三世代同居に対応した住宅リフォームに関し、借入金を利用してリフォームを行った場合や自己資金でリフォームを行った場合に、下記に掲げる税額控除制度が適用されます。

(所得税の控除額)

▼借入金の場合
(1)一定の三世代同居改修工事に係る工事費用(250万円を限度)に相当する住宅借入金の年末残高の2%
(2)(1)以外の増改築にかかる住宅借入金等の年末残高の1%
・最大控除額
250万円×2%+(1000万円−250万円)×1%=12万5000円
※住宅借入金の年末残高は1000万円を限度

▼自己資金の場合
三世代同居改修工事に係る標準的な工事費用相当額(250万円を限度)の10%
・最大控除額
250万円×10%=25万円

[1]リフォームをローンで行う場合の要件等

(1)適用期間
平成28年4月1日〜平成31年6月30日に居住の用に供した場合

(2)対象となる工事
・調理室、浴室、便所又は玄関のいずれかを増設する工事。
・対象工事の費用の合計額が50万円を超えるもの。ただし、補助金の交付がある場合には控除後の金額で判断します。
・改修後には、調理室、浴室、便所又は玄関のうちいずれか2つ以上が複数となることが必要となります。

(3)住宅ローン等の要件
償還期間が5年以上で三世代同居改修工事等に充てるために借り入れたもの

(4)控除期間
5年 つまり 最大控除額は12万5000円×5年=62万5000円

(5)証明書の発行
三世代同居改修工事等の証明書の発行を受ける必要があり、その発行は下記のいずれかが行うものとされます。
・住宅の品質確保の促進等に関する法律に規定する登録住宅性能評価機関
・建築基準法に規定する指定確認検査機関
・建築士法の規定により登録された建築士事務所に所属する建築士
・特定住宅暇疵担保責任の履行の確保等に関する法律の規定による指定を受けた住宅瑕疵担保責任保険法人

(6)その他
イ 上記以外のその他の要件は、現行の住宅の増改築等に係る住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除の要件と同様とされます。
ロ 二以上の増改築等をした場合の控除額の計算の調整措置などの措置が設けられます。

[2]ローンなしで既存住宅に係る三世代同居改修工事をした場合の特例

(1)適用期間
平成28年4月1日〜平成31年6月30日に居住の用に供した場合

(2)対象となる工事
・調理室、浴室、便所又は玄関のいずれかを増設する工事
・その工事に係る『標準的な工事費用相当額』が50万円を超えるもの。ただし、補助金の交付がある場合には控除後の金額で判断します。
・改修後には、調理室、浴室、便所又は玄関のうちいずれか2つ以上が複数となることが必要となります。

(3)標準的な工事費用相当額
三世代同居改修工事の改修部位ごとに標準的な工事費用の額として定められた金額に当該三世代同居改修工事を行った箇所数を乗じて計算した金額

(4)控除年度における所得制限
その年分の合計所得金額が3000万円を超える場合には、本税額控除は適用されません。

(5)申告要件
確定申告書に、控除に関する明細書、三世代同居改修工事が行われた家屋である旨を証する書類及び登記事項証明書その他の書類の添付がある場合に限り適用されます。

(6)その他
住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除又は特定の増改築等に係る住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除の控除額に係る特例の適用を受ける場合には、適用されません。

2. 空き家に係る譲渡所得の特別控除

「平成25年住宅・土地統計調査結果」(総務省統計局)によりますと、確報集計結果の総住宅数は、6063万戸と5.3%の上昇。一方で空き家率は、13.5%と過去最高になったそうです。平成28年度の税制改正大綱では「空き家に係る譲渡所得の特別控除」制度が創設されましたが、その創設の背景には、古くから残っている適切な管理のされていない空き家が増加することにより、近隣の地域住民の生活環境に悪影響を及ぼしているという社会問題があり、こうした空き家の発生を抑制するために、空き家等を譲渡した場合の税制上の優遇措置が創設されることとなりました。

[1]空き家に係る譲渡所得の特別控除の概要

被相続人の居住の用に供されていた家屋を相続した相続人が、平成28年4月1日から平成31年12月31日までの間に、下記に掲げる家屋(その敷地を含む)又は除却後の土地の譲渡をした場合には、その家屋又は除却後の土地の譲渡所得の金額について3000万円の特別控除を適用することができます。

[2]適用対象資産とその要件

(1)そのまま譲渡する家屋、及び当該家屋とともに譲渡する土地等
・相続時から譲渡時までに、事業用、貸付用、又は居住用に供されていたことがないこと。
・譲渡時において一定の耐震基準を満たしていること。(その家屋に耐震性がない場合は耐震リフォームをしたものに限ります)

(2)家屋を除却した後に譲渡される、その敷地の用に供されていた土地等
・除却した家屋および更地となった土地等は、相続時から除却・譲渡時までに、事業用、貸付用、又は居住用に供されていたことがないこと。

(3)相続時から3年を経過する日の属する年の12月31日までの譲渡であること。

(4)当該譲渡の対価の額が1億円を超えないこと。

[3]申告手続き等

本特例は、確定申告書に、地方公共団体等の長等の当該被相続人居住用家屋及び当該被相続人居住用家屋の敷地の用に供されていた土地等が上記の要件を満たすことの確認をした旨を証する書面その他の書類の添付がある場合に適用するものとされます。

(注)相続財産に係る譲渡所得の課税の特例との選択適用とするほか、居住用財産の買換え等の特例との重複適用その他所要の措置を講ずる。

3. 医療費控除の特例創設(スイッチOTC薬控除)

平成28年度の税制改正では、セルフメディケーションの充実を図るという政策目的から、医療費控除の特例として、スイッチOTC医薬品の購入金額について、所定の要件を満たす場合、所得控除を受けられるという制度が創設されました。

セルフメディケーションとは、国民自らが自己の健康管理を進めるものですが、高齢化社会の進展による医療費増加が問題視される中で、医療需要の増大をできる限り抑えつつ、自分自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調は自分で手当てするという考え方で、(1)健康管理の習慣が身につく、(2)病院等に行く手間と費用が省かれる、(3)医療機関の過負荷(3分診療等)を軽減できる、(4)医療保険費を抑制できる、などの効果を得られるとされています。

[1]概要

適切な健康管理の下で医療用医薬品からの代替を進める観点から、健康の維持増進及び疾病の予防への取組として一定の取組を行う個人が、平成29年1月1日から平成33年12月31日までの間に、自己又は自己と生計を一にする配偶者その他の親族に係る一定のスイッチOTC医薬品の購入の対価を支払った場合において、その年中に支払ったその対価の額(保険金、損害賠償金その他これらに類するものにより補填される部分の金額を除く)の合計額が1万2000円を超えるときは、その超える部分の金額(その金額が8万8000円を超える場合には、8万8000円)について、その年分の総所得金額等から控除するというものです。

(注1)上記の「一定の取組」とは、次の検診等又は予防接種(医師の関与があるものに限る)をいいます。
(1)特定健康診査(いわゆるメタボ健診) (2)予防接種 (3)定期健康診断 (4)健康診査 (5)がん検診

(注2)上記の「一定のスイッチOTC(Over The Counter)医薬品」とは、要指導医薬品及び一般用医薬品のうち、医療用から転用された医薬品(類似の医療用医薬品が医療保険給付の対象外のものを除く。)をいいます。医師の判断でしか使用できなかった医薬品を、薬局で買えるようにしたのがスイッチOTC医薬品であり、この購入金額について所得控除を認めるというのが本制度です。

(主なスイッチOTC医薬品の例)
・ファモチジン(H2ブロッカー)▽OTC薬品=ガスター10(第一類医薬品)
・ニコチン(禁煙補助薬)▽OTC同=ニコレット(第二類医薬品)
・テルビナフィン塩酸塩(外用水虫薬)▽OTC同=ラミシールプラスクリーム(第二類医薬品)
・ロキソプロフェンナトリウム水和物(解熱鎮痛剤)▽OTC同=ロキソニンS(第一類医薬品)

(注3)本特例の適用を受ける場合には、現行の医療費控除の適用を受けることができません。

[2]医療費控除の選択

この制度ですが、従来から設けられている医療費控除との選択制とされています。従来の医療費控除は、原則として10万円という足切りがあり、医療費の合計額が10万円を超えないと、控除を受けることができません。

本制度では、1万2000円以上の医療費の支出で適用を受けることができ、8万8000円が所得控除の限度額とされています。したがって、スイッチOTC薬の購入金額が10万円未満の場合にはこの制度を使い、そうでない場合には従来の医療費控除を使う、というような選択になります。

平成29年からの適用ということもあり、まだスイッチOTC薬控除の詳細な適用手続については明らかにされておりませんが、適用を受けられるように、医薬品の購入を証明する領収書(レシート)は破棄せずに、確定申告時期までしっかりと保管しておく必要があるでしょう。

4. 通勤手当の非課税限度額の引上げ

[1]非課税限度額の引上げ

月額15万円(改正前10万円)に引上げます。

[2]適用開始時期

平成28年1月1日以後に受けるべき通勤手当について適用します。

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景気上昇に陰りが見えるため、平成28年度税制改正案の目玉策である、平成29年度からの消費税率アップ(10%)については、延期ということもあるのかもしれません。しかし、消費税改正以外においても、様々な改正が予定されていますので、主な改正点を見ていくことにしましょう。

プロフィール

樋口 秀夫 (ひぐち ひでお)

IAU税理士法人・樋口事務所所長。1952年東京都生まれ、立教大学経済学部経済学科卒。1982年税理士試験合格、1985年6月税理士事務所開業。税理士は税務における納税者の弁護人であるという理念に基づいた業務内容に特徴があり、多種多様な業種のクライアント多数。