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モノと道具を再構築する

2016.08.22

IT・クラウド時代のIT・クラウドビジネス営業(前編)

伊嶋 謙二

ホンネのITマネジメント

IT 効率 技術

ビジネスに特効薬というものはない。地道が一番!

「地道が一番!」というフレーズには聞けば忘れられないインパクトがある。小林薫と玉置浩二が主演していた相当昔のテレビドラマ『キツイ奴ら』で繰り返されるフレーズだ。一見してキワモノの人生を歩んでいそうな“流し”の玉置浩二に向かって小林薫がしみじみと「人間は地道に生きるのが一番だ」と言うのだが、妙に説得力がありつつも、同時に「お前が言うか」という感じ……つまり二人ともキワモノなのだ。

「地道が一番」というのは、まわりにそれらしき「一発逆転の特効薬」が転がっていてこそ光るセリフで、これがあればすべて解決というのは実は世の中にはなくて、自分の身の丈にあった方法でこつこつ目の前の課題、問題をこなすことで、もっと先の目標を達成することができる、という至極まっとうなことを言っている。さて、いまさら昔のドラマの話を持ち出すのは、昨今のB2BビジネスにおけるIT企業の営業姿勢に対し、つながりそうな話だからである。

筆者は、IT市場、特にコンピューター類の企業向け販売について調査・分析することを本業としている。その経験からいえば、中小企業向けのコンピューター販売は、それこそコンピューター登場の時分から、販売店が相手方の社長や総務、業務システム担当に、直接営業をかけ提案することが最良の方法であって、それは今でも変わらない。

昨今、パソコンなどのハコモノは、個人ならWeb通販から買う人が多いと思うが、企業で使うIT系のシステムやサービスはそう簡単ではない。Webから申し込んで、即利用できるようなものではない。事務機器やコンピューターなどのハコモノと同様に、販売店の担当やSEなどのシステム開発の人たちを介して購入しているというのが実態だ。

特に会計や販売管理など業務システムについては、中小企業は自社でシステムの開発を行わないことが多く、営業をかけてきた販売店に「お任せで作ってもらって」きた。大企業と違ってコンピューターの専門担当が手薄なので、多少のマージンを支払っても販売店に任せたほうが得なのだ。今でもそれは本質的には変わっていない。

クラウド時代でも生身の営業が強い

とはいえ、世のコンピューターシステムは個別の企業にあわせて専用に作ってもらっていた時期を経て、今ではパッケージ製品といわれる「出来合いのソフト」を利用することが多くなっている。さらには、会計などの業務ソフトやグループウェアや顧客管理などのアプリケーション(ここではクラウドサービス)をクラウド上で、買うのではなく、月額利用するという使い方も増えてきている。おのずと、販路はWeb上に移りつつある。

そして、クラウド時代の流れにしたがって、中小企業も自分でソフトを選び、販売店に頼らずにWebから申し込んで利用するようになる……はずであった。しかし、現実にはハコモノ同様、クラウド上のサービスも、おなじみの販売店の担当に頼んで選定してもらい、利用しているという状況が続いている。

しかし、それも無理もない。利用する人がある程度、クラウドやシステムというものを分かっていなくては、サービスの選定もままならないからだ。

ハードルが高いクラウドサービスの見極め

中小企業では情報システム担当も外部の販売店などにお任せしている。それはクラウドでも同じ傾向となっている。ましてや現場のシステム利用者に、クラウドサービスを選定して活用する知識がついていないのは当然と言ってよい。彼らがものを選ぶには、ハードルは相当に高い。

ちなみに、大企業などのコンピューター専門担当者は、コンピューターについて理解度が高い。その結果、クラウドが大企業ほど進んでいる。現場の利用についても、全社的なコンピューター活用度合いが中小企業にくらべ圧倒的に高いため、クラウドの活用によるコスト低減やセキュリティ、機敏性などのメリットを生かしたクラウド利用は大企業ほど高い。

クラウドサービスというのは利用したいときに、いつでも利用できて、いつでも止められる、しかも費用も安い、つまり中小企業でも使いやすいというのが、中小企業にとって希望の持てるところであった。それゆえ特に中小企業市場に向けたクラウドサービスが多いのだが、実際にはこのありさまだ。

今、クラウドサービス利用について、何が中小企業に足りていないかというなら、Webの仕組みや使いやすさというより、そのサービスを提案して、相談に乗ってくれる「人間」なのである。

こうなると話が逆戻りになるが、いわゆる旧来のコンピューターシステムと同様に、クラウド時代になっても、中小企業へのITシステム系のサービスは「アナログな人間の提案」が何より重要だという実態が浮き彫りになってくる。

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「今どきの経営者でITも分からない経営者はどうなの?」という意見と、「情報システム担当がありながら経営者に直接提案するのは、担当者を説得できないための逃げだ。しかもマナー違反である」という意見の二つに分かれた。これについて考えてみたい。

プロフィール

伊嶋 謙二 (いしま けんじ)

1956年秋田生まれ。矢野経済研究所でのIT産業の調査・研究業務に従事した後、1998年にIT調査会社ノークリサーチを設立し、代表取締役社長に就任。現在に至る。中堅・中小企業(SMB)市場のIT調査を得意とし、SMBのIT利用実態に詳しい。様々な関連業界誌で積極的な執筆も展開中。