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守谷版グリーンインフラ始動、コンサル×市で初協定

真鍋 政彦=日経コンストラクション【2017.12.25】

 「守谷市の魅力の1つである自然環境を未来に向けてどうやって残していくべきか、行政だけではなかなかアイデアが思いつかない。10年、20年先も緑を残しながら魅力ある都市として発展するため、グリーンインフラという概念、哲学を推進する福山コンサルタントと連携協定を結ぶこととなった」(松丸修久守谷市長)。

11月28日に守谷市役所で実施した包括連携協力に関する協定の調印式の様子。左が松丸修久市長、右が福山コンサルタントの福島宏治社長(写真:日経コンストラクション)
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 茨城県守谷市と福山コンサルタントは11月28日、全国で初となるグリーンインフラ推進に向けた包括連携協力に関する協定を結んだ。市域全体を対象に、自然資本を活用した街づくりを進めるという新たな試みだ。

 グリーンインフラは自然の多様な恵みを賢く活用して、地域振興、防災・減災、環境保全といった社会の様々な課題を解決するインフラや土地利用計画のことを指す。2015年に国土形成計画や社会資本整備基本計画に「グリーンインフラ」の文言が盛り込まれたことで、自治体や国でこの考えは徐々に浸透してきた。

 守谷市が持つグリーンインフラとしてのポテンシャルは高い。例えば、自然豊かな里山環境があちこちに残っている。河岸の台地上にコンパクトに街が形成されており、水害のリスクは低い。

 さらに、市民ボランティアの積極的な活動で、木道や散策路などが自主的に整備されてきた。自然資本だけでなく、環境保全に理解のある市民も多いという。

市民ボランティアの手によって整備された丸太の散策路「鳥の道」。市内には、このような古くからの美しい里山景観が今も多く残っている(写真:守谷市、福山コンサルタント)
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 東京都心から約40km圏内にありながら豊かな自然環境が残されていることなどから、守谷市へ移住する人は今も増えている。日経BP総研が実施した「シティブランド・ランキング2017」の調査では、住みよい街として全国1位に輝いた。

(発表資料:シティブランド・ランキング ―住みよい街2017―

年度内に部局横断的な勉強会を実施

 このように、都市間競争では勝ち組に当たる守谷市。それでも前例のない協定を結んだのは、ひとえに将来への危機感からだ。今後、地方財政が厳しくなるなかで、自然環境を次世代に受け継いでいくには、コストがかかる。そこで守谷市は、自然環境を残しながら社会的な課題にも対応でき、魅力ある地域社会の形成にも寄与するグリーンインフラの概念に着目した。

 包括連携協定の期限は3年間。目指すステップは大きく3つに分かれる。まず今年度内に、市で部局横断的な勉強会やワークショップを開催し、職員らで意識の共有を徹底。今後、実施する施策もここで議論して決めていく。そして来年度の初頭にはグリーンインフラを推進する組織を立ち上げる方針だ。

 次のステップでは、守谷市でグリーンインフラを積極的に推進するためのガイドラインを作成。それを基に19年度内に、グリーンインフラ事業の立案、実施、そして最終ステップで管理・運営に移る。

 福山コンサルタントは新規事業の一環で、協定に基づく連携協力にかかる費用として自社で予算を確保している。「オープンイノベーションのように、自治体と一緒に研究開発をする場を提供してもらったと理解している。一緒にPDCAサイクルを回しながら地域と共に学んでいきたい」と、福山コンサルタントの福島宏治社長は話す。

検討スケジュール(資料:守谷市、福山コンサルタント)
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協働農園を構想中

 具体的な施策はワークショップで議論することになるが、既に福山コンサルタントと守谷市で議論の基となるたたき台を作成している。

 例えば、都市公園における民間資金を活用した新たな整備・管理手法の「Park-PFI」による賑わい拠点づくりはその1つ。また市民や企業団体に、緑地空間や遊水地を有効利用してもらう方法も考えている。そのほか、都心でのオフィス勤務と自然のなかでの農作業を両立する協働農園などを構想している。

 「守谷市は利根川と鬼怒川、小貝川に囲まれている。河川敷や堤防を含めて、国や県とも積極的に連携して、守谷にあった自然環境の残し方を模索していく」(松丸市長)。

グリーンインフラ施策のイメージ(資料:守谷市、福山コンサルタント)
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 福山コンサルタントの福島社長は、「グリーンインフラを活用した新たな街づくりに向けて、建設コンサルタント会社に何ができるか。ここで学習させてもらった経験を他の地域で生かしたい。『守谷GIモデル』として花開かせる」と意気込む。

この記事のURL http://www.nikkeibp.co.jp/atcl/tk/PPP/report/121400102/