福岡市、九州大学など地元団体は、約50ヘクタールという広大な九州大学箱崎キャンパス跡地でスマートなまちづくりを目指している。プロジェクト名は「FUKUOKA Smart EAST」。そのキックオフイベント「FUKUOKA NEXT都市革新フォーラム」が11月11日に開催された。具体的な計画はこれからだか、全国的にも注目度の高い箱崎キャンパス跡地のまちづくりの方向性について積極的な議論が行われた。フォーラムの模様を全3回でリポートする。
世界各地の先進都市を参照
福岡市と九州大学は、九州大学箱崎キャンパス跡地(約50ヘクタール)のまちづくりに向けて、「FUKUOKA Smart EAST」構想を進めている。同構想で参考にするのが「世界経済フォーラム」(WEF)が先進的なまちづくりの事例をまとめた「トップ10の都市革新」の取り組みだ。
まず基調講演では、世界経済フォーラムの協議会メンバーで、ハーバード大学大学院教授の森俊子氏が「トップ10の都市革新」について解説。イノベーションによる都市問題解決事例のポイントを、以下のように紹介した。
(1)(デジタル的に)再構築可能なスペース
=3Dプリンターなど様々なデジタルテクノロジーの活用によって、都市の生産拠点などをコンパクト化。現在ある空間を再構築して最大限に活用することで、都市を活性化できる。
(2)ウォーターネット:水道のインターネット化
=限りある水資源を効果的に管理・保護するためには、スマート水管理モデルが重要。水道管網や下水道にセンサーを設置してインターネットにつなぐこと(IoT化)で可能になる。
(3)ソーシャルネットワークを通じた木々の育成
=植樹の推進は災害対策や環境対策などにつながる。都市の木々の様子をソーシャルネットワークを通じて共有することで、市民参加型の緑地化推進が可能になる。
(4)進化を続ける人類:次世代の移動手段
=自動車中心の都市開発ではなく、歩道やサイクリングロード、公共交通機関の整備などが重要。これにより渋滞や環境汚染の緩和、通勤通学時間の短縮などに大きな効果がある。
(5)3つの「コ」:コ・ジェネレーション、コ・ヒーティング、コ・クーリング
=発電所などで生じた無駄な熱を「コ・ジェネレーション」装置を使って活用すれば、エネルギー効率を大幅に改善し、建物のヒーティングやクーリングなどに利用できる。
(6)共有型社会:未使用空間の開放
=使用されていない空間の開放が重要。例えば空き家の賃貸や、自動車の相乗りなど。こうした共有の原則は、物理的、社会的、娯楽的インフラにまで広がる可能性がある。
(7)モビリティ・オン・デマンド
=デジタル情報や通信テクノロジーを活用すれば、利用されていない交通手段を最大限に活用し、刻一刻と変化する乗客の送迎需要に対応するなど様々な機会が生まれる。
(8)メデリンの再現:社会的統合に向けたインフラ
=コロンビアのメデリンは、公立図書館やケーブルカーなど、建築や都市インフラ自体を社会を団結させるツールに使う新戦略で、都市や社会、経済、文化のあり方を一変させた。
(9)スマートアレイ:都市のあらゆる出来事を検知するインテリジェント街灯
=次世代の LED 街灯は、気候、大気汚染、地震活動、交通や人の動き、騒音を検出するセンサーとしても機能。IoT化により、治安の監視など革新的なソリューションも生まれる。
(10)都市型農業:野菜の立体栽培
=建物の屋根や壁は、水耕システムなどで利用可能。LEDライトの進歩によって消費者のすぐそばで、屋内などにおいて何層にも積み重ねた形で都市農園を営むことが可能に。
このように森氏は、都市革新を目指すための10のポイントを紹介。そのうえで「福岡市はおよそ8割が当てはまるので、『福岡都市革新実行』は十分に可能なはずだ」と述べた。