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口コミに着目、200万人の「健幸アンバサダー」を養成へ

SWC協議会、健康無関心層の切り崩しを狙う

伊藤 瑳恵=日経デジタルヘルス【2017.11.8】

「日経デジタルヘルス」2017年10月31日付の記事より

 「今の時代、人が一番心動かされるのは自分が信頼している周囲の人からの情報や声掛けだ」。そんな考えの下、スマートウエルネスコミュニティ(SWC)協議会は、健幸づくりのための情報を地域住民に伝える「健幸アンバサダー養成プロジェクト」を推進している。2017年10月27日に実施した記者発表会では、現段階で1541人が認定を受けており、2030年度までに200万人の認定を目指していることを明らかにした。

健康無関心層が健康情報を取得しないことが課題だった
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 プロジェクト発足の狙いは、健康無関心層に健康情報を届けて行動変容を促すこと。SWC協議会 副会長 兼 筑波大学大学院 人間総合科学研究科 教授の久野譜也氏らのこれまでの研究によると、成人の約7割が自ら健康情報を取得しない健康無関心層であることが分かったという。そこで、健康無関心層に健康情報を届け、国民のヘルスリテラシーを向上させる必要があると考えた。

 そのために着目したのが、冒頭の久野氏の発言にあるような口コミだ。2014~2016年に実施した「健幸ポイント制度大規模実証事業」の成果として、「無関心層には口コミが有効だと分かった」と新潟県見附市 市長の久住時男氏は言う。正しい健康情報を口コミで伝える存在として、健幸アンバサダーの構想が立ち上がった。

記者発表会に登壇したプロジェクト関係者。左から、第一生命保険 執行役員の岩井泰雅氏、カーブスジャパン 代表取締役会長 兼 CEOの増本岳氏、健康・体力づくり事業財団 理事長の下光輝一氏、静岡県 健康福祉部 理事の土屋厚子氏、新潟県見附市 市長の久住時男氏、SWC協議会 副会長 兼 筑波大学大学院 人間総合科学研究科 教授の久野譜也氏、SWC協議会 健幸アンバサダー養成プロジェクト 事務局長 兼 つくばウェルネスリサーチ 執行役員の塚尾晶子氏
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SWC協議会 副会長 兼 筑波大学大学院 人間総合科学研究科 教授の久野譜也氏
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 健幸アンバサダーになるためには、SWC協議会がカリキュラムを作成した「健幸アンバサダー養成講座」を半日受講し、健康関連の情報を勉強するだけ。「特別な資格を持たなくても、地域にいる普通の人が健幸アンバサダーになってほしい」(久野氏)という思いから、手軽に受けられるようにした。

 健幸アンバサダーの具体的な役割は、講座で学んだ健康情報を自分の周囲の人に伝えることである。「身近な大切な人に伝えてください、と言っている」と久野氏は話す。あえて拡散する人数にノルマを設けないことで、伝える側も伝えられる側も強い思いを持って情報を扱うことができると考えたのだ。

健幸アンバサダーの活動をどう維持すべきか

 記者発表会と同日に開催されたシンポジウムでは、プロジェクト関係者によるパネルディスカッションが実施され、健幸アンバサダーの活動をどのように維持するかについて議論が交わされた。

 行政の立場から久住氏は、「モチベーションを保つためにも健幸アンバサダーの存在が地域で認知されるよう働きかけていきたい」と話した。静岡県 健康福祉部 理事の土屋厚子氏は、健幸アンバサダーの中には、アンバサダーの認定証を大切に持っている人が多いことを紹介した。「自分が社会の役に立つという強い気持ちの表れだと思う。フォローアップ研修を頻繁に開催することで、健幸アンバサダーの人が社会の役に立っていると実感し続けられれば」と話した。

現在までの健幸アンバサダー認定状況
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 自社の社員を健幸アンバサダーとしているカーブスジャパン 代表取締役会長 兼 CEOの増本岳氏は、今後は同社の顧客にも健幸アンバサダーの認定を勧めていきたい考えを示した。その上で、「地域や世の中の役に立つという社会的な使命感があることが鍵になるのではないか」とした。

 健幸アンバサダーの在り方については、第一生命保険 執行役員の岩井泰雅氏が「どういうコンテンツをどのタイミングで提供するかが重要」と指摘した。同社の事業でも、健康診断の結果が届く時期に啓発情報を届けることで、保険の契約数が増加するという。健幸アンバサダーに関しても、「こういうことができる仕組みやツールを作ることができれば」と述べた。

 健幸アンバサダーは、退職後の新たな選択肢にもなると久野氏は期待する。地域の健康づくりに関して、自治体から男性の地域社会への参加を増やしたいという声がよく届くという。その対策として、企業で実施する退職準備研修会などで健幸アンバサダーの講座を実施できれば、「退職した次の日から地域で新たな役割を担うことができる」(久野氏)。

この記事のURL http://www.nikkeibp.co.jp/ppp/atcl/tk/PPP/report/110100090/