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リポート

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石巻「再生の地」に見る芸術祭の意味

山本 恵久=日経アーキテクチュア【2017.8.10】

※「日経アーキテクチュア・ウェブサイト」2017年8月2日付コラム「記者の目」より

宮城県石巻市の市街地および牡鹿半島を会場に7月22日、芸術祭「Reborn-Art Festival(リボーンアート・フェスティバル) 2017」が開幕した。その概要と共に、会場の一部の様子をリポートする。

 石巻市では、東日本大震災による死者・行方不明者が4000人近くに達している(※)。「最大被災地」とされる場所で開催するだけに、ビエンナーレ、トリエンナーレなど数多ある地域芸術祭の中で後発となるものの、独自のコンセプトを持つ催しとなっている。

※石巻市によると直接死3278人、関連死274人、行方不明者426人とされる(17年6月末現在)。

 こうした芸術祭で公共・民間の広範な敷地・施設を利用するとなれば自治体の協力は欠かせない。一方、行政主導となると、ある程度“行儀のよい”作品──要は、余計な摩擦や議論の生じにくい作品を中心とし、リスクの小さい公共イベントを目指さなければならない面がある。そのためアーティスト選定などに関わるキュレーターも、既に公的な場面で実績や定評のある人に偏る傾向にある(といっても、慣例に従うままではアートからの社会に対する問い掛けがかなわないはずだから、裏では常に“闘い”はあるのだろう)。

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パルコキノシタ「います」(以下、アーティスト名は敬称略)。牡鹿半島中部エリア、休校中の荻浜小学校を利用する作品の一つ。パルコキノシタは美術教師を辞し、芸術祭のために東北に移住。期間中、石巻市における被災による死者・行方不明者の実数(現在3978人)の木像を彫り続ける。「供養という意味はない」とされる(写真:日経アーキテクチュア)
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左は、宮永愛子「海は森から生まれる」。市街地中心エリア、旧観慶丸商店の一室を利用する作品。牡鹿半島中部エリアの「貝殻の浜」にある洞窟も使いたいと申し出て、それぞれが呼応するインスタレーションを制作している。右は、MEによる移動式体験作品「目」。市街地と荻浜小学校の間を定期巡行する(写真:日経アーキテクチュア)
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アート分野の主な会場は、石巻市街地中心、同周辺、牡鹿半島中部、同先端・鮎川の4エリアに分かれる。写真は、牡鹿半島に向かうバスの窓外を横切る、堤防を用いたインスタレーション。かつて墓地のあった場所で近隣の一部から抵抗を表す声も出ているため、個別にヒアリングを進めていると説明があった(写真:日経アーキテクチュア)

 その中でReborn-Art Festivalは、民間主導で推進し財源を公共に依存していない、という特徴がある。これは、ミュージシャンの小林武史、櫻井和寿、坂本龍一の3氏の資金拠出によって地球環境保全などのために2003年に発足した融資機関「ap bank(一般社団法人APバンク)」が主催に立つことで可能になった。今回の芸術祭は、アートと同等に「音楽」と「食」をテーマに掲げる。05年に始まり後に東日本大震災の復興支援に注力するようになる音楽祭「ap bank fes」の会場を被災地に移し、アートイベントと統合した格好になる。

 音楽祭と比較し、アートイベントの方は、開催場所や題材が被災地そのものに踏み込むものとなる。震災による傷が癒えているわけではないため、自由さを追求するといっても地域の反発などを招いたら成り立たない。無理を通さないよう慎重に検討しながら進めてきたものだという。今後の継続には、より自治体との連携を強める必要もある。会場デザインを担当した建築家の藤原徹平氏(フジワラテッペイアーキテクツラボ)によると、これまでにない思い切りのよさのある、本来の芸術祭の混然とした魅力を味わうには、立ち上げとなる今回がいちばん好機のはずだという。

被災建物を使った展示へ

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市街地中心エリア、石巻市指定文化財の旧観慶丸商店。昭和5年に建設された木造3階建ての元百貨店。震災時に1階部分が浸水し、災害復旧工事の過程で耐震補強を行っている。芸術祭のインフォメーションセンターとしているほか、1階の一部と2階(右)を展示会場に利用(写真:日経アーキテクチュア)
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市街地中心エリア、旧旅行代理店を利用し、齋藤陽道の写真作品を展示(写真:日経アーキテクチュア)
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市街地周辺エリア、被害の甚大だった南浜地域で流されずに残った石造の元米蔵を利用。右は、金氏徹平「White Discharge」。4tトラック150台分のがれきを蔵から搬出する作業から始まったという(写真:日経アーキテクチュア)
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市街地周辺エリア、南浜地域の震災遺構である本間家土蔵も会場の一つ(写真:日経アーキテクチュア)
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市街地周辺エリア、旧石巻港湾病院の建物を再利用する「Reborn-Art House」。芸術祭のボランティアや参加アーティストの活動拠点となる。棟内では、小林武史+WOW+DAISY BALOONによるインスタレーション「D・E・A・U」(右)を鑑賞できる(写真:日経アーキテクチュア)
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市街地周辺エリア、倉庫街にスケートパークを構想するSIDE CORE「ワンパーク」(写真:日経アーキテクチュア)

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