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国内初のSIB、神戸市と八王子市での導入プロセスとこれから

「ヘルスケア分野等の社会的課題解決に向けたソーシャル・インパクト・ボンド導入可能性について」リポート(2)

小口正貴=スプール【2018.3.19】

2018年2月22日に開催された「SIBセミナー:ヘルスケア分野等の社会的課題解決に向けたソーシャル・インパクト・ボンド導入可能性について」(主催:経済産業省、共催:厚生労働省)。後半の第二部では、ヘルスケア分野で初のSIB事業となった神戸市の「糖尿病性腎症等の重症化予防事業」、東京都八王子市の「大腸がん検診受診率向上事業」を軸に、関係者が集ってのパネルディスカッションを実施した。以下、その模様を発言者別に紹介する(関連記事)。

パネルディスカッションの登壇者(写真:小口正貴)
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【パネルディスカッションの参加者(50音順)】
・石田 直美氏 日本総合研究所リサーチコンサルティング部門プリンシパル:モデレーター
・岡崎 慎一郎氏 経済産業省商務・サービスグループヘルスケア産業課課長補佐
・北尾 大輔氏 神戸市企画調整局政策企画部政策調査課政策調査担当係長
・幸地 正樹氏 ケイスリー代表取締役
・新藤 健氏 八王子市医療保険部成人健診課主査
・福吉 潤氏 キャンサースキャン代表取締役
・藤田 滋氏 日本財団経営企画部ソーシャルイノベーション推進チーム

石田 最初に、なぜこの事業をSIBで実施することに至ったのか、それぞれの自治体に聞きたい。まずは神戸市から。

神戸市企画調整局 北尾大輔氏(写真:小口正貴)
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八王子市医療保険部成人健診課主査 新藤健氏(写真:小口 正貴)
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北尾 2015年の夏に経済産業省と日本財団の担当者が来られて、SIBについて共同で実証実験を実施しようとの提案をいただいたのがきっかけ。その理由として、神戸市が医療産業都市を推進し、ヘルスケアに関して注力していることが挙げられる。また当時から公民連携に関する窓口となる部署があったことが大きい。

 神戸市ではSIBを活用して2017年7月~2020年3月までの3年間で、「糖尿病性腎症等の重症化予防事業」の実証を行っている。事業目的として糖尿病性腎症等のステージの進行、人工透析への移行の予防を掲げ、未受診および治療中断中のハイリスク患者100人を対象に実施する。

 糖尿病による腎症にはステージがあり、例えば第4期から第5期になると、年間約50万円から約500万円へと医療費が急上昇する。ここでは人工透析が重くのしかかるが、人工透析の患者数は全国でも神戸市でも増えている。そして人工透析は患者の生活の質を著しく低下させる要因になる。

 この課題を解決するため、糖尿病に特化した保健指導をする事業者と組んで新たな保健指導を実施したいと考えたが、その事業者はベンチャー企業だった。そこで複数年度にわたり、資金繰りを安定させる目的で成果連動型のSIBを導入することにした。

新藤 八王子市ではこれまで、厚生労働省や国立がん研究センターとも共同でがん検診事業を実施してきた。また、受診率向上や精密検査に結びつける取り組みを、ずっとキャンサースキャン(※今回のSIB事業者)と組んで2010年度から実施してきた経緯がある。

 その背景から、しっかりとした評価ができるフィールドを抱えているとのことで、神戸市同様に経産省から話をいただいた。2016年の初めに声をかけてもらい、同年度の1年間をかけて話し合いを進めてきた。その結果、SIB導入を前提とした予算が成立し、2017年度から実施に至っている。

 我々の取り組みでは大腸がん検診・精密検査受診率の向上を掲げ、検診による大腸がん早期発見者数増加を事業の成果指標としている。期間は2017年5月~2019年8月の約3年間で、大腸がん検診受診率が特に低い層である前年度大腸がん検診未受診者の1万2000人が対象となる。

神戸市における事業実施体制(神戸市資料より)
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八王子市における事業実施体制(ケイスリー資料より)
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石田 実際に取り組んでみての感想は。

北尾 神戸市は2017年9月から開始した。当初は100人で行う予定だったが、応募者が300人を超えたため、最終的には予定を上回る110人でスタート。今のところ109人が継続的に保健指導プログラムを受けている。

 2017年度末まで保健指導プログラムを実施し、18年度と19年度の2カ年で検証を行う。ステップに応じて保健指導プログラム修了率、生活習慣改善率、腎機能低下抑制率と3つの成果指標を設定した。すなわち今年度は、1つ目の保健指導プログラム修了率が高い数値になれば成功となる。

 アンケートの回答、および指導を受けている人たちの声からは、運動方法や食事方法も細やかに教えてもらえて非常にモチベーション向上につながると前向きな意見をもらっている。恐らくこのまま脱落者が出ることなく修了するのではないか。生活改善と腎機能低下抑制というその後の成果に関しても、2年間をかけてじっくりと検証していきたい。

新藤 SIBを導入することには、当初いろいろな疑問があった。しかしこのスキームの肝は成果指標に基づいて事業を可視化できる点にある。しっかりとした事業成果を上げれば、どれだけ市として医療費の適正化効果が出るかがきちんと見えてくる。

 具体的な受診率を上げるための勧奨は、対象者の医療関連情報をAI(人工知能)が分析し、大腸がんのリスク要因に応じて個別通知していく手法だ。これまで1万人でも数パターンしかなかった勧奨が、今回は属性に特化したことから飛躍的にパターンが増えた。これもSIBならではのチャレンジと言える。

 八王子市ではがん検診事業は1月末で終了しており、今はどれだけの成果があったかのデータが揃い始めている状況だ。通常の介入と今回の介入でどれだけの差があって、費用対効果がどれだけあったのかはこれからしっかりと検証していかなくてはならない。

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