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経産省と厚労省が語るソーシャル・インパクト・ボンド

「ヘルスケア分野等の社会的課題解決に向けたソーシャル・インパクト・ボンド導入可能性について」リポート(1)

小口正貴=スプール【2018.3.16】

公民連携の新たなスキームとして注目を集めている「ソーシャル・インパクト・ボンド(以下、SIB)」。2018年2月22日、経済産業省と厚生労働省が中心となり「SIBセミナー:ヘルスケア分野等の社会的課題解決に向けたソーシャル・インパクト・ボンド導入可能性について」と題するイベントが、東京・溜池山王の日本財団にて開催された。

 SIBとは、社会的課題解決のために民間資金を活用し、成果に応じて報酬を支払う民間委託事業を指す。ここで重要なのは「事業を遂行した」というアウトプットではなく、「事業によって一定の成果を挙げた」というアウトカムが評価対象となる点だ。

 セミナーは、経産省、厚労省をはじめとする中央省庁によるSIBへの取り組みや展望報告を第1部、2017年度に神戸市、八王子市(東京都)でそれぞれ始まったSIB事業の紹介を軸とするパネルディスカッションを第2部として進行した。

広島県と県下複数の市町で広域連携SIB――経産省

経産省商務・サービスグループヘルスケア産業課課長の西川和見氏(写真:小口正貴)
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経産省商務・サービスグループヘルスケア産業課課長補佐の岡崎慎一郎氏(写真:小口正貴)
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 第1部の冒頭、経産省商務・サービスグループヘルスケア産業課 課長の西川和見氏が挨拶。「SIBは健康経営のような職域ではなく、地域における健康投資をしっかりやる意味でも切り札になる。各地域で成立すれば、副次効果としていろいろな業種間での連携が可能だ。今後、ヘルスケア領域におけるSIBをしっかりと全国各地に広めていきたい」と語った。

 続いて、経産省商務・サービスグループヘルスケア産業課 課長補佐の岡崎慎一郎氏が登壇し、経産省がSIBに取り組む意義などについて解説した。英国で生まれたSIBは、社会的課題の解決が可能になること、さらに行政コストの削減に結びつくことから、欧米を中心に活用が進んでいるという。

 公共サービスは、明確な指標がなく事業の成果を評価しにくい部分もあったが、SIBでは科学的・客観的な成果指標に基づいた支払いを前提とする。そのため、「自治体からも、議会や市民に対して納得の行く説明ができると歓迎されている」と岡崎氏はSIBが受け入れられてきた背景を説明する。

 新しい取り組みという性格上、SIBは補助的に充てられる政策経費を利用すると考えられがちだが、岡崎氏は「例えばヘルスケア領域ならば固定経費(経常経費)内の社会保障費の一部を充当できる」と述べ、実際は固定経費の中からチャレンジができると、そのメリットについて触れた。

  強みがあるのは「単年度で終わる事業ではなく、成果が出るまでそれなりに時間がかかる事業」と岡崎氏。ヘルスケア分野では、数年後に効果が出る予防事業を中心にSIBを考えている。例えば介護予防、認知症予防などが当たるが、どのように成果指標を設定するかといった課題にも直面している。岡崎氏は 「アカデミックなデータばかりに依らず、関係者にとって納得感のある成果指標にすることが重要だ」と言う。

【成果指標を設定する上で留意するポイント】
  • 達成したい成果との関係性が明確である
    事業目的(達成したい成果=長期アウトカム)と指標の因果関係が明確で、市民に対して説明できる指標であること。
  • 短・中期的に出現する指標である
    事業実施後3~5年以内に発現する指標であることが望ましい。
  • 客観的データを用いている
    活用するデータ、収集する方法が、既に公に認められたもの、もしくは論理的に説明ができるものであること。
  • ゆがんだインセンティブを生まない
    例えば行政コスト削減のみを成果指標にすると、質の低いサービスの提供で多額の成果報酬を得るといった恐れがある。そのため、設定した成果指標に対してどういったリスクがあるか検証した上で、それを回避するためのスキーム (要求水準、モニタリング、他の成果指標も併せて設定する等)を検討しなければならない。
岡崎氏が講演で引用した「成果指標を設定する上での留意するポイント」。出典は
「地方公共団体向け ヘルスケア領域におけるソーシャルインパクトボンド 導入ノウハウ集」(経済産業省)。

 経産省では2015年度からSIBの導入を検討。前述のように2017年度から神戸市の「糖尿病性腎症等の重症化予防事業」、八王子市の「大腸がん検診受診率向上事業」が始まっている。ヘルスケア分野では初のSIBとなるが、ここで積み上がってきた知見をSIB導入ノウハウ集としてまとめた。

 2018年度からは広島県と県下複数の市町による広域連携モデルのSIBに着手する。評価期間2年間を含む3年間の期間で、AI(人工知能)を活用して過去の検診・検査データを分析し、個々人の属性に合わせた大腸がん受診勧奨を行う構えだ。これにより早期発見者数の増加を1つの成果指標とする。兵庫県川西市・新潟県見附市・千葉県白子町ではエリアの離れた自治体間で連携してのSIBも開始予定だ(関連記事)。

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広島県などで実施予定のSIB広域連携モデル(資料:経済産業省)

   経産省では、ノウハウを横展開しながら、多くの案件形成に努めていく。今後は、SIBのエンジンとなる自治体、事業者、金融機関への周知、そして、成果連動型のロジックモデルの確立を進めていきたいと語った。

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