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地方創生とモビリティ

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第1回 横浜市:地域交通が抱える課題に自動運転で挑む

来るべき人口減少と超高齢社会を迎え撃つ

大久保 聡=日経BP総研 クリーンテックラボ【2018.6.11】

日本第2の都市、横浜市。人口は373万人(2018年4月1日時点)を超える巨大都市で今、自動運転車を公共交通手段として導入するプランが着々と進む。業種や企業規模の枠組みを超えて、IoTビジネスを目指すプレーヤーの連携を実践する場としてスタートした取り組み「I・TOP横浜」の下で進行中の自動運転プロジェクトだ。

図1●横浜市の将来人口推計。高齢者が増えることで移動に困難を伴う市民が増加することが懸念される(「横浜市まち・ひと・しごと創生総合戦略」より)
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 横浜市の自動運転プロジェクトが目指すのは、地域交通が抱える課題の解決である。鉄道が縦横に走り、バス網が市内を広くカバーする移動しやすい都市といえる横浜市は、一見、地域交通に課題があるようには思えない。だが、横浜市にも、超高齢社会と人口減少によって現状の地域交通では対応できなくなりそうな状況がヒタヒタと近づいてきている。

 横浜市の調査によれば、右肩上がりで増えてきた同市の人口は2019年にピークを迎え、以降はいよいよ人口減少の局面に入る。その一方で65歳以上の人口は増加し、2025年ごろには100万人に達する見通しである。65歳以上が市民に占める比率は、2020年には4人に1人(25.2%)、2040年には3人に1人(33.1%)に達する。高齢者が増えることで移動に困難を伴う市民が増加することが懸念され、既存の交通手段ではカバーできない可能性を想定する必要が出てきた。

 ただ、バスやタクシーの台数を増やして交通手段の拡充を図るのも簡単ではない。バスやタクシーのドライバーは慢性的に不足しており、かつ高齢化が進む。このままでは10年後、20年後にバスやタクシーが担ってきた交通手段が機能しなくなる可能性もあるくらいだ。こうなると、通勤や通学、買い物やレジャーなどで公共交通を使ってきた市民の移動手段も安泰とはいえない。

 こうした地域交通にまつわる社会課題を解決する手段として、横浜市が有望視するのが自動運転車を活用した公共交通である。ドライバー不足によって先細りの危険性のあるバスやタクシーに自動運転車を導入していくことで路線や台数を確保し、さらに自転車や徒歩に頼ってきた地域に新たな移動手段として自動運転車を導入して、公共交通網の拡充を狙う。さらに、横浜市は自動運転プロジェクトにおいて、自動運転車を活用した新ビジネスの創出に挑む考えだ。

公共なものになるかどうか、「市民の理解」が重要な鍵

 横浜市で自動運転のプロジェクトが始まったのは2017年4月。横浜市がディー・エヌ・エー(DeNA)と締結した包括連携協定とI・TOP横浜に基づき、地域交通課題の解決を目指して立ち上げた。DeNAからの提案を受けたことをきっかけに発足した形だ。横浜市はこれまで同年4月と2018年3月で大きく2度、一般市民が参加する形で、自動運転車を使った実証実験を行った。最初は小型自動運転バスが、次は無人タクシーを想定した乗用車ベースの自動運転車が走った(図1)。

図2●金沢動物公園での実証実験の様子(出所:横浜市)
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 横浜市によれば、自動運転車を一般公道で社会課題解決策として利用するには、「市民の理解」「法制度の見直し」「技術面の成熟」という大きく3つのハードルをクリアする必要があるという。市民の交通の利便性を高める手段として自動運転を積極的に取り入れたいが、「これら3点をクリアしないと市民が安心して使える手段とは言えない」(I・TOP横浜で自動運転プロジェクトを推進する横浜市経済局 成長戦略推進部 新産業創造課)。法制度は政府が見直しを検討している真っただ中であり、実証実験では技術的な検証とともに、一般市民の理解が得られるかどうかを確認することが主な目的となる。

 2017年4月の小型自動運転バスを使った実証実験は、横浜市立金沢動物園で実施した。他の車両や人間を立ち入りさせない閉鎖領域での実験である。普段は歩道に用いる道路の片側を利用し、DeNAの小型自動運転バス「Robot Shuttle(ロボットシャトル)」を使って片道約180mの緩やかな坂道を時速5km程度の速さで往復させた。道路に柵を設け、Robot Shuttleが走行中は歩行者が柵内に立ち入らないようにした。

 Robot Shuttleには最大12人が乗れる。運転席はなく、あらかじめ決められた走行ルートを自動で走行する。Robot Shuttleは人間や物体など走行ルート上にある障害物を検知して自動的に停車する機能を備えているが、作動時は急ブレーキ気味になるため、あらかじめ人間などが立ち入らないようにした。なお、実証実験を行った道路は公道ではないので、自動運転車を走行させる際の法制度上の問題はない。

 4月27~28日の2日間、金沢動物園の来場者を対象に、希望者がRobot Shuttleに乗れるようにした。横浜市によれば、期間中の乗車人数は454人。乗車した来場者を対象にアンケートを取ったところ、「想像したよりも快適との声が多かった」(新産業創造課)。実験の前年(2016年)に米テスラの車両が自動運転機能の作動中に死亡事故を起こしたため、横浜市では、実証実験前は自動運転バスに対して一般市民は嫌悪感を抱くことを懸念していた。だが、蓋を開けてみると好意的な意見が多く、さらに乗車前後での意見を比較すると乗車後に印象が良くなる傾向が見られた。3つのハードルの1つに挙げた「市民の理解」という点で、「実験はひとまず成功した形だ」(新産業創造課)と評価する。なお、乗車した人の年齢層は10代の若者から年配者まで幅広く、アンケート回答者の年齢層を見ると40代が一番多くて23.6%、あとは30代、50代が多かった。

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