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古本で復興支援、「陸前高田市図書館ゆめプロジェクト」の現在

図書館に届けるのは、本ではなく寄付金

赤坂 麻実=ライター【2018.4.18】

東日本大震災で被災した図書館を古本で支援――。インターネット古書販売を手掛けるバリューブックスと陸前高田市による「陸前高田市立図書館ゆめプロジェクト」。2012年4月にスタートし、当時、各種メディアで大きく取り上げられた。そして、プロジェクト開始から6年が経過した今でも、毎月一定額を図書館に寄付する仕組みとして機能し続けている。サステナブルな寄付の仕組みとして、あらためて注目に値する取り組みといえそうだ。

 陸前高田市立図書館は、2011年3月11日の東日本大震災の津波により全壊。職員7人全員が犠牲になり、約8万冊の蔵書・資料のほとんどすべてを失った。

 2012年夏からは、ログハウスの仮設施設と移動図書館車で貸出業務を再開しながら、並行して新図書館の整備計画を進めていった。そして2017年7月20日、中心市街地に念願の新図書館がオープンした。延べ面積は旧図書館とほぼ同規模の894m2、開館当初の蔵書数は約6万5000冊、施設整備費は約6億円(取得費および外構費)だ。同年4月に開業した商業施設「アバッセたかた」に併設する形で整備されている。

図書館の外観。丸い窓が印象的だ(写真:赤坂 麻実)
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「アバッセたかた」の配置図。「アバッセたかた」を構成する3棟のうち、図書館は「アバッセタカタ専門店街」に併設されている(写真:日経BP総研)
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 陸前高田市での図書館再建の過程では、多くの支援が寄せられた。中でも、古本を介して寄付金を集める「陸前高田市立図書館ゆめプロジェクト」(以下、ゆめプロジェクト)は全国的に知られている取り組みだ。

自治体、事業者、寄付者にとって「三方よし」

 ゆめプロジェクトは、インターネットを活用して古書買い取り・販売を行っているバリューブックス(本社・長野県上田市)と陸前高田市との連携プロジェクトだ。2012年4月にスタートした。個人や企業・団体が本をバリューブックスに送ると、バリューブックスが送られた本の買取相当額を陸前高田市に寄付するというもので、2018年2月末までに4210万7863円の寄付金を市に届けている。バリューブックスに届いた本は225万6600冊に上る。

 ゆめプロジェクトの流れはこうだ。寄付者(プロジェクトに賛同する個人・団体)が、読み終えた本をバリューブックスに送付する(5冊以上の場合はバリューブックスが送料を負担)。バリューブックスが仕分け・査定し、買取相当額(古書として買い取る場合の額)を陸前高田市に寄付する。バリューブックスは送付された本のうち、商品価値のある本を古書として販売する。

寄付者が提供した本の買取相当額を寄付する仕組み(資料:バリューブックス)
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 つまり、寄付者が本を図書館に直接寄付するのではなく、バリューブックスが寄付者から古本として買い取ったお金を図書館に寄付するというわけだ。バリューブックスにとっては、単なる社会貢献ではなく、古本を販売して収益を得る事業として成り立っているのである。

 一般的に、本の寄付は図書館にとって必ずしもありがたい話ではない。図書館に必要な本ばかりが寄付されるわけではないからだ。また、不要な本を置いておくスペースがないため破棄せざるを得ないこともあり、「寄贈本を図書館で役立ててほしい」という寄付者の希望が叶えられないこともある。

 その点、ゆめプロジェクトの仕組みは合理的だ。市は寄贈図書の仕分けや管理などに人手やコストを取られることなく、まとまった額の寄付金が得られる。一方、バリューブックスにとっては、広告宣伝費を掛けることなく古本を集めることができる。寄付者にとっても、「買取相当額を寄付する」という基準が明確なので寄付の結果が見えやすく、納得感は高い。自治体、事業者、寄付者にとって「三方よし」の取り組みと言えそうだ。

陸前高田市は既存の制度で対応

 陸前高田市では、ゆめプロジェクトの実施に際して、バリューブックスに対して市の名義使用についての承認をしている。同市の名前を出してバリューブックスが寄付を募るためだ。

ゆめプロジェクトのウェブサイト。陸前高田市と連携しての取り組みであることが明記されている

 寄付の制度については、ゆめプロジェクトのために何か新たなものを制定したり、変更をしたりする必要はなかった。震災後に設置した「社会教育施設整備基金」の枠組みをそのまま使ったからだ。

 「社会教育施設整備基金」は、被災した社会教育施設全般の建設・整備費に充てるためのものだが、市では寄付先別の申出書を用意しており、ゆめプロジェクトによる寄付は、備品購入など図書館整備のための費用として使われている。なお、新図書館完成後の2017年8月からは、ゆめプロジェクトによる寄付は、図書館の蔵書購入のための寄付に切り替えている。

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