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事例研究

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水問題にグリーンインフラ活用、先進国シンガポール

新時代のインフラで公共事業が変わる!

福岡 孝則=神戸大学 持続的住環境創成講座 特命准教授【2017.3.10】

 公共事業を変える新しい取り組み「グリーンインフラ」。国内の政策動向などを紹介した前回の記事に続いて、第2回では海外の事例を取り上げる。

書籍 「決定版!グリーンインフラ」。2月中旬から検索可能な電子版も発売している

 海外には都市スケールでグリーンインフラを実践している地域があり、日本にとって学ぶべき点は多い。ここではグリーンインフラ先進地の一つであるシンガポールの取り組みを紹介する。

 日経BP社が1月24日に発行した書籍「決定版!グリーンインフラ」ではシンガポールのほかにも、米国ニューヨーク市のハリケーン・サンディの復旧プロジェクトや、ポートランド市の敷地・街区スケールの取り組み、ロンドンのグリーングリッド計画、ニカラグアでの生態系を活用した防災・減災手法など、多数の海外事例を掲載している。

水のデザイン・ガイドライン

 日本では、単一機能の構造物を主体としたグレーインフラを整備し、都市の脆弱性の低減に努めてきた。しかし、近年は気候変動に伴う豪雨による水害が多発している。これは日本のみならず、今後、世界中で気候変動に伴う災害の頻発が予想される。多くの人が居住する都市部では、不確実な未来に向けてグリーンインフラを都市スケールで戦略的にどう展開するかについて真剣に考える時代に突入したと言える。

 ここでは、都市スケールのグリーンインフラの適用を推進するための一つの手法であるデザイン・ガイドラインに着目し、大きな成果を上げているシンガポールの「ABC水のデザイン・ガイドライン」とその中核プロジェクト「ビシャン・パーク」について詳しく見ていく。

水戦略の核にグリーンインフラ

 シンガポールは東南アジアの中心に位置する63の島から成る国で、最大の島シンガポール島は東西に42㎞、南北に23㎞で470万人が暮らす世界で最も人口密度が高い国である。

 この国の大きな課題は、水である。島内の貯水池に加えて、40%を隣国マレーシアからパイプラインを通じて確保してきたが、急騰する水の価格や政治的な課題などを解決するために、シンガポールは国を挙げて水問題の解決を実行に移してきた。

 浸透膜を活用した高度ろ過技術による下水の再生処理や、河口に可動堰をもつ貯水池の建設などに加えて、画期的なのが「ABC Water Design Guidelines」(ABC-WDG)である。

 ABC-WDGはシンガポールの公益事業庁(PUB)が中心になってまとめたシンガポール国土全体を対象とした水の戦略で、なかでも核になるのがグリーンインフラの適用である。

 ABCとは「Active」、「Beautiful」、「Clean」の頭文字で、国民の誰もが美しく、きれいで、生き生きと水と共に暮らす国にするという思いを反映している。

 このガイドラインの大きな特徴は二つある。一つ目は、国内の一定面積以上の敷地・街区・都市スケールの開発案件の全てに対して、開発のタイプや土地利用に応じて必要なグリーンインフラ適用技術を明確に示し、新規の開発敷地からの雨水の表面流出の削減に加えて、屋上から敷地内の屋外空間を活用してグリーンインフラを適用することにより、微気象の緩和、健康増進、生物多様性の向上などに寄与し得る、空間像を伴ったグリーンインフラを啓蒙している点だ。

 二つ目は、デザイン・ガイドラインに具体的なパイロット・プロジェクトがひも付いていることである(図1)。

図1■ABC-WDGで現在計画進行中のプロジェクト
(資料:PUB, Singapore's National Water Agency)
[画像のクリックで拡大表示]

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