島根県出雲市で生まれた商店街活性化イベント「まちあそび人生ゲーム」が、山形県新庄市、福井県小浜市、千葉県船橋市と全国に広がり始めている。この取り組みの最大の特徴は、地元住民が実際に商店街の店に足を踏み入れることだ。「まちあそび人生ゲーム」は、1968年に発売され、世代を問わず認知度が高く、今も人気のボードゲーム「人生ゲーム」のメーカー「タカラトミー」からの公認も得ている。その仕掛け人である出雲市役所職員の田中寛氏に聞いた。

まちあそびリアル人生ゲームの発案者の田中寛氏。出雲市役所の職員であり、リアル人生ゲームの運営などを手掛けるNPO法人出雲まちあそび研究所の副理事長でもある(写真:佐保 圭)
[画像のタップで拡大表示]

――2013年7月に第1回が行われた島根県出雲市平田本町商店街の「まちあそび人生ゲーム」は、これまで何度実施され、どれくらいの参加者が集まったのでしょうか。

 2017年10月15日に開催された「まちあそび人生ゲーム」で第6回を迎えました。当日はあいにくの雨でしたが、324チーム、1000人以上の参加者が集まりました。ちなみに、2016年10月の第5回の参加チームは628チームで、2503人の参加者が集まりました。

――「まちあそび人生ゲーム」は、いわば「リアルな人生ゲーム」です。商店街の店舗を人生ゲームのマスに見立てて、参加者にルーレットを回してもらって、出た目に従って店舗を回ってもらうわけですが、その舞台となった商店街には、どのようなメリットがもたらされるのでしょうか。

 「まちあそび人生ゲーム」の参加者の中心は地元の方で、その約8割が小学生以下のお子さんをお持ちのご家族連れです。一度も入ったことのないお店と、一度入ったことのあるお店とでは、気持ちのハードルの高さが全然ちがいます。実際、イベント後のアンケート調査では「各店舗に気兼ねなく入店できて、よい出会いができてよかった」「お店の方とのコミュニケーションが取れるのがよい」「長く平田に住んでいるが、初めて入ったお店も多く、また買い物したい」という回答があったことから、地元の住民の方が商店街で買い物される機会も増えていると考えています。

リアル人生ゲームの運営を手掛けるNPO法人出雲まちあそび研究所のウエブサイト。まちあそびリアル人生ゲーム解説や過去の実施事例などが分かる

――商店街の認知度を高めて、利用したことのないお店にも入りやすくすることで、地元住民の買い物の機会を増やす狙いは理解できますが、同じ商店街で何度も開催する必要はあるのでしょうか。

 「まちあそび人生ゲーム」の参加者にはリピーターも多いのですが、それでも、2016年10月に開催した第5回の平田本町商店街の「まちあそび人生ゲーム」のアンケート調査によると、約38%の187チームが初参加でしたから、同じエリアで継続的に実施することには意義があります。

――住民の地元商店街への親近感を高める以外にも、商店街にメリットはあるのでしょうか。

 参加してくださった商店街のみなさんの意識が変わってきていることも、一つの成果と言えるのではないでしょうか。

――「商店街側の意識が変わる」とは、具体的にはどのようなことですか。

 第1回の平田本町商店街の「まちあそび人生ゲーム」のアンケート結果では、ゲームの参加者の約8割がゲーム中に入ったお店で「買い物しなかった」と回答しています。理由は、商店街側も初めてのことなので、ゲームの対応で手一杯で、せっかく来てくれた参加者に自分の店の商品をPRするどころではなかったからだと推測されます。しかし、2回、3回と続けていくうち、「買い物した」という回答者がどんどん増えて、現在、参加者の約半分が、ゲーム中に入ったお店で「買い物した」と答えています。

――なぜ「まちあそび人生ゲーム」の経験を重ねたら、ゲーム中に買い物した参加者の割合が増えたのでしょうか。

 「まちあそび人生ゲーム」に協力することで、売り手側の意識が変わってきているからだと思います。どういう人に、どう訴求して、今後の商売につなげていけばいいのか、お店のみなさんが考え始めるきっかけになっているのではと認識しています。