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PPP/PFIに初めて着手する自治体のハードルを下げる

国土交通省総合政策局 官民連携政策課長 小笠原憲一氏に聞く

聞き手:黒田 隆明、構成=山田 哲也=イデア・ビレッジ【2017.7.6】

6月9日に国が公表した「PPP/PFI推進アクションプラン(平成29年改定版)」では、人口20万人以上の自治体に策定を要請していた「PPP/PFI優先的検討規程」について、20万人未満の自治体への適用拡大を図ることが明記された。すべての自治体がPPP/PFI導入をより真剣に検討する必要に迫られそうだ。国土交通省総合政策局官民連携政策課長の小笠原憲一氏に、自治体に対するPPP/PFI支援の方向性を聞いた。

(写真:編集部)
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――地方自治体が公民連携で公共施設やインフラを整備、維持管理していくことをサポートするうえで、国交省ではこれからどのような施策を進めていくのでしょうか。

  前提として、国も自治体も投資余力がなくなっているということ、そして、職員数の減少という問題があります。公共施設やインフラを自治体が全部自前で抱えるのは無理な話です。お金・知恵・人・資源を外部から調達することは、避けて通れない道だと思っています。

  そうした流れの中で、国の民間資金等活用事業推進会議が6月に発表した「PPP/PFI推進アクションプラン(平成29年改定版)」では、優先的検討規程の策定について、人口20万人未満の自治体にも*適用拡大を図ることを打ち出しています。

 すると、PPP/PFIに初めて着手する自治体がたくさん出てくることが予想されます。私たちは、そうした自治体のハードルを下げるための手伝いをしていくことが重要です。

* 国は、人口20万人以上の自治体に対しては、2016年度末までの策定を2015年12月に要請している。

――具体的にはどのような取り組みを行うのでしょうか。

  PPPもPFIもいろいろな形があり、1000の事例があればその数だけ内容はそれぞれ違います。そうした中でも、サンプルを増やしていきながら、少しでも事例を類型化していくことで、共通の悩みを抱えている人たちにノウハウを提供しやすくなる。この作業をしっかり進めていくことが一番大事なことだと思っています。

  類型化においては、まず情報をしっかりと整理していくことです。日本PFI・PPP協会とPPP協定を結んで、自治体にデータベースの提供を行っています。すべてのPFI事業について、実施主体、事業概要、事業費、事業期間、事業方式のほか、選定事業者やアドバイザーも調べることができるようになっています。今後は、PFIだけでなくPPPに関してもデータを整理していかなくては、と思っています。

 セミナーや講習会、パネルディスカッションも積極的に開催していきます。最近、セミナー参加者がこちらの想定よりも多いことがよくあります。PPP/PFI事業に取り組まざるを得ないという意識が、徐々に自治体に浸透してきているのではないでしょうか。民間とも協定(PPP協定〔II〕)、を締結し、全国でセミナーを開催していく態勢を整えました。

地域プラットフォームから案件形成へ

――“初心者”の自治体のサポートだけでなく、PPPの新しい手法の開発も必要です。

  「先導的官民連携支援事業」は、いままで取り組んだことがないような事例での民間との案件形成、あるいはデューデリジェンスについて支援しようというものです。最大2000万円上限で、10分の10の助成金が出ます(2017年度)。

――内閣府と進めている地域プラットフォームの取り組みは3年目を迎えました。

  地域プラットフォーム事業は、案件形成が具体的に決まっていなかったり、熟度が低かったりしても、自分たちの自治体の将来を考えたときに民間と連携しなくてはいけないと考えている地域や自治体を支援していくというものです。案件形成の前段階で、民間、住民、行政が集まってセミナー開催や意見交換の場を設けるといった取り組みを支援します。

――地域プラットフォームに関しては、民間側から「案件がないと、何のために集まるのかよく分からない」という声も聞かれます。

  具体的に案件につなげていくには、自治体側にある程度覚悟が必要です。それがないと、地域プラットフォームは座学で終わってしまう可能性もあります。

  地域プラットフォームも3年目ですので、それぞれの進捗(しんちょく)を見ながら、場合によっては「もう少し具体性を持つべきだ」といったアドバイスをするなどして、「何をやっているか分からない」と言われてしまうようなことは極力なくしていかなくてはならないと思っています。

――地域プラットフォームに限った話ではないのですが、民間事業者からは、行政と対話するときに「ノウハウを出すだけで終わってしまうのではないか」「自治体がやりたいことが伝わりにくく、提案しにくい」といった意見もあるようです。

 内閣府、総務省と連名で策定した「PPP事業における官民対話・事業者選定プロセスに関する運用ガイド」(2016年10月)は、まさにそういったところを意識して策定したものです。この「運用ガイド」をしっかりPRして活用してもらわなければならないと思っています。

PPP事業プロセスと「運用ガイド」の対象とする範囲 (資料:内閣府・総務省・国土交通省)
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地方議会の理解を深めることが重要に

――PPP/PFIを推進していくうえで、これから取り組むべきこととしては、例えばどんなことがありますか。

  基礎自治体同士が広域で連携する形ができればと考えています。地域プラットフォームでも、そういったケースを支援しています。例えば、市境、町境に、それぞれの自治体で同じような施設を持っているなら、それらの統合を検討していくということです。また、現在はインフラ長寿命化計画/公共施設等総合管理計画は自治体単位で策定していますが、自治体をまたがった計画を立てていくことがあってもいいはずです。

  もう1つ、PPP/PFIの推進には、地方議会の理解が非常に大事になってくると思っています。議会には「なんでこんな面倒くさいことをやらなければいけないの?」と思っている人たちも少なくありません。ただ、最近は、議員の方たちのPPP/PFIへの関心が少しずつ高まっていると感じています。

  地方ブロックの地域プラットフォームでは、「首長意見交換会」を実施して自治体の苦労や考えを共有してきましたが、今年は議員の方に意見交換をしてもらうことも考えています。

2016年10月21日に開催された首長意見交換会(関東ブロック)の様子(写真:小口 正貴)
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  官民のリスク分担の話になったときに、どうすれば議会の理解を得やすくなるのか。また、どうすれば民間の事業者が「こういったリスク負担なら仕方ない」と納得してくれるのか。これからPPP/PFIの事例が積み上がっていく中で、模索していきたいと思っています。

この記事のURL http://www.nikkeibp.co.jp/ppp/atcl/tk/PPP/434148/070500015/