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キーパーソン登場

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ぶり奨学金からバイオガス発電まで、共助の仕組みをデザインする

地域づくりは仲間づくり――鹿児島県長島町副町長 井上貴至氏に聞く

渡辺博則=日経BPビジョナリー経営研究所【2017.2.6】

ぶりの一大養殖産地として有名な鹿児島県長島町に、国内最年少の31歳の副町長、井上貴至氏がいる。政府の「地方創生人材支援制度」の第1号として、総務省から2015年4月に長島町に派遣された。以来、ぶり漁師や農家の魅力を全国に発信する情報誌「長島大陸 食べる通信」の発行(編集長として参画)や、地元の寄付など基金として学生が長島町に戻った場合に返済を補填する「ぶり奨学金」の立ち上げなど、新機軸ともいえる地方創生策を矢継ぎ早に打ち出している。こうした施策はどのように誕生したのか。その状況や思いを、井上副町長に聞いた。

(写真=清水真帆呂)
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現場主義、コミュニケーション重視で数々の施策

――もともと、小さな市町村にこそ応援する制度が必要だということで「地方創生人材支援制度」を自ら提案され、その第1号として派遣されたということですが、井上さんはその時、長島町で何をやろうと思われていたのでしょうか。

 実は、私が市町村に赴任するのは長島町が初めてでしたので、何をやるかについては全く白紙の状態から入りました。それまで毎年100万円ぐらいの交通費を使って全国を訪ね歩いていて、いろんな事例のインプットはありましたけど、そのどの部分をどう長島に置き換えようかということは考えず、まずは白紙で臨んだということですね。

 長島町に来て初めにやったことは、まずお菓子を買って、ホワイトボードを買って、記者会見で使ったパネルを部屋に持っていって、それから私の人脈となっている方々の名刺を壁にぺたぺたと貼って。そういったことからです。

 でも全部意味はあるんですよ。お菓子は、普通役場は堅苦しいイメージがありますから柔らかくしよう、いろんな人が来ればいいということで。

 ホワイトボードは大机に貼っていて、例えば奨学金についても、絵を描きながら「子どもはこんなふうに出て行ってしまうけれど、こう戻ってきてほしいよね」とみんなと議論していると、「あ、この形はぶりのいけすにそっくりだね」とか、そんなことで「ぶり奨学金」の原型となるアイデアを思いついたりするわけです。

 名刺を貼っているのは、中と外をどうつないでいくか、それを可視化するためです。役場や町の中だけでできることは限られていますから。あと、記者会見のパネルは長島町の写真などを張ったものですが、いま長島町の一番の“観光スポット”になっています。来てくれた方は、みんなパネルを背景に写真を撮ってご自身のFacebookやTwitterに投稿してくれます。

食べもの付き情報誌「長島大陸 食べる通信」(季刊)。井上氏が編集長を務めている
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――様々な人とコミュニケーションしながら、一連の様々な取り組みが生まれてきた。

 取り組みとしてまず分かりやすく形になったのが、食べもの付き情報誌の「長島大陸 食べる通信」です。2015年12月に創刊しました。農業や漁業に携わる人やその現場を紹介しようと、一般社団法人の日本食べる通信リーグが全国での「食べる通信」発行を支援されていて、その仕組みに乗った形です(関連記事)。そこから入って、あとは様々な取り組みが加速度的に広がっていきました。

――そうした取り組みのアイデアは、どのように出てくるんでしょう。

 私の場合は、完全に課題オリエンテッド、つまり現場主義ですね。農家さん、漁師さんも、役場で話すとぼそぼそとしか話されませんので、そこは畑に行って、海に行って、というところが一番大事だと思っています。

 食べる通信の場合は、実際にぶりの稚魚の漁に連れて行ってもらったことがきっかけです。

 長島町はぶりの養殖で有名ですが、ぶりを完全養殖しようとすると非常にコストがかかるので、稚魚を獲りに行きます。東シナ海の沖まで行くというので、「ぜひ船に乗せて下さい」と言ったら、町のみなさんは止めるわけです。でも、やめた方がいいと言われると、あまのじゃくですからますます行きたくなる。

 それで漁業協同組合の組合長にお願いしたのですが、朝4時に起きて、4時半にライフジャケットを渡されて「波が来てさらわれたら、船に落ちないで海に落ちてくれ」と言われたんです。船に落ちると頭や腰とかを打ってけがをするから海に落ちろ、というわけです。それで、もし海に落ちたら「わしらは気づかん時もあるけど、気づいたらちゃんと助けるから」と(笑)。そういう世界です。

 そうして船で14時間。地元の人に言わせると「なぎ」らしいのですが、ものすごく揺れる。漁師さんはずっと稚魚がいるか見ているのですが、私は動こうとしても立つこともできずで、そうした漁師さんの姿を見て純粋にかっこいいなと思いました。

 そこで以前から知っていた「食べる通信」を思い出し、こちらでもやろうと思った。日本食べる通信リーグ代表の高橋博之さんにも来てもらって、勉強会をしたりして、そこからでした。

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