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市長になったのは、「本のまちづくり」を実現するため

本をテーマに市のブランドを構築――明石市長 泉房穂氏に聞く

真部 保良=日経アーキテクチュア【2017.7.31】

市内の待合スペースを「まちなか図書館」にしていく

――今後、本のまちづくりをどのように進めていきますか。

 まず思い描いているのは「手を伸ばせば本に届くまち」です。駅前の一等地に大きな図書館をつくっただけでは不十分です。具体的には「まちなか図書館」というイメージで、病院や診療所、銀行、郵便局などの待合スペースに本棚を置いて、公共の本を借りられるようにしていきたいと思っています。これは順次進めていく予定です。

 さらに将来の目標としては「優しいまち」をつくること。私が政治家を目指した原点は、自分の弟の障害に関する子ども時代の悔しさです。もっとみんなが助け合う優しいまちであってほしいと子ども心に思いました。人の痛み、悲しみ、悔しさを知るのは難しいことですが、本はその支えになります。

 また私には子どもの頃、本があまり買えなかったという悔しさもありました。今、同じように「本を買って」と親に言えない多くの子どもがいます。その子たちのために、市民の方々から預かっているお金で本を図書館にしっかりと並べてあげたいという強い思いがあります。

 明石を本のまちにすることによって優しいまちを実現したい、という思いで私はわざわざ市長選に立候補しました。選挙資金を、もう少し立派な家を建てるのに使うことだってできたけれど、それよりも優しいまちをつくりたかった。その夢がかなうよう頑張っていきます。

明石海峡を望める市役所でインタビューに応じる泉市長(写真:松田 弘)
[画像のクリックで拡大表示]

「民業圧迫」と言っていると全体のパイが減っていく

――図書館と民間書店の、いわゆる食い合いの問題は起こりませんか。

 もちろん一部は食い合うでしょう。同じ本であれば図書館で借りた方が得だと考える人もいますから、書店にとってマイナスの要素はあると思います。しかし、マイナス以上にプラスが大きいはずです。

 図書館の側には、例えば節税の本といった実用書は置くべきではないと思います。自分の損得に関わる情報は自腹で買うものです。ベストセラーも、早く読みたいなら自分で買ってもらう。順番待ちで遅くなってもいい人は図書館で借りてもらってもいい。いくら市民から多くの要望が寄せられたからといって、図書館がベストセラーを何十冊も買うのはどうかと思います。飽きられたらすぐに余る、というのは公のお金の使い方としては疑問です。

 一方、長く読み継がれる良い絵本などは同じ本でも何冊もそろえておき、いつでもすぐ子どもたちに読んでもらえる状況をつくっておくのが公共図書館の役目です。

――今後の展開でさらに民間と連携できる部分はありそうですか。

 既に今、街角のいくつもの本屋さんが図書館の本の返却場所になってくれています。このように本の空間をつないでいくことはまだまだできると思います。駅前の図書館だけでなく、学校の図書館もつながれます。公であろうが民であろうが、本を通してつながることが可能です。

 駅前の図書館とジュンク堂との間では今後、お互いの本を検索できる機械を置く予定です。ジュンク堂からも了解をいただいています。4階の図書館で読みたい本が貸し出されていたら、検索して2階のジュンク堂にあることが分かれば、下りていって買えばいい。逆にジュンク堂に置いていない古い本が図書館にあれば、上がってきて借りればいいわけです。両者のメリットになると思います。

――「なぜジュンク堂だけなのか」ということにはなりませんか。

 もちろん、そういった議論はあるかもしれませんが、同じビルなのですから、協力し合えるところはするべきでしょう。

 書店組合の幹部からも「市が本に着目してくれて、ありがたい」と喜ばれていますよ。組合が企画したイベントに私が参加するなど、具体的なコラボレーションもしています。民業圧迫だから図書館を小さくせよなどと、せこいことを言っていると、全体のパイが減っていきます。全体でみて、本に親しむ人口が増えたり、各人が本に触れる機会が増えたりしていけば、小さな本屋さんにとってもプラスに働くはずです。

泉 房穂(いずみ・ふさほ)
明石市長
泉 房穂(いずみ・ふさほ) 1963年8月明石市生まれ。東京大学教育学部卒業。1987年日本放送協会入局。衆議院議員などを経て、2011年明石市長に就任。現在2期目。弁護士、社会福祉士の資格を保有(写真:松田 弘)


■訂正履歴
初出時、東京子ども図書館終身名誉理事長の氏名を「松岡亨子さん」としていましたが、正しくは「松岡享子さん」でした。お詫びして訂正します。記事は修正済みです。 [2017/8/2 09:40]
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