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市長になったのは、「本のまちづくり」を実現するため

本をテーマに市のブランドを構築――明石市長 泉房穂氏に聞く

真部 保良=日経アーキテクチュア【2017.7.31】

駅前再開発ビルの計画を見直して図書館を導入

――市長に就任後、駅前再開発ビルの計画を変更して大型の公共図書館を入れました。本のまちづくりの目玉施設といえますね。

(写真:松田 弘)
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 当時は人口が毎年1000人ずつ減っていくという予想値が出ている状況でしたので、駅前に賑わいを生み出すのは難しいだろうという空気がありました。再開発計画は通っていたものの、駅前ビルの中身は3フロアに市役所の約3分の1が入るというものでした。キーテナントはなかなか来てくれないだろうから無理をせずに、という案だったようです。

 私は、それは間違っているのでやめたほうがいいという考えでした。役所の3分の1といった中途半端なものが入っても、職員の通勤が楽になるだけです。駅前に役所の窓口を設けてサービスを増やすことにはもちろん意味がありますが、3フロアもの面積は要りません。

 再開発計画の見直しのポイントは3つありました。1点目が、市民のニーズに沿った内容の変更。2点目が、市民の負担を減らすコストダウン。3点目が、その手続きをしっかり市民に知らせる透明性です。この方針で就任直後、見直しに取り掛かりました。市民の声をアンケートで聞き直したら、図書館と子育て支援施設が1位、2位になりました。ああ、やっぱりと正直うれしかったです。

 役所が移転する従来の計画であれば、その費用は全額、市が自腹で負担しなければなりません。でも、本や子育てのための整備であれば、国の補助金が数十億円入ってきます。その浮いたお金で本を買えば、市民の負担を増やすことなく市民が望むものが出来上がる、というストーリーを描きました。

 自慢になりますが、駅前の人通りは施設のオープン以後、月に約2万8000人と、約4割増えました(2015年との比較)。市の人口増で市民税が増えたほか、地域の人気が高まって地価が上昇(2014年から2017年までの間に1m2当たりの平均公示地価が、商業地は18万2800円から19万900円に、住宅地は9万4100円から9万5100円に上昇)して固定資産税が増えたので、税収が約20億円増えるという効果が出ています。つまり、人が集まって人気が出たら税収が増え、そのお金で市民ニーズに沿ったさらなる施策が可能になる、という好循環が生まれています。これがなければ安定した自治体経営はできません。

 ビルの中の公共空間以外をどうするか、という問題がありました。私は、再開発が失敗するほとんどのケースは、賃料単価を高く設定できる業種、具体的には消費者ローン店舗や遊戯場などを入れようとするからだとみています。そのほうが計画上の数字は合わせやすいのですが、駅前の一等地にそうしたテナントが入居していても見せかけの賑わいにすぎませんし、それでまちのブランドイメージが上がるわけもありません。ですから、テナント選びではまちの価値を上げることを意識しました。市長に就任した直後でしたから、そこはかなり強引に進めました。

――ビルの中に図書館と同居する格好で、ジュンク堂書店が入っていますね。どのような経緯で実現したのですか。

 公民連携は初めから意識していました。ラーメン屋さんだって1軒ぽつんと建っているだけでは、はやりません。塩ラーメンのおいしい店、味噌ラーメンの店、豚骨ラーメンの店が近くにあり、ラーメンストリートになってこそ、「ラーメンならあそこだ」と、相乗効果で地域に人が集まってくるわけです。

 図書館とジュンク堂が並ぶことで、1+1が3にも4にもなると思いましたから、昔その場所に店を構えていたジュンク堂にお願いして、戻ってきてもらいました。賃料設定はいくらか安くせざるを得ず、再開発の採算上、悩ましかったのは事実ですが、強い思いで誘致に踏み切りました。

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明石駅前の再開発ビル「パピオスあかし」。右写真は2階に入居している「ジュンク堂書店」明石店。4階には「あかし市民図書館」が入っている(写真:日経アーキテクチュア)

 実はこれは私1人の思い付きではなく、この分野に詳しい第一人者に相談しながら進めてきました。まず指導を仰いだのは、松岡享子さん(東京子ども図書館終身名誉理事長)です。若かりし頃、当時の図書館の理不尽さに心を痛めて海外に渡り、図書館学を学んだ後、ご自分の家を開放して子どもたちに本に触れる場を提供したという草分け的な方です。その方にお願いしてアドバイザーに就任していただいています。

 松岡さんに最初、「駅前の一等地に公共図書館と大型の民間書店が並んで入るビルをつくりたいのですが、いかがでしょう」と尋ねると、「それは共に人気が高まり、繁栄しますから、お勧めします」と言っていただき、意を強くして施策を進められました。おかげで今、図書館の入館者はオープンからの4カ月間で約28万人と、約4倍(旧図書館の前年同期との比較)に増えており、好評です。

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