「ぎふアニメ聖地連合」でアニメツーリズム確立を目指す
――映画のロングヒットに加えて、リピーターも多く訪れていることから経済効果もさぞかし大きかったのでは?
飛騨市美術館で1月上旬から2月中旬まで44日間、実施した映画の制作過程や絵コンテなどを紹介する「君の名は。」展には、当初の予想をはるかに上回る1万人を超える来場者が駆け付けました。そのうち7割以上が県外からの来館者だったと把握しています。映画の公開から昨年12月末までに「君の名は。」の聖地巡礼で飛騨市を訪れた観光客数は、約3万6000人と推定しています。もともと飛騨市は宿泊施設の少ない地域だったものの、飲食店やおみやげ店の売上の推移を見ても着実な成果があったと思っております。
――この「君の名は。」ブームを一過性に終わらせないために考えていることはありますか。
まず「君の名は。」ブームが飛騨市民に自分たちの住む街の素晴らしさや人の温かさを再認識させてくれたと思っています。ですから飛騨市の観光の魅力にさらに磨きをかけ、こまめな情報発信をこれからも絶え間なく行っていくことが、「君の名は。」ブームだけで終わらせないための重要なポイントなのではないでしょうか。
どこの自治体も時代ニーズや流行に合わせて、ついどこも同じような一過性の観光PRに走りがちですが、2度、3度と足を運んでもらえる観光地になるには、やはり地道なことですが、人とのふれあいや交流が鍵になると思っています。もちろん、今の時代はソフトに頼るばかりではなく、新しい楽しみ方を提供していくことも大切です。今年2月から来年3まで、「君の名は。」の名シーンをラッピングした高速バスを東京・新宿や名古屋、大阪、岐阜と飛騨を結ぶ4路線で運行します。これからも聖地巡礼者の気持ちに寄り添い、訪問客の気持ちを高めるサービスを提供できるよう努力していきたいと思っています。とりわけ聖地巡礼者は若い人がメインターゲットとなるだけに常に飽きさせないよう待ちの姿勢はできるだけ排除して、少しずつでもこちらから仕掛けていくことが大事です。
――2017年2月、広域連携による「ぎふアニメ聖地連合」が発足し、都竹市長が初代会長に就任されました。この連合の発足のねらいは何ですか。
「君の名は。」をはじめ、「ルドルフとイッパイアッテナ」「聲(こえ)の形」など岐阜県内を舞台にしたアニメが続々と近年公開されています。現在、岐阜市内の7市1町(飛騨市、岐阜市、大垣市、多治見市、恵那市、美濃加茂市、下呂市、輪之内町)が新しい地域振興となる「アニメツーリズム」を目指し、連携、情報交換、研究を行っています。
パンフレットをつくって、のぼりを立てて、ツアーコースをつくるような共同プロモーションの形ではなく、具体的な活動内容としては、作品の追体験ができる観光戦略を分析・研究し、情報を共有していきたいと思っております。「君の名は。」のような成功体験は、職員のやる気とチームの結束力があれば、他の自治体でもそれほどお金をかけずにすぐに実行できるものです。ただし、映画配給会社との権利関係の確認やロイヤリティー料の支払い、情報解禁のタイミングなど我々が勉強不足な点もまだまだ多く、「君の名は。」のプロモーションでもお叱りを受け、その都度学ばせていただきました。こういった点も連合で情報共有し、今後のアニメを活用した地域振興に生かしていきたいと思っております。
――自治体の役割や公民連携についてどのように考えておられますか。
自治体は大きなムーブメントをつくることが大事だと思っています。もっと簡単に言えば、市民から見て、常に飛騨市が動いているなと感じてもらえることが自治体の役目なのではないでしょうか。「君の名は。」のプロモーション活動で実感したように市民も楽しませながら飛騨市のPRにどんどん巻き込んでいくことが、これからの地域活性化に必要な要素だと思っています。
飛騨市長