全国自治体・視察件数ランキング2017

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視察が多い公共施設、TOP50の6割近くが公民連携案件

オガール2施設に次ぐ3位は「ぎふメディアコスモス」

井出 一仁=日経BP総研 イノベーションICT研究所【2017.12.6】

行政視察受け入れ実態調査では、視察対象として施策・サービス・施設など、特に制約を設けずに受け入れ事業を尋ねた質問とは別に、対象を公共施設に限定した質問も設けた。本記事では、対象を公共施設に限った回答をまとめた「視察件数ランキング――公共施設編」のTOP50を公表する。

 調査の結果、上位50位までの公共施設52施設(下表)のうち、約6割の31施設が何らかの形で公民連携のスキームを取り入れていることが分かった。大和市のシリウス(7位)をはじめ、兵庫県淡路市の「北淡震災記念公園」(9位)、さいたま市の「桜環境センター」(11位)、大阪府吹田市の「市立吹田サッカースタジアム」(12位)、富山市の「グランドプラザ」(14位)、北海道函館市の「まちづくりセンター」(18位)など、計14施設が指定管理者制度を採用しており、視察の一つのポイントになっている。ランキング表では、指定管理者制度などのPPPの活用形態についても記載した。

公共施設ランキング 1~50位 (「公民連携の取り組み」は脚注参照)
順位 名称 自治体名 視察件数 公民連携の
取り組み
1 紫波町情報交流館 紫波町(岩手県) 270 10
1 紫波町役場庁舎 紫波町(岩手県) 270 1
3 みんなの森 ぎふメディアコスモス 岐阜市 94
4 豊島区役所本庁舎 豊島区(東京都) 89 10
5 長浜市役所(新庁舎) 長浜市(滋賀県) 69
6 とよたエコフルタウン 豊田市(愛知県) 60
7 大和市文化創造拠点シリウス 大和市(神奈川県) 55 7,10
7 星ヶ台保育園 多治見市(岐阜県) 55
9 北淡震災記念公園 淡路市(兵庫県) 50 7
10 富岡製糸場 富岡市(群馬県) 43 8
11 さいたま市桜環境センター さいたま市 42 1,6,7,8
12 福島県環境創造センター 交流棟 コミュタン福島 福島県 41 9
12 市立吹田サッカースタジアム 吹田市(大阪府) 41 7
14 グランドプラザ 富山市 40 7,10
14 TOYAMAキラリ(富山市ガラス美術館・図書館複合施設) ※一部金融機関あり 富山市 40 10(再開発組合)
14 福岡市中央卸売市場青果市場 福岡市 40
17 佐賀県子ども・若者総合相談センター 佐賀県 39 10
18 まちづくりセンター 函館市(北海道) 38 7
18 市内電車環状線(セントラム) 富山市 38 10
20 静岡県地震防災センター 静岡県 36
21 秩父まつり会館 秩父市(埼玉県) 35 9
21 岡山県立図書館 岡山県 35 7(一部),10
23 都心部子ども関連複合施設(資生館小学校) 札幌市 33
23 豊中市伊丹市クリーンランド 豊中市(大阪府) 33 6,9
23 奈良市役所 奈良市 33 10
26 モザイクタイルミュージアム 多治見市(岐阜県) 30 7
27 茅ヶ崎市役所 本庁舎 茅ヶ崎市(神奈川県) 29
27 熊本市 西部環境工場 熊本市 29 6,8
29 岐阜市子ども・若者総合支援センター“エールぎふ” 岐阜市 27
29 高知市立義務教育学校土佐山学舎 高知市 27
31 シェルターなんようホール(南陽市文化会館) 南陽市(山形県) 26 10(一部業務委託)
31 徳島県立農林水産総合技術支援センターおよび徳島大学をはじめとした高等教育機関等と連携したサイエンスゾーンの形成 徳島県 26 1
33 ネーブルみつけ(健康運動教室) 見附市(新潟県) 25 7
33 徳島県県営住宅集約化PFI事業における徳島県営住宅 万代町団地・名東(東)団地・津田松原団地 徳島県 25 1,2
33 「総合メディカルゾーン構想」における徳島県立中央病院 徳島県 25
33 海洋深層水複合利用プロジェクト 久米島町(沖縄県) 25
37 3.11 東日本大震災遠野市後方支援資料館 遠野市(岩手県) 23
37 高岡市御車山会館 高岡市(富山県) 23
37 さかい利晶の杜 堺市 23
37 中央ふ頭クルーズセンター 福岡市 23 7
41 和光市立下新倉小学校 和光市(埼玉県) 22
41 西条市地域創生センター 西条市(愛媛県) 22
43 調布市議会 調布市(東京都) 21
43 黒部市下水道バイオマスエネルギー利活用施設 黒部市(富山県) 21 1
43 武雄市図書館・歴史資料館 武雄市(佐賀県) 21 7
46 枚方市保健所 枚方市(大阪府) 20
47 函館アリーナ 函館市(北海道) 19 7
47 もりおか歴史文化館 盛岡市 19 7
47 流山市役所他46施設 流山市(千葉県) 19 8
50 松本市美術館 松本市(長野県) 18 7,9
50 鳥取県立図書館 鳥取県 18
50 水素学習室 周南市(山口県) 18
「公民連携の取り組み」
1:サービス購入型PFI 2:独立採算型PFI 3:混合型PFI 4:コンセッション
5:リース    6:DBO(PFI法に基づかない公設民営)  7:指定管理者
8:包括的民間委託   9:業務アウトソーシング    10:その他
■ 全国自治体・視察件数ランキング2017

TOP10には図書館を含む施設、役場庁舎がそれぞれ3施設

 視察が多い公共施設の第1位は、岩手県紫波町の「情報交流館」と「町役場庁舎」。ともに、総合ランキング(施設以外も含む視察の多い事業のランキング)で1位となった「オガールプロジェクト」の中核施設である。視察件数は「プロジェクト」の視察件数と同じ270件であり、すべての視察が両施設を訪れたことになる。情報交流館は「オガールプラザ」と名付けられた建屋の1階に、町立図書館や名産品店「紫波マルシェ」などとともに入っており、コンサートや研修、ミーティングなど、用途に応じたスタジオを備えている。

 オガールプラザは、SPC(特別目的会社)であるオガールプラザ株式会社が2段階プロポーザル方式により官民複合施設として整備し、完成後に町が情報交流館部分を買い取った。建物の残り部分はSPCが所有して運営・維持・管理を担当している。SPCは、土地を定期借地で紫波町から借り、賃借料を支払っている。

 官民複合施設としての視察は、テナント先付けによる逆算方式による施設整備、生鮮産品がそろう紫波マルシェの運営など、PPP(公民連携)の仕組みを目的としたものが多い。町産材を活用した木造(混構造)で地域熱供給を利用する町役場庁舎も、サービス購入型PFI方式が視察目的の一つになっている。

【3位】岐阜市の公共複合施設「みんなの森 ぎふメディアコスモス」のウェブサイト (出所:公式サイト)

 岐阜市の複合施設「みんなの森 ぎふメディアコスモス」は、94件の視察を集め、総合ランキングと同じく公共施設ランキングでも3位となった。最大所蔵可能数90万冊・座席数910席の「市立中央図書館」、活動・発表の場となるスタジオなどを備えた「市民活動交流センター」、国際交流の場となる「多文化交流プラザ」、セレモニーや展示のための「みんなのホール」「みんなのギャラリー」からなる。

 敷地は、市内の岐阜大学医学部などの跡地約1万5000平方メートル。2015年7月にオープン。世界的な建築家・伊東豊雄氏の設計による特徴的な木造格子屋根を備えた大規模な図書館を擁する公共複合施設として、多くの自治体の視察対象となったようだ。

 4位は2015年5月に開庁した豊島区役所本庁舎。東京メトロ有楽町線の東池袋駅に直結する区庁舎、商業施設、分譲マンションなどからなる地上49階、地下3階建ての複合ビルだ。区有地の権利変換と旧庁舎の跡地利用により、「借金ゼロ」で建て替えを実現したことで話題になった。

 5位は、69件の視察があった滋賀県長浜市の市役所新庁舎。2015年1月の開庁で、既存庁舎(東別館)の外壁などを全面改修することで、新築する庁舎と調和させた。採光・断熱・通風・屋上緑化などの環境技術を活用したほか、中心市街地の活性化を考慮した動線設計も施した。

【7位】神奈川県大和市の「大和市文化創造拠点シリウス」のウェブサイト (出所:公式サイト)

 6位の「とよたエコフルタウン」は総合でも10位にランクイン。7位には、神奈川県大和市の「大和市文化創造拠点シリウス」と、岐阜県多治見市の「星ヶ台保育園」が入った。シリウスは、図書館、芸術文化ホール、生涯学習センター、屋内こども広場からなる公共複合施設であり、組合方式による市街地再開発事業として施行され、2016年11月にオープンしたばかり。施設運営のコンセプトや指定管理者「やまとみらい」による運営、特定業務代行、公益施設の保留床取得など、施設の管理運営に関する視察が多い。星ヶ台保育園は、アレルギー対応の設備などへの関心が高い。

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