シティブランド・ランキング2016

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住んでみたい自治体TOP10――選ばれた理由

シティブランド・ランキング -住んでみたい自治体編- 上位自治体の横顔

石井 和也=日経BPヒット総合研究所【2016.11.11】

「シティブランド・ランキング -住んでみたい自治体編-」のTOP10自治体は、どこが魅力的だったのだろうか。自然の豊かさ、街並みの美しさ、観光や仕事で訪れたときの好印象、アクセスの良さ、おしゃれなイメージ――選ばれた理由は様々だ。共通要素もあるが、それぞれの自治体によって強みは異なっている。以下、「将来、住んでみたい自治体」として選ばれた理由を、上位10自治体についてそれぞれ詳しく見ていこう。

第1位 札幌市(北海道)

札幌市民や観光客の憩いの場が市の中央にある大通公園だ(写真提供:ピクスタ)
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(資料:新・公民連携最前線)
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 札幌市は、日本の最北端の政令指定都市で北海道の行政や経済の中心地だ。サービス産業を中心に第3次産業が発展している。一方で森林率は6割を超え、自然環境も豊かだ。

 梅雨がなく、冬場の積雪量も比較的少なく過ごしやすい札幌市には、道内外から人が集まり、緩やかながら人口増が続いている。2016年1月1日時点の人口は約194万2000人(2016年1月1日時点の住民基本台帳ベース。以降、特記なき場合の人口表記は同基準)。10年前と比べて7万2500人ほど増えている。市の将来推計では人口は今後減少に転じる予測だが、この勢いが続けば、横浜市、大阪市、名古屋市に続き、200万人都市への仲間入りも見えてきそうだ。

 札幌市の「将来、住んでみたい」というブランド力は飛び抜けており、東京23区、名古屋市、福岡市の住民が1位に選び、大阪市でも2位に入っている。選んだ理由は「自然が豊かなこと」(39.8%)が最も多く、「新鮮な食材に恵まれている」(34.8%)も3番目に選ばれている。北海道全体のプラス面のイメージが札幌市に投影されているかのようだ。「観光、仕事などで訪れたことがあり良い印象を持っている」(35.4%)、「街並みや景観が美しいこと」(26.7%)も同様にポイントが高く、出張や観光で訪れた際の自然の豊かさや景観の美しさ、食べ物のおいしさに好印象を持っていることがうかがえる。



第2位 京都市(京都府)

風情のある昔ながらの祇園の街並みを歩く(写真提供:ピクスタ)
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(資料:新・公民連携最前線)
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 古都の歴史や文化を誇り、ものづくりの拠点、国際観光都市としても定評のある京都市。2011年に転入超過(1071人)に転じて以降、毎年、転入者数も増え、2015年は3773人の転入超過だった。市民と連携して活動する京都市移住サポートセンター「住むなら京都(みやこ)」を開設するなど、移住促進の施策も積極的だ。

 京都市を選んだ理由で最も多かったのが、「町並みや景観が美しいこと」(44.0%)。古からのたたずまいを残し、風情のある寺社仏閣や、祇園などの繁華街、周辺の町家など、ほかのエリアとは違った京都の魅力が「住んでみたい」要素として多くの大都市住民から支持された。

 選んだ理由の2位に「観光、仕事などで訪れたことがあり良い印象を持っている」(39.0%)、6位に「祭りなど伝統文化/行事が残っていること」(23.6%)が入っているのも京都らしいところ。そのほか、「観光資源が充実している」(32.0%)の項目もポイントが高い。観光都市としてのブランドイメージの高さは、「住んでみたい」と思わせる力にもつながっているようだ。

第3位 横浜市(神奈川県)

ランドマークタワーや赤レンガ倉庫などのあるみなとみらい21は横浜の先進地区(写真提供:ピクスタ)
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(資料:新・公民連携最前線)
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 人口約372万9000万人と全市区町村の中で最も人口が多いのが横浜市だ。東京に近く、JR東日本の東海道線や京浜東北線が都心とつながり、営団地下鉄と東京急行電鉄の東横線が相互乗り入れするなど、アクセスも良好。みなとみらい21などの再開発が進み、企業、商業、観光とバランス良く規模が拡大している。

 今回の調査で横浜市を選んだ理由で最も多かったのが、「おしゃれなイメージがある(まちのイメージがよい)」(54.0%)。TOP10自治体でこの項目が1位になったのは横浜市と神戸市(47.6%)だけだ。他の自治体と比べると飛び抜けてこの項目のポイントが高かった。近代的なみなとみらいの商業施設のほか、港町や山手の異国情緒もほどよく残り、山下公園や中華街など、昔からの名所も色あせることなく人気スポットになっている。このバランスのよさもおしゃれなイメージを醸し出しているのだろう。

 TOP10自治体のうち、横浜市と神戸市だけに共通する点はほかにもある。例えば、「(ショッピングセンターやコンビニなど)商業施設が充実していること」が選んだ理由の10位以内に入っていることがそうだ。また、「新鮮な食材に恵まれている」が選んだ理由の10位以内に入っていないことも、両市だけの共通点だ。

 「自然環境が豊かなこと」が選んだ理由の20パーセント台にとどまっていることも、横浜市と神戸市だけの特徴だ。他のTOP10自治体よりポイントが低いわけだが、ここではむしろ、選んだ理由の10位以内(両市とも4位)に顔を出していることに注目したい。おしゃれで都市的なイメージの自治体であっても、「自然環境の豊かさ」は、住んでみたいと思わせる大きな魅力の1つになっているのだ。

第4位 鎌倉市(神奈川県)

鎌倉大仏が見守るのどかな街並みが魅力(写真提供:ピクスタ)
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(資料:新・公民連携最前線)
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 横浜市の南西部に隣接、文化人や企業トップの邸宅が多く、高級住宅街としても有名。山あいには鎌倉大仏や長谷寺など、中世の歴史遺跡が数多く見られ、相模湾を望む由比ヶ浜や七里ヶ浜は海水浴客などで賑わい、観光地としても知られる。

 鎌倉市を選んだ理由で最も多かったのは、やはり「街並みや景観が美しいこと」(53.4%)。5位には「閑静な住環境がある」(30.7%)も入る。趣のある寺社や整備された住宅街のブランドイメージが確立されているためか、両項目ともにTOP10自治体のなかで最もポイントが高かった。

 選んだ理由について、隣接する上位自治体の横浜市と比べてみると、両者のイメージの違いが浮き彫りになる。「閑静な住環境がある」は鎌倉市30.7%、横浜市27.5%と拮抗しており、いずれも住宅街として高いシティブランドを有しているといえる。関連要素を見ていこう。「おしゃれなイメージ」では、鎌倉市36.5%に対し横浜市53.4%、「(ショッピングセンターやコンビニなど)商業施設が充実していること」については、鎌倉市9.9%に対して横浜市21.6%となっており、いずれも横浜市がポイントで大きく上回る。

 一方、「自然環境が豊かなこと」は鎌倉市が50.0%で横浜市は29.1%。「新鮮な食材に恵まれている」は鎌倉市23.2%(横浜市13.5%)、「気候が穏やかなこと」は鎌倉市18.5%(横浜市9.2%)となっており、鎌倉市のポイントの高さが目立つ。自然環境面から見た住みやすさという点では、鎌倉市のシティブランド力はかなり強いといえそうだ。

第5位 那覇市(沖縄県)

郷土料理やショッピング沖縄を楽しめる国際通り(写真提供:ピクスタ)
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(資料:新・公民連携最前線)
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 南国・沖縄の政治・経済の中心地。沖縄県の人口約146万人のうち、20%強(32万4000人)が那覇市に集中し、朝夕の渋滞も日常茶飯事。医療、教育、商業などの施設も集積し、大都市圏と遜色ない生活が送れる場所だ。南国だけに冬でも気温が10度を切ることは少なく過ごしやすい。LCCなどの普及で日帰り利用も増えている。

 一方で、首里城や沖縄の物産が揃う国際通りなどを擁する活気あふれる観光地でもあり、名護や恩納村など、市外のリゾート地を利用するにも便利。そのほか、沖縄離島交通のハブの役割も担っている。

 今回の調査で那覇市を選んだ理由で最も多かったのが「自然環境が豊かなこと」(54.3%)。次いで「観光、仕事などで訪れたことがあり良い印象を持っている」(42.3%)が多かった。ほかに「観光資源が充実していること」「新鮮な食材に恵まれている」「気候が穏やかなこと」「街並みや景観が美しいこと」「飲食店が充実していること」などの項目が上位に連なり、観光地としての魅力が、「住んでみたい」というイメージにも結び付いていることが分かる。

 一方で、「物価が安いこと」(13.2%)が選んだ理由の10位の入っているのも目を引く。便利な都市生活を担保しながらも、生活費をそれほどかけずに南国の暮らしも楽しみたい――。大都市住民は、那覇市での暮らしにそんな夢を描いているのかもしれない。

第6位 福岡市(福岡県)

福岡城天守閣から望む福岡市市街(写真提供:ピクスタ)
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(資料:新・公民連携最前線)
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 アジアの玄関口である福岡市。中国や韓国などのインバウンド需要も旺盛だ。サービス業など第3次産業が中心の福岡市では、IT企業やクリエーティブ企業の育成誘致にも積極的、さらにクリエーティブ企業などへの転職を支援し、UIターンを進める「福岡クリエイティブキャンプ」を実施するなど、移住政策も積極的に打ち出している。

 経済が順調な上、職住接近が可能で、東京に比べて生活費も抑えられるなど暮らしやすい。また、就職・進学のため九州各地から若い世代の流入もあり、例年、1万人規模で人口が増加、2016年には約150万人に達した。

 福岡市を選んだ理由を見てみると、他のTOP10自治体のような突出した項目が見当たらないのが特徴だ。「観光、仕事などで訪れたことがあり良い印象を持っている」「自然環境が豊かなこと」「新鮮な食材に恵まれている」「街並みや景観が美しいこと」「飲食店が充実していること」「おしゃれなイメージがある(まちのイメージがよい)」など、軒並み30%前後の支持を得ており、バランスの良さが福岡市の魅力なのだろう。

 もう1つ、「新幹線の駅や空港が近い」(26.5%)という項目が選ばれているのも福岡市の特徴だ。この項目が住んでみたい理由の上位10位以内に入っているのは、TOP10自治体の中で福岡市だけだ。7位に「公共交通機関が充実していること」(27.1%)も入っており、交通アクセスの良さが福岡市に住んでみたいと思う大きな要素の1つとなっているようだ。

第7位 神戸市(兵庫県)

ランドマークの神戸ポートタワー周辺は夜景が特に美しい(写真提供:ピクスタ)
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(資料:新・公民連携最前線)
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 商都・大阪に近く、閑静な住宅街のほか、おしゃれな街なみの北野や中華街、湾岸のメリケンパークやハーバーランド、山側の六甲アイランドなど、買い物やレジャーを楽しめる人気エリアが多い。2008年には、アジアの都市で初めてユネスコ創造都市ネットワークデザイン都市に認定されるなど国際的な評価も高く、「住み続けたくなるまち、訪れたくなるまち、継続的に発展するまち」を市では目指している。

 人口は約154万8000人で微減傾向にある。若者の神戸市への転入を増やし、東京圏への転出超過の解消ために、メディアを使ったプロモーションにも力を入れている。

 神戸市を選んだ理由を見ると、既に述べたように同じ港町の横浜市と傾向がよく似ている。選んだ理由の上位3つは「おしゃれなイメージがある(まちのイメージが良い)」(47.6%)、「街並みや景観が美しいこと」(41.9%)、「観光、仕事などで訪れたことがあり、良い印象を持っている」(33.8%)で、これは横浜市とまったく同じ順番だ。

 もう1つ、神戸市で特徴的なのは、大阪市のランキング(大阪市在住者が住んでみたい自治体)で1位を獲得していることだ。他の5大都市でのランキングを見てみると、名古屋市・6位、福岡市・5位と上位に入っているが、東京23区・16位、札幌市・12位とTOP10からこぼれている。神戸市のシティブランド力は、東日本ではやや落ちるようだ。

第8位 石垣市(沖縄県)

石垣島の観光名所、川平湾の絶景(写真提供:ピクスタ)
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(資料:新・公民連携最前線)
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 青い空と海に白い砂浜やサンゴ礁。南国の楽園のイメージが強い、沖縄県八重山諸島の中心地にあり、日本最南端の市でもある。

 人口は4万9000人強。気候が穏やかで自然豊かな環境を求め、2003~09年には、本土からの移住ブームもあった。市が発表した「石垣市人口ビジョン」によれば、「ピーク時には年間2000人程度のIターンがあったと想定され、子育て世代の25~34歳の女性が目立った」という。若年層の転出が増える一方、依然、東京圏、関西圏からの転入は多く、かつ、転入超過となっている。まだまだ移住人気は衰えていない。

 石垣市を選んだ理由を見ると、「自然環境が豊かなこと」が68.7%と飛び抜けて多く、自然豊かな南国への憧れがうかがえる。そのほか、観光地=石垣島のイメージが強いためか、「観光、仕事などで訪れたことがあり、良い印象を持っている」「街並みや景観が美しいこと」「観光資源が充実していること」「祭りや伝統文化/行事などが残っていること」などが選んだ理由の上位に並ぶ。

 とはいえ、「閑静な住環境がある」「友人・知人が住んでいる」といった観光とは関係なさそうな項目も、住んでみたい理由の10位までに入っている。人口5万人に満たない石垣市で「友人・知人が住んでいる」というポイントが高いのは、前述の“移住ブーム”効果で、市外・県外とのつながりがある住民が多いということなのかもしれない。

  なお、石垣市は今回調査した5大都市では軒並み人気が高く、都市別ランキングではすべてTOP10に入っている。そのシティブランド力は全国区といっていいだろう。

第9位 函館市(北海道)

函館山から見下ろす函館市内(写真提供:ピクスタ)
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(資料:新・公民連携最前線)
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 北海道の中では比較的降雪量も少なく、対馬海流の影響を受け、穏やかな気候が続く。1988年に青函連絡線の廃止、青函トンネルの開業。2016年3月には新青森駅と新函館北斗駅が結ばれて北海道新幹線が運行し、函館―東京間の移動時間は4時間に縮まった。駅周辺の商業施設開発も急ピッチで進んでいる。

 函館市は元々、北海道と本州を結ぶ交通の要所として発展。函館港は江戸時代から貿易港として繁栄した。市内に異国情緒豊かな建物が点在するのはそのためだ。街なみの100万ドルの夜景が売り物の函館山や幕末の函館戦争の戦場となった五稜郭など、市内には名所も多い。観光客数は全盛時より減っているとはいえ、毎年500万人近くが訪れる。新幹線開業効果もあり、2004年度以来、久々の500万人突破も見込めそうだ。

 函館市に住んでみたい理由としては、北海道のイメージを反映してか、1位に「自然環境が豊かなこと」(46.2%)。新鮮な魚介が水揚げされる函館港を有することから「新鮮な食材に恵まれている」(44.5%)が2位に挙げられている。「新鮮な食材に恵まれている」という項目が住んでみたい理由の3位以内に入っているのは、TOP10自治体では札幌市、福岡市、函館市の3自治体だけである。

 そのほか、「街並みや景観が美しいこと」(36.7%)、「観光資源が充実していること」(25.8%)が多いのは、函館市の歴史と重なる数々の名所の存在の由縁かもしれない。

第10位 軽井沢町(長野県)

重要文化財の旧三笠ホテル。日本の代表する避暑地らしい佇まいがある(写真提供:ピクスタ)
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(資料:新・公民連携最前線)
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 夏は避暑地、冬はウインタースポーツのスポットとして人気の観光エリアを持つ。白糸の滝や雲場池、旧三笠ホテルや聖パウロカトリック教会など、自然や歴史的建造物の観光名所が豊富。旧軽井沢銀座通りや軽井沢・プリンスショッピングプラザなど商業施設の開発も進み、リゾート、スポーツ、アート、グルメ、ショッピングと様々なジャンルのレジャーが楽しめる。

 そんな観光地や別荘地として有名な軽井沢町だが、近年は、移住も増えている。東京から新幹線で75分圏内の立地で、遠距離通勤も可能だ。人口は2万人強。同町の人口ビジョンを見てみると、60代前半、65~74歳のセグメントで転入超過が目立っていた。今回の「シティブランド・ランキング -住んでみたい自治体編-」でも、年代別ランキング(20代~60代まで)を見てみると、軽井沢町は60代のランキングが最も高く5位につけている。緑に囲まれた環境でリタイア後のシニアライフをゆっくり楽しみたいという世代には、軽井沢町のブランドイメージは高いようだ。

 軽井沢町を選んだ理由としては、日本を代表する別荘地らしく、「自然環境が豊かなこと」が64.6%と圧倒的な支持を集めて1位。それに「観光、仕事などで訪れたことがあり、良い印象を持っている」「街並みや景観が美しいこと」「閑静な住環境がある」「気候が穏やかなこと」「おしゃれなイメージがある(まちのイメージが良い)」と続く。実際に訪れてみて、環境や雰囲気の良さに好印象を持っている人が多いためか、5大都市別のランキングでは東京23区で8位と高い。ただし、大阪・29位、名古屋・18位、札幌・31位、福岡・26位と、他の5大都市の住民からは23区ほどの支持は得られていない。

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