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地域を元気にするCSV

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プロジェクト編 第5回

エコカートによる次世代交通対策事業(輪島商工会議所、ヤマハ発動機)

一般社団法人CSV開発機構・編【2017.1.30】

ここを学びたい
――メーカーとの協業で「地域の足は、地域が創る」

赤池 学=一般社団法人 CSV開発機構理事長

赤池学(あかいけ・まなぶ)氏
1958年生まれ。81年筑波大学生物学類卒。96年、ユニバーサルデザイン総合研究所設立、2014年CSV開発機構設立。科学技術ジャーナリストとしても活動(写真:北山宏一)

 人口の都市集中による交通渋滞が恒常化する一方で、少子高齢化や財政難、公共交通機関の削減にさらされている全国の地方都市では、昨今喧伝されている免許返納後の移動手段も未整備で、高齢者や子育て世代などの移動困難者、外出機会低下による不活発病者が増加し、日常の足となる二次交通、三次交通の確保が大きな課題となっている。

 そうしたなかで、ベロタクシー(自転車タクシー)を導入した福井県敦賀市など、路面電車・ライトレールを整備した富山市、人力車を観光の足にしている高山市といった、新しい二次交通システムを導入する自治体が台頭してきた。輪島商工会議所がその構築に取り組んでいる電動式ゴルフカーをベースにした「エコカート」による新交通システムも、こうした先導的事例の1つである。

 輪島市は、「輪島の朝市」に象徴される観光スポットを持ち、北陸新幹線が開通したことから、観光客も増加している。輪島商工会議所はまず、地域住民や観光客の交通手段調査を行い、徒歩と自動車での移動をつなぐ、低速交通システムの必要性に辿り着いたのだ。

 ここに登場するのが、商工会議所が立ち上げた「輪島次世代交通対策協議会」に委員として名を連ねる、ヤマハ発動機である。同社は、「陸・海・空で感動創造」をコンセプトに、モーターサイクル、ビークル、パワープロダクツ、船艇、UMSなどのモビリティ事業を展開しているが、なかでもゴルフカー事業は、北米や日本をマーケットに、17万台といわれる市場規模の約3割のシェアを誇っている。

 今回、実証が進められてきた輪島市のエコカートは、このゴルフカーに、ウインカー、バックミラーなどを備え付け、軽自動車のナンバーを取得したものである。新交通システムとしてのこのエコカートには、いくつものメリットがある。

 第一は、まちを楽しめること。時速6km~20kmのゆっくりとした速度で走行することから、風景を楽しめ、乗り心地も良く、騒音の心配もない。第二は、乗り降りがしやすいこと。低床構造で、高齢者や子どもも乗降しやすいバリアフリービークルであること。そして第三は、電動なので排気ガスも出さず、環境にも優しいこと。さらに、将来的には、自動運転や無人運転も可能で、低コストな交通システムとしての運用も期待されているのだ。

 こうしたユーザーメリットに対し、自治体にとってもいくつものメリットがある。コミュニティバスやオンデマンドバスなどの自治体の費用負担の軽減になるだけでなく、高齢者や観光客への利便性の高い移動手段を提供することにより、地域住民の安心、安全と、観光地としてのブランディングにも確実に貢献するからだ。

 輪島商工会議所では現在、戦略的なエコカートのルート策定に着手しているが、地元のミュージアムを周遊することで、観光地としての魅力度を向上させたり、商業エリアともつながることで、商店街の活性化への貢献も期待できる。

 高齢化が進む将来的な街づくりにおいては、多様な低速交通システムが台頭してくることは確実である。こうした近未来を見越し、モビリティの公道走行実験を行い、様々なデータを蓄積することは、メーカーであるヤマハ発動機にとっても大きな意味を持つ。

 また、技術開発において、社会実装に向けた、こうした実証実験のフィールドを欲している企業は少なくない。自治体は、こうしたフィールドを提供し、企業と共同して将来技術の開発支援を行うことで、企業を誘致し、地域経済を活性化させる、WIN-WINの関係を構築することができるのだ。

 そして、今回のエコカートによる新交通システムの実証実験を、地元の商工会議所が先導して行ったことに、大きな意味がある。アメリカのフロリダ州にある、人口11万5000人のザ・ビレッジスでは、すでに6万5000台のゴルフカーが走っている。ジョージア州のピーチツリーシティでは、1万3000台を超えるゴルフカーが市に登録され、ショッピングモールへの移動や高校生の通学に利用されているのだ。こうした新交通システムを商工会議所が先導し、地域の賑わいをデザインする。地域の足は、地域が創る。輪島商工会議所の実践を、その先進的モデルとして、高く評価したいと思う。

企画・運営
  • 日経BP総研


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