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世界の“自ら稼ぐ”都市

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第12回 オーストリア・ギュッシング――世界中から視察が来るバイオマスの地産地消モデル

人口減少を食い止め地域経済を活性化

藤堂 安人=日経BP総研 クリーンテック研究所【2017.7.25】

 オーストリアの南東部に位置する人口約3万人の森林の町、ギュッシング(Gussing)が、木質バイオマスを活用した再生可能エネルギーの地産地消モデルの成功事例として世界的に注目を集めている。

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図1 オーストリア・ブルゲンラント州ギュッシング郡の位置
首都ウィーンのほぼ真南に約160km、東側の隣国ハンガリーとの国境からもわずか数kmの距離

 ギュッシングはかつて、同国で最も貧しく経済発展が遅れた地域だった。それが、2000年代初頭に欧州連合(EU)で初めて全エネルギー需要を再エネだけで賄うことに成功してから様相が一変した。その過程で考案された再エネ中心の地産地消の手法「ギュッシング・モデル」は、人口減少を食い止め、経済成長を加速すると共に、化石燃料への依存から脱却する可能性を示したのである。今では日本を含めた世界中から視察者が訪れるモデルケースになっている。

 ギュッシングが属するブルゲンラント(Burgenland)州は、第一次世界大戦後にオーストリア=ハンガリー帝国の西ハンガリーから割譲され、オーストリアで第9の州となった。しかし、その多くは森林や草原、細切れの農地の間に点在する小さな町や村ばかりで、殺伐とした辺境の寒村という状態が長らく続いていた。

新市長が決断した「脱化石燃料」が契機に

 中でも同州南部に位置するギュッシング郡は、目ぼしい産業もなく高い失業率にあえぎ、慢性的な人口流出に悩んでいた。町に残った住民も70%以上が平日にはウィーンなどの大都市に出稼ぎに行き、週末に自宅に戻るといった暮らしを余儀なくされていた。

 こうした状況が変わったのは1992年にPeter Vadasz氏がギュッシング市長に就任して以来である。同氏は地元の技術者であるReinhard Koch氏と、現状を分析し経済の復興策を検討した。その結果、同市の最大の問題は、域外に毎年620万ユーロも流出するエネルギーのコストだという結論に至った。

 そこでVadasz市長らは、「脱化石燃料」によるギュッシングの経済活性化というビジョンを打ち出した。地元のバイオマス資源による自給自足でエネルギーを賄うことで域外への資金流出を食い止めると同時に、バイオマス産業の創出で、域外から企業や資本を誘致して域内に雇用を創出する、といった長期的な方針を掲げ、実行に移したのである。

地産地消のカギを握る地域熱供給網

 エネルギーの地産地消を進めるためにまず取り組んだのが、熱供給である。同地は年間平均気温が約10℃と低く、特に冬場の暖房に多くの熱エネルギーを消費していた。そこで、従来は化石燃料を使っていた暖房などの熱需要をバイオマスで賄うため、1996年に木質バイオマス・ボイラーと地域熱供給網を導入した(写真1)。

写真1 木質バイオマス・ボイラー(撮影:日経BP総研クリーンテック研究所)

 同ボイラーでは、ギュッシング域内で産出される木を切り刻んだ木質チップを燃料とする(写真2)。さらに、この木質チップを節約するため、太陽熱温水器を併用するという工夫を加えた。ボイラー建屋の屋根南側のほぼ全面(340㎡)に太陽熱パネルを敷き詰めており、日照条件の良い夏季には太陽熱でお湯を沸かす(写真3)。太陽熱も合わせたボイラーの総出力は650kW、年間で1400MWhの熱エネルギーを生み出す。

写真2 木質バイオマス・ボイラーの燃料、木質チップ(撮影:日経BP総研クリーンテック研究所)
写真3 太陽熱パネルを設置した建屋(撮影:日経BP総研クリーンテック研究所)

 建設した地域熱供給網の総延長は35kmである。配管などからの損失を考慮すると、地域熱供給網の総延長はこの程度が上限という。このため、ギュッシングは現在より広い範囲を損失なくカバーできるインフラとしてガス供給網を建設する計画である。

企画・運営
  • 日経BP総研


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