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「稼ぐ公民連携」基本十カ条

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第六条 数字に強くあれ

木下 斉=一般社団法人公民連携事業機構 理事【2015.8.27】

青森市などが中心市街地ににぎわいを取り戻す目的で再開発した「フェスティバルシティ・アウガ」。2001年開業。初年度の売り上げは目標の半分を下回り、その後も慢性的な赤字で厳しい経営状況が続く。開発プロセスにおける数字の議論が甘かったと言わざるを得ないだろう。15年7月には第三セクター(青森駅前再開発ビル)の代表取締役会長に鹿内博・青森市長が、代表取締役社長に佐々木淳一・同市副市長が就任しテコ入れを図る。(写真:日経アーキテクチュア)
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 地域活性化を目指す上で、数字の議論を厳しく行っているでしょうか。 

 「稼ぐ公民連携」の主たる目的は、財政制約の多くなる時代においてもなお公共機能を維持・充実を図るためにあります。

 そのためには、プロジェクトを牽引する中核チームは「数字に強く」なくてはなりません。

 数字に弱ければ、いくら理想的な意見が出され、皆が合意したとしても、それを実現するのに必要な資源が手元にあるかどうかさえ分からず、最初から極めて危険な賭けに挑戦することになりかねません。

 初期投資はどうにか交付金や補助金、債券発行で賄いながらも、売上計画や維持費算定がずさんで実際の施設経営が難航、自治体は経営支援を求められる。当初は民間施設が稼ぎ、公共機能を充実させ、地域活性化を狙ったはずのものが、財政負担が増え、公共サービスをむしろ削ることになってしまうという結果に――。例えば巨大な公共施設と民間施設の複合開発事業を構想したときの、ありがちな失敗パターンはこんな感じです。

 地域全体で考えれば、単にずさんなプロジェクトの穴埋めを自治体がしているだけの話です。結果、財政負担の拡大に対して、公共機能が充実するどころか、その負担分の予算をねん出できなければ機能維持に問題が発生することにさえなります。もしねん出できても、その財政負担分は別の公共サービスを犠牲することで成立することになります。

 結局プロセスにおいて数字を中心に議論しなかったことで、計画で語られた理想は単なる夢となってしまい、地元に迷惑をかけるだけになる。大人が数字に弱い状況では、次の世代に地域に有益な資産をしっかり残していくことはできません。

地域プロジェクトに乏しかった「数字」の議論

 地域活性化プロジェクトの会議のほとんどは、それぞれの意見を出し合うことが中心となり、数字の議論が長時間にわたり行われることはありません。何かの意見には当然それを実現するのに必要な資金や人材など資源の制約があるわけですが、そういった数字ベースではなく、あくまで情緒的な意見が中心を占めます。

 例えば、ここに開発費10億円(4億円を民間が、6億円を自治体が負担)という民間と公共の複合施設を建設するという話があったとします。

 まず、その施設は建ててから壊すまでのライフサイクルコスト全体をみる必要があります。一般的に土地を除いた開発費の約5倍の維持費が掛かると言われています。例えば、開発費のうち3億円が用地取得で7億円が施設部分にかかるとすれば、維持費は35億円、開発費10億円と合計して、ライフサイクルコストは45億円ということになります。この金額を民の稼ぐ力による歳入か、自治体による財政負担のいずれかで捻出しなくてはなりません。

 ここで重要なのは、建てるための計画ではなく、建てて壊すまでのトータルでの計画です。ところが、数字にいい加減だと建てるときの計画だけをがんばって、その後の維持管理についてはかなり眉唾の試算で突き進んでしまうケースが多く見られます。それではいけないわけです。

 多くの自治体の公民合築のプロジェクトでは、「どのような施設機能が必要か」についての議論は、これまでも施設設置に関する専門委員会を設置するなどして進めていたのではないかと思います。しかし、数字については、計画・開発についてコンサルタントに丸投げで、維持管理については別の事業者に任せる、といったような責任の所在が不明瞭な分業体制で進めてしまったりしがちです。委員会では皆が好きに意見を出し、数字については「建てる」ことについてだけ調整が行われ、数字の議論は実質的にここだけで終わりだったりします。

 これでは縮小社会でも地域で稼ぐ機能を生み出し、公共機能を支えるような「稼ぐ」施設を生み出すことは不可能です。

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