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「稼ぐ公民連携」基本十カ条

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第二条 公民連携は民に委ねる覚悟から

岡崎 正信=一般社団法人公民連携事業機構 理事 【2015.6.16】

 基本十カ条の第二条は「公民連携は民に委ねる覚悟から」です。

 では、どこまで委ねるのか。私が直接携わった岩手県紫波町のオガールプロジェクトでは、「PPPエージェント」と呼ばれる民間企業に町立図書館も含む施設の仕様、企画設計、資金調達、不動産管理までを一括して委任することで知恵とノウハウを引き出し、年間約80万人が訪れる稼ぐインフラを開発しました。

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広場をはさんで向かって左が、オガールプロジェクトの中核となる官民複合施設「オガールプラザ」。図書館、子育て支援センター、民営の産直販売所、カフェ、居酒屋、医院、学習塾などが入居する。右は民間複合施設の「オガールベース」。バレーボール専用体育館、宿泊施設、コンビニエンスストアなどが入居する(写真:紫波町)

 そこまで何もかも民間に任せてしまっていいのか――。一見無茶に思われるPPPエージェント型の施設整備ですが、完成後の運営経費のねん出など「稼ぐインフラ」としてのスキームを追求するためには、本来稼ぐ集団ではない公(行政)は、稼ぐことに長けている民に事業を委ねることも一つの選択肢として議論されてもおかしくはありません。紫波町にはお金がない(財政状況が厳しい)のですから、なおさらです。

 多くの自治体では、人口が減り、労働人口が激減している経済化では税収が一段と厳しくなることは目に見えています。もはや従来手法の「稼がない公共事業」は負債の創出とも言えます。ゆえに、これからのご時世ではPPPエージェント型の公民手法の導入を検討することは必要不可欠だと思います。

「金融機関が市場原理から見て事業を仕分けする」のが原則

 岩手県の県都盛岡市に隣接する紫波町はもともと財政基盤が脆弱だったにもかかわらず、1997年に様々な公共施設と住宅を集約するため、町の中心部の駅前(紫波中央駅)の土地10.7ヘクタールの駅前を、28.5億円もの大金をかけて購入します。しかし、あとから振り返ると、この年が紫波町の税収のピークでした。翌年からは税収が減収となってしまい、開発計画がすべて凍結してしまいます。

 つまり「土地を買ったんだけど、建てようと思っていた施設建設の予算がなくなった」というまったく笑えない状況に陥ったわけです。そして、その土地は開発できずに、「日本で最も高い雪捨て場」と町民から揶揄されながら10年来塩漬けにされていました。

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2007年当時のオガールエリア。オガールプロジェクトとは、塩漬け同然で雪捨て場だった土地を、カフェやマルシェ(産直市場)、子育て応援施設、図書館などの複合施設、町役場庁舎、保育園、スポーツ施設、ホテル、さらには先進的なエコ住宅の分譲までを行うという、一大再生プロジェクトだ。この公民連携の考え方は、2014年2月に就任した熊谷泉現町長や、町の職員の皆に共有されている(写真:岡崎 正信)

 この状況だけ見たら、もはや誰でも諦めてしまいそうな悪夢のような話です。役場職員はもとより紫波町民も諦めの空気というか絶望感が蔓延していました。

 しかし、当時の町長(藤原孝元町長)をはじめ、関係者は諦めませんでした。購入したその土地を「役所が開発するのを諦め、民間に任せて開発する」という決断をし、紫波町公民連携基本計画を策定。そのプロジェクト名は「オガールプロジェクト」と名づけられました。

 「オガールで実施される事業は、その事業から受けるベネフィットとコストをオープンにし、経済合理性のある数字から取り得るリスクを抽出し、金融機関が市場原理から見て事業を仕分けする」

 これは、私が2007年にオガールに関わってから一貫して唱えている「オガールプロジェクト」の理念です。つまり、オガールプロジェクトで展開される各事業は、市場からみて経済合理性のある数字を実現できなければ事業化を進めてはならないのです。オガールプロジェクトの中核施設である「オガールプラザ」(図書館、カフェ、居酒屋、産直施設、医院など9テナントが入居する公民合築施設)ももちろんそうです。

 オガールプラザ整備事業の全ての入り口は、金融からのメッセージでした。

 出資を検討してくれていた政府系金融機関と融資を検討してくれていた地元金融機関からは下記の条件が最初に言い渡されました。これだけ見ると、本当に金融機関は金を貸してくれる気があるのか不安になるような条件ばかりです(笑)。

(1)出資者には10年以内に配当を出すこと
 ――つまり10年以内に累積黒字にしなければならないという条件です

(2)開業後10年以降速やかに出資金を償還すること。
 ――つまり、開業後10年過ぎには出資金と同等額以上のキャッシュを持たなければならないということです

(3)融資金は10年で完済すること
 ――つまり、キャッシュフローが潤沢な事業計画でなければなりません

 PPPエージェントは、この条件をどのようにクリアし事業を実現していったのか。それについては次回以降の連載で改めて紹介していきます。まずはオガールプラザでのPPPエージェント型手法について説明していきます。

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