• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

「稼ぐ公民連携」基本十カ条

記事一覧

第一条 削減だけの経営から稼ぐ経営へ転換しよう

木下 斉=一般社団法人公民連携事業機構 理事【2015.6.10】

 近年、公民連携事業が注目されるのは、まさに人口縮小社会が到来し、引きずられて自治体財政なども急速に悪化していることを背景にしていることは言うまでもありません。また、昨年騒がれた「消滅可能性都市」についても、本質的に消滅すると警告されているのは「地方自治体」であり、地方そのものではありません。

写真は東北芸術工科大学と公民連携事業機構が、主に行政職員を対象として今年7月から開校する「公民連携プロフェッショナルスクール」の説明会の様子。「地方消滅」(実態としては、消滅するのは地方ではなく地方自治体)への危機感は自治体職員の間でも高まっている(写真:公民連携事業機構)

 つまり、予算がもはやなく、やるべきこともなかなかやれない時代が到来している中で、地方自治体は今後、そのあり方を根本から見直し、そのサービス提供方法についても変えていかなくてはなりません。そのための有効な手段が、これまでの行政と民間の垣根を越えて連携して公的サービスを充実させ、民間経済の活性化を狙っていく公民連携事業です。

 そこで、「稼ぐ公民連携」基本十カ条の第一条は、まず大原則となる考え方として「削減だけの経営から稼ぐ経営へ転換しよう」としました。

「効率化とコスト削減を図るだけ」の公民連携では不十分

 我が国におけるPublic Private Partnership(PPP)においては、PFIのように資金調達部分を民間側に切り出したもの、指定管理のように管理業務を行政内から民間側に切り出したものが中心であり、その事業仕様設計などは従前どおりに行政主導であったと言えます。いまだにPPPというと、PFIか指定管理というイメージが強いのも、これらの施策と事例が中心に日本で取り組まれてきた結果であるとも言えます。

・PFI事業は単なる公共施設割賦払い事業なのか
 例えば、PFI事業の多くが行政仕様に縛られているため、民間の創意工夫の余地は極めて限定的で、民間資金で開発した施設をリース利用するような契約形式に留まっているものが4分の3とそのほとんどを占めています(「PPP/PFIの抜本改革に向けたアクションプラン」〔2013年6月、内閣府〕より)。

 これまで日本で実施されたPFIにおいては、仕様書を固めるのは行政と従前からの行政コンサルティング会社が行い、施設経営において事業経験のある民間人が仕様設計を担っているわけではない場合も見られます。結果として、4分の3のPFI事業が、民間資金を活用するために金利を支払いながら従前から行政施設を借り上げるだけという、簡単にいえば「公共施設の割賦払い」をするだけの事業になってしまっているわけです。

 本来であれば、従来の行政の予算発想、管理発想では出てこない、企画面での革新性、設計上の工夫、運営面の高効率、歳入増になる方法などが検討されなくては意味がありません。このような問題意識は内閣府「PPP/PFIの抜本改革に向けたアクションプラン」でも指摘されています。

・指定管理事業は単に安いサービス提供手段なのか
 施設管理においても問題が見られます。指定管理によって指定された金額で運営するためには、行政正規職員から民間職員へと変更する際に人件費が削減され、各種メンテナンス業務などについても外注に転換することによって低コスト化を実現していたりします。民間にとって不利な条件で行われる指定管理業務もあり、入札が不成立となり、指定管理料を上乗せして再入札を行う場合もあります。

 中には、スポーツクラブを経営している民間企業が公共のスポーツ施設の運営を受託するなど、そのチェーンマネジメントの一環で公共施設の維持管理を担当し、経済性の高い経営が可能になる合理的構造を実現している事例もあります。ただし、これもかなり例外的です。

 本来、民間企業からすれば、割にあわない指定管理料をもとにした施設経営をするよりも、より稼ぎを生み出しやすい事業に進出するほうが合理的です。仕様におけるインセンティブモデルについては長らく指定管理のあり方議論としてなされていきました。

 しかし、多くの指定管理の実態としては従来型の受託仕様で行政が縛り、地元民間団体が予算範囲での運営をするだけです。その結果、魅力的な施設・サービスになっていないものも多く見られます。また一方で、地域外の大手民間企業に多額の指定管理料で外注を行うなどで話題を集めるものの、市民から疑念を抱かれるようなプロセスで行われた指定管理なども発生しています。インセンティブモデル、あるべき指定管理のあり方については、まだ開拓余地が多く残っています。

 1980年代〜2000年ごろまでは、ニューパブリックマネジメント(NPM)のような行政の効率的経営の方法が議論されることはとても重要でした。戦後成長期のような、税収増が毎年続き国家予算も増額されて交付金も充実していた時代は過ぎ去り、歳出を見直しながらサービス維持を検討しなくてはならなくなるという転換期が訪れていたからです。

 また、業務を民間に開放して行政コストを削減していくという点では、これまでの公民連携が一定の成果を上げてきたのは確かです。コスト削減は極めて大切です。すべてにおいて無駄をなくし、筋肉質にするのは経営の普遍的テーマの一つです。

 しかしながら、従来のような「一定のコスト効率を改善しながら行政業務を民間に代行してもらう」という歳出面に目を向けた公民連携にとどまっていては、課題解決に限界があることは明らかです。既存の行政業務では実行できない内容を民間に委ね、むしろ歳入増や公共サービス自体の質的な向上を実現していく新たな公民連携が求められているのです。

企画・運営
  • 日経BP総研
お知らせ

記事サーチ

都道府県別記事一覧

「新・公民連携最前線」の掲載記事を都道府県別にご覧いただけます。「地方創生」「CCRC」「コンセッション」など注目キーワードの記事一覧も用意しました。

pickup

ページトップへ