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PPP/PFIと公的不動産のいま

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第12回 「混合型」「複合化」が鍵に/文教施設へのコンセッション導入(後編)

解説:福島 隆則=三井住友トラスト基礎研究所投資調査第1部主席研究員、構成:坂井 敦=フリーランス【2017.10.18】

スタジアムやアリーナ、図書館、美術館などの「文教施設」においても、コンセッション方式の導入が進められている。ただ、文教施設の場合、既にコンセッション導入が進む空港や道路などと比べた収益力の弱さが、民間事業者を呼び込む際の壁になっている。これを克服するための手法として、施設利用料にサービス購入料を加える「混合型」や、他の収益施設と組み合わせる「複合化」などが有力視されている。

 前回は、政府が文教施設についても、コンセッション導入の重点分野として、2018年度までに3件の事業に取り組むという目標を掲げているということ。そして、現時点でその1件とカウントされている、旧奈良少年刑務所の事例を紹介した。一方、既に2年以上前にコンセッション方式を活用して民営化された国立女性教育会館の事例についても、その概要やスキームを説明した。

VIPルームを収益源に

 文教施設にコンセッション方式を導入する場合、国立女性教育会館と同じような、利用料収入に公共(自治体)からのサービス購入料(委託料)収入を加える「混合型」が、一つの有力な手法となるだろう。一般的に文教施設では、ある程度の利用料収入は得られても、独立採算が成り立つ水準までは期待できないケースが多い。その点は、空港や道路のコンセッション事業と大きく異なるところだ。

 ただ、文教施設の中でもスポーツ施設は、比較的収益性を見込みやすい分野といえる。ネーミングライツの活用のほか、プロスポーツやコンサートなどの興業を誘致したり、VIPルームや年間契約席を設置したりすることで、収益の向上を図ることができるためである。

 海外では、サッカーやラグビーの選手が、試合前にそのVIP ルームを訪れたりもする。富裕層向けラウンジのようになっていて、全体収益への貢献度もかなり大きい。試合のない日も使えるオフィスや会議室を備えるスタジアムもある。

 我が国でも経済産業省やスポーツ庁が、スポーツ施設の収益モデルを確立し、「コストセンター」から「プロフィットセンター」への転換を図ろうとしている。最近ではこうした政策を反映して、言葉の上でも「競技場」ではなく「スタジアム」、「体育館」ではなく「アリーナ」という表現が用いられるようになってきた。

吹田サッカースタジアムVIPエリアのラウンジ(写真:生田将人)

 とはいえ、スポーツ施設も収益の拡大には限界がある。特に市民利用と併用しなければならない“体育館”については、前述した混合型スキームが中心になるだろう。残念ながら日本には現在、“アリーナ”スポーツで継続的に採算のとれるコンテンツが存在しないことも影響している。

サッカー場に高齢者住宅?

 文教施設の収益力の弱さを克服する手法として、混合型のほかに「複合化」というものも考えられる。他の施設と一体的に運営し、それぞれが相互補完することで、全体としての収益性を高めようとするやり方だ。

 実際、海外には、ショッピングモールや高齢者住宅などを併設したスポーツ施設がある。例えばスイスのFCバーゼルというサッカークラブのホームスタジアムには、高齢者住宅が併設されており、部屋にいながらサッカー観戦が楽しめる。高齢者がサッカーの試合に熱狂する姿はイメージしづらいかもしれないが、子供や孫が頻繁に訪ねて来るようになると聞けば納得できるだろう。

 さらに視野を広げると、単体施設の複合化だけでなく、街やエリア全体での複合化も考えられる。スポーツ施設など文教施設を街の中心に据え、その周りにショッピングモールやホテル、レジャー施設、公共施設などを集積させ、街全体としての収益性を高める工夫だ。

 東京ドームを中心に商業施設などを配した東京ドームシティや、さいたまスーパーアリーナの周辺に公共施設や商業施設などが集まるさいたま新都心をイメージするとわかりやすいかもしれない。

 政府も経済産業省が中心となって、「魅力あるスタジアム・アリーナを核としたまちづくり」という政策を進めている。要は、試合や興業のない日でも、そのスポーツ施設や周辺エリアに人が集まる仕組みを作るということだ。

 このような街やエリア全体での複合化を考えた場合に最適と思われる事業スキームが、前々回ご紹介したLABV(Local Asset Backed Vehicle)型まちづくり会社である(図表1)。

図表1:英国のLABV(Local Asset Backed Vehicle)
(資料:三井住友トラスト基礎研究所作成)
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 例えば、自治体がエリア全体の土地を現物出資し、民間企業が現金出資してまちづくり会社を作る。その下に個別事業として、スポーツ施設、商業施設、ホテル、レジャー施設などの運営会社をぶら下げ、現物出資された土地上に開発した施設の運営収益をLABV経由で分配する。まさに、官民一体となったまちづくり会社の仕組みである。

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