PPP/PFIと公的不動産のいま

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第11回 先鞭つけた女性教育会館/文教施設へのコンセッション導入(前編)

解説:福島 隆則=三井住友トラスト基礎研究所投資調査第1部主席研究員、構成:坂井 敦=フリーランス【2017.10.10】

スタジアムやアリーナ、図書館、美術館などの「文教施設」は、文化的な生活を送る上で不可欠なインフラだ。政府は文教施設において、2018年度までに3件のコンセッション事業に取り組むという目標を掲げている。現時点では、旧奈良少年刑務所の案件1件がカウントされているようである。一方で、既に2年以上前にコンセッション方式を活用して民営化された施設もある。埼玉県にある国立女性教育会館だ。

 2011年のPFI法改正で我が国に初めて導入されたコンセッション方式では、重点分野と取組件数の目標が示されるなど、政府による強い推進策がとられてきた。

 これまで政府は、3回にわたってそうした取組方針を提示している。1回目は2014年6月に示されたもので、「2016年度までに空港6件、上水道6件、下水道6件、道路1件」のコンセッション事業への取組を目指すというものであった。この目標は既に期限が到来しているため、政府によるレビューも行われている(図表1)。

図表1:「PPP/PFIの抜本改革に向けたアクションプランに係る集中強化期間の取組方針について」(2014年6月)で示された目標のレビュー
(資料:未来投資会議 構造改革徹底推進会合「第4次産業革命(Society5.0)・イノベーション」会合(2017年4月19日)資料などをもとに三井住友トラスト基礎研究所作成)
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 2回目は2016年5月に示されたもので、「2018年度までに文教施設3件、公営住宅6件」のコンセッション事業への取組という目標が加わった(図表2)。

図表2:PPP/PFI推進アクションプラン(平成28年)概要
(資料:内閣府(民間資金等活用事業推進会議)「PPP/PFI推進アクションプラン(概要)」(2016年5月18日))
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3回目は今年6月で、「2019年度までにクルーズ船向け旅客ターミナル施設3件、MICE施設6件」のコンセッション事業への取組という目標が、新たに追加されている(図表3)。

図表3:PPP/PFI推進アクションプラン(平成29年改訂版)概要
(資料:内閣府(民間資金等活用事業推進会議)「PPP/PFI推進アクションプラン(平成29年改訂版)(概要)」(2017年6月9日))
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 これらのうち今回と次回のコラムでは、2回目の目標で重点分野となった「文教施設」へのコンセッション方式の導入を取り上げる。

 文教施設とは、スポーツ施設、社会教育施設、文化施設を意味する。より具体的には、スタジアムやアリーナ、公民館、図書館、博物館、美術館などの施設が該当する。これらの施設でも老朽化の進んでいるものが多く、各自治体は厳しい財政の中、改修や建替などの対応を迫られている。

 前述の通り、政府は文教施設において、2018年度までに3件のコンセッション事業に取り組むという目標を掲げている。2017年4月時点で取組済みとしてカウントされているのは、既に優先交渉権者が決定している旧奈良少年刑務所の案件だけだ。一方、検討中の案件は、大阪市の新美術館、京都府の新スタジアム、和歌山市のテニスコートと芸術文化活動施設、伊豆の国市の史跡などとなっている*。

*2017年4月19日 未来投資会議 構造改革徹底推進会合「第4次産業革命(Society5.0)・イノベーション」会合(PPP/PFI)(第6回)の内閣府資料より

 取組済みとされた旧奈良少年刑務所は、明治政府が建設した“5大監獄”(千葉、金沢、奈良、長崎、鹿児島)のうち唯一現存するもので、国の重要文化財にも指定されている。100年以上にわたって使用されてきたが、今年3月に閉鎖した。法務省は、建物の保存・活用を手がける優先交渉権者として、ソラーレ ホテルズ アンド リゾーツを代表企業とする「ソラーレグループ」を選定。2019年〜2020年にかけて、史料館やホテルなどに生まれ変わる予定だ。

国立女性教育会館の混合型コンセッション事業

 時期が早かったせいか、取組済みとしてカウントされていないようだが、実は文教施設には、コンセッション方式を活用して既に民営化されているものがある。埼玉県嵐山町にある国立女性教育会館だ。

 国立女性教育会館は、女性のための社会教育施設として1977年にオープンした。約10万㎡の敷地には、宿泊棟3棟、研修棟、実技研修棟、テニスコート、体育館、茶室などの施設があり、総延べ床面積は約2万7000㎡に及ぶ。

 2015年7月にコンセッション方式を活用して民営化されるまで、施設の所有・運営は、文部科学省所管の機関である独立行政法人 国立女性教育会館(National Women’s Education Center、通称NWEC(ヌエック))が行ってきた。民営化の目的は、施設の有効活用とサービス水準の向上であった。公募の結果、運営事業者には地元のビル管理会社が選ばれた。運営権設定対価は約4.1億円であった。

 資金調達に関しては、金融機関からの借入はなく、全て運営事業者による出資で賄われている。一方、実際の運営においては、宿泊料など施設の利用料収入のみによる独立採算は難しいとの判断から、施設の維持管理の委託料も加わる「混合型」のスキームとなった。事業期間は10年で、この間の委託料は約6.4億円となっている。また、想定以上の利益となった場合にはNWECにもその一部が分配される、「プロフィット・シェアリング」という仕組みが導入されているのも特徴的である(図表4)。

図表4:国立女性教育会館のコンセッション事業スキーム
(資料:三井住友トラスト基礎研究所作成)

 この事業では、コンセッション導入前の年度と比べ、利用者数が増加するなど、民営化に一定の成果が出ているようだ。同会館は国所管の施設であったが、同じような文教施設を所有・運営する自治体にとっても、コンセッション方式導入の参考になる事例と言えるだろう。

福島 隆則(ふくしま たかのり)
三井住友トラスト基礎研究所 投資調査第1部 主席研究員
福島 隆則(ふくしま たかのり) 1967年生まれ。早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了(MBA)。自治体のPPPアドバイザリー業務や、インフラ投資の調査・コンサルティング業務に従事。内閣府「民間資金等活用事業推進委員会」専門委員。経済産業省「アジア・インフラファイナンス検討会」委員。国土交通省「インフラリート研究会」委員。国土交通省「不動産証券化手法等による公的不動産(PRE)の活用のあり方に関する研究会」委員など。早稲田大学国際不動産研究所招聘研究員。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)。著書に『よくわかるインフラ投資ビジネス』(日経BP社、共著)、『投資の科学』(日経BP社、共訳)。

この記事のURL http://www.nikkeibp.co.jp/ppp/atcl/tk/PPP/051300040/092900014/