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PPP/PFIと公的不動産のいま

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第3回 海外との比較で見えるPPP/PFIの目指すべき形(後編)

解説:福島 隆則=三井住友トラスト基礎研究所投資調査第1部主席研究員、構成:坂井 敦=フリーランス【2016.7.29】

前回に引き続き、海外事例との比較から、日本のPPP/PFIの課題を探っていく。前編では、日本独特の「従来型ハコモノPFI」から脱皮して、運営にインセンティブを付ける仕組みを導入することなどが、公共サービスの質の向上にもつながることを指摘した。後編では、「SPC株式の流動化」に関する海外との違いについて取り上げる。

 海外のPPP/PFIと比較すると、日本の場合、設立したSPC(特別目的会社)の資金調達先や株主構成が、そのPFI事業の建設段階と運営段階を通じて変わらないことが多い。この一見何気ない違いにより、日本のPPP/PFIは、本来得られるはずのさまざまな恩恵や経済効果を得られずにいる。なお、資金調達先とは借り入れ先となる金融機関などのこと。株主構成とはSPC株式の所有者、すなわち株主の顔ぶれを表す。

 例えば、ある企業グループがPFI事業を受注したとする。その際、通常は、中心となる建設会社などが出資(株式を取得)する形で、そのPFI事業専用のSPCが設立される。出資といっても実態は、そのPFI事業への“参加料”、“責任出資”的な意味合いが強いだろう。

 そのため、この出資分は、事業規模全体の1%にも満たない程度の金額で、残りの99%以上は金融機関などからの借り入れで賄われることが多い。つまり、100億円のプロジェクトでも、出資額は1億円に満たないことになる。海外でのSPCへの出資は、全体の10%ぐらいであることが多いようだ。また、この出資分に対する配当利回りも日本では数%程度だが、海外では10%前後になることも多いようである。

建設会社にSPC株式を持ち続けるメリットはない

 もっとも、本題はここではない。SPCの出資持分、すなわちSPC株式を、その事業が運営段階に入っても、建設会社が持ち続けていることが問題なのだ。

 PFI事業の対象となるインフラの建設が始まり、やがて竣工。そして運営段階に入る。長期間に及ぶその運営段階においても、建設会社が保有するSPC株式は、そのままであるケースが多い。したがって、多くのPFI事業を受注している建設会社などは、それだけ多くのSPC株式を抱えたままとなっている。個々の出資額は数百万~数千万円程度と少額ながら、手がけたプロジェクトごとに保有しているため、合計すればそれなりの金額になるはずだ。また、もし連結対象となるようなら、建設会社本体の財務への影響も無視できなくなるだろう。

 事業が運営段階に入り、厳密には一定期間が過ぎれば、“インフラの作り手”としての建設会社の役割は終わるはずだ。瑕疵担保責任などがあるため、運営段階に入ってすぐに建設会社の役割が終わるとは限らないが、事業が安定稼働すれば、建設会社は出資持分を売却し、代表企業を降りることもできるはずだ。

 そうすれば、建設会社はそこで資金回収を図り、その資金をまた別の新しいプロジェクトに振り向けることができる。しかし現状は、多数のSPC株式に投下された資金が眠っている状態だ。これは民間企業として、資金効率上、許容できることではないだろう。

 日本では、運営段階に入った際に、SPCの株主構成が変わることは極めて希だが、海外では一般的なことだ。それでは、建設会社などが持っていたSPC株式を、代わりに誰が取得することになるのか。例えば、そのインフラの運営に携わる企業が考えられるかもしれない。

 しかし、運営会社も必ずしもSPC株式を取得する必要はない。SPCとの委託契約などで運営の実施が担保されていれば、年金基金やインフラファンドといった直接事業には携わらない投資家が、SPC株式を取得しても構わないのだ。

 こうした投資家が資本市場でSPC株式を取得することができるようになれば、インフラに関する資金循環(取引)が起こるようになる。これまで日本では、こうした資金循環が起こってこなかったため、インフラ投資市場が発達しなかったといっても過言ではない。日本には、世界有数規模の株式市場や不動産投資市場があるにも関わらず、インフラ投資市場はほぼゼロというのは、極めてアンバランスと言わざるを得ない。

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