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新・公民連携 円卓会議 2016

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地方創生・8つの視点(8) 循環型社会

地域の多様性がハピネスを生む

涌井史郎氏 東京都市大学特別教授、造園家・ランドスケープアーキテクト

構成:守山 久子=ライター【2017.3.31】

 社会のサステナビリティを担保するためには、今日を起点に将来像を描くフォアキャストではなく、バックキャストの考え方が求められる。つまり、地球に限界があるということを前提に、そこから現在の暮らしをどうしたらいいのかを考えていく。先進国が1%成長を抑制するだけで、多くの途上国の成長を促すことができる。

わくい・しろう
1945年神奈川県鎌倉市生まれ。1969年東京農業大学農学部造園学科出身。東急グループの造園・植栽会社、石勝エクステリアを創設。主な作品として、長崎オランダ村に続くハウステンボス、千葉土気東地区ニュータウンなどのランドスケープデザイン、多摩田園都市などのランドスケープ計画を手掛け「愛・地球博」では、会場演出総合プロデューサーを務める。国連生物多様性の10年国内委員会委員長代行、首都高速「大橋ジャンクション環境対応委員会」ならびに「大規模更新検討委員会」座長、環境省「国立公園満喫プロジェクト有識者会議」座長など、数多くの国・自治体・法人の委員を歴任。日本造園学会賞、黄綬褒章など受賞歴多数。TBS「サンデーモーニング」など、テレビのコメンテーターとしても活躍中。著書に『景観創造のデザインデベロップメント』(綜合ユニコム)、『いなしの智恵』(ベスト新書)など。中部大学中部高等学術研究所客員教授、東京農業大学地域環境科学部客員教授、岐阜県立森林文化アカデミー学長、なごや環境大学学長なども務める。(写真:北山 宏一)

 私たち自身のライフスタイルを変えるに当たり、指標となるものは何か。今までの私たちは経済を指標とし、豊かさを追い求める社会構造こそが重要と考えてきた。しかし今では、ハピネスや心の豊かさを深めたいという考え方が強くなっている。国民生活に関する国の調査結果を見ても、1980年以降は、モノより心の豊かさを求める国民が増え、近年では6割を超えている。心の豊かさや幸福感を論拠にした社会をどうつくっていくかという視点が欠かせない。

ハマちゃんとスーさんは両立する

 そうした社会では、東京と地方が相反する立場にあってはいけない。東京は国際的な都市間競争に勝ってほしいし、同時に地方も豊かであってほしい。そうなれば、生活者である我々にも二面性が出てくる。人気漫画『釣りバカ日誌』に例えれば、時にはビジネスの勝ち組となる「スーさん」であり、時には余暇を楽しむ「ハマちゃん」でありたいと願う。

 両者は、従来型の社会では共存できなかった。しかし、IoTやICTの発達によって様々な情報やモノの移動が容易になると、スーさんのみならずハマちゃん型のハピネスも可能になる。スーさんもハマちゃんも両方満足できる社会のイメージを共有していくことが重要だ。

 心の豊かさ、ハピネスは、かつての日本には存在していた。幕末から明治にかけて来日した欧米人の多くは、「この国は経済的には貧乏だが、心の貧しい人間を見たことがない。皆が笑い、楽しみ、豊かに暮らしている」と称賛した。

 江戸時代の日本は、鎖国と幕藩体制によって自然資本に依拠した暮らしを強いられ、その中から、それぞれの地域に根差した自然共生と再生循環の知恵を学んできた。いま一度その原点に立ち返って新たな技術開発を考えていくことが、これまでとは別の形で新たな経済成長を促す強力なエンジンになっていくのではないか。

 なぜなら、今、先進諸国の多くの人たちが感性価値を求めているからだ。従来型の少品種・大量生産、コストダウン、プライスダウンというメカニズムではなく、多品種・少量生産の中で個性を発揮する商品に、空間に、皆が引かれている。そうした時代における国土像は、多様性に富んだものが望ましい。対立的に語られがちな東京と地方の関係にしても、東京がどうけん引していくのか、という役割分担の議論になる。(談・2016年12月22日)

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