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新・公民連携 円卓会議 2016

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地方創生・8つの視点(6) 職人技

技の集積が生み出す「景観」は地域の財産

挾土秀平氏 職人社 秀平組代表、左官技能士

構成:守山 久子=ライター【2017.3.31】

 僕が住んでいる飛騨高山の山村には、築100年の旧家が建っている。平たい切り妻屋根を持つ母屋と土蔵の周囲に石垣が巡り、背後には檜の木々が並ぶ山が、手前には水田が広がる、日本らしい風景だ。

 ところが隣に北欧風の外観をまとったプレハブ住宅などが建った瞬間、日本らしいその景観は成立しなくなってしまう。

はさど・しゅうへい
岐阜県高山市生まれ。左官技能士。1983年、技能五輪全国大会左官部門優勝。2001年、「職人社 秀平組」設立。土にこだわる壁作りを目指し、都心を中心に、日本全国はもとより、海外でも活躍の場を広げている。また、左官業だけにとどまらず、土や木、藁などといった、自然に帰るものだけを使ったアート作品や、土を原料にした化粧品でのメイクなど、最近ではNHK大河ドラマ『真田丸』の題字制作など、幅広い活動を展開する。主な仕事に「八ヶ岳マツボックリの野菜蔵」「金沢黄金の蔵」「ザ・ペニンシュラ東京」「洞爺湖サミット」「アースメイク」「氷雪の壁」など。ライフワークとして、大正期の西洋館を移築した、その再生と周辺の里山づくりに取り組む。著書に『ソリストの思考術 挾土秀平の生きる力』(六耀社)、『ひりつく色』(清水弘文堂書房)、『青と琥珀』『歓待の西洋室物語』『光のむこう』(以上、木耳社)など。(写真:北山 宏一)

 昔ながらの景観として脚光を浴びる観光都市が、実はペンキ塗りのハリボテで古さを演出しているという風景も珍しくない。

 こうした変化を見つめ続けるうち、僕たち職人は、景観をつくってきたのだと気付いた。職人が手掛けた塗り壁や、大工が丁寧に建てた家が景観を育んできたのだ。

今すぐ始めないと間に合わない

 左官職人として独立した2001年当時、地元には既に左官の仕事はなかった。やがて東京から呼ばれるようになり、一流ホテルなどの現場で、相手の要求に応えつつも創造性に富んだ土壁を手掛けた。しかし、そうして東京で稼いで地元に戻ると、さっぱり仕事がない。

 そうした状況から、新しい塗り壁の試作やサンプル作りをするようになり、やがて、サンプルを空間にしてみたいという思いに駆られ、1000坪の原生林を入手し、100年前の廃家同然となった旧家を移築し、少しずつ手を加えてゆく実験的勉強を始めた。

 もう既に引退し、現場から離れた職人たちの力を借り、16年間、少しずつ作業を進め、ようやく完成に近付いている。

 そこで気付いたのが、小さな石でも積み重ねていくと次第に風景に力が生まれてくることだ。小さな作業の積み重ねこそが、力を感じさせる景観へと結び付く。

 かつての日本は、海外の人から「素材の国、水の国、日本」と称賛され、お金では買えない価値があると評価されてきた。

 こうした評価は、行政が旗振りをすれば得られるというものではない。素材感や微妙な色合いを理解する「目利き」が重要な役割を果たす。また、昔ながらの職人は、伝統の技を現代の感覚に合わせて使うことが苦手なので、デザイナーと職人の間に入って通訳するような“職人プロデューサー”も必要だろう。

 僕は、地域の職人を集め、地域の素材を使ったまちづくりのプロデュースをしてみたいと思っている。今すぐ始めないと間に合わないという危機感を強く抱いている。

 職人が減り、職人の技の素晴らしさを理解できる人も減っていく。やがて職人は消え、まちや国の風景も無国籍に変わってしまい、「景観」という地域独自の財産は失われてしまうのではないかと危惧している。(談・2016年12月22日)

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