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新・公民連携 円卓会議 2016

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地方創生を本音で徹底議論する

新・公民連携 円卓会議 2016

構成:守山 久子=ライター【2017.3.31】

多機能の組み合わせに民間の知恵を生かす

――地域活性化に向けては、民間の役割が期待されている。国もコンセッション(公共施設等運営権)方式の推進など積極的に動き始めた(*6)。

*6 コンセッション方式とは、所有権は公共側に残したままで、長期間運営する権利のみを民間事業者に売却する民営化手法のこと。2011年のPFI法改正時に導入された。

井熊 日本経済にとって公共資産のバリューを上げていくことは非常に大事。従来の日本の入札制度にのっとって、価値向上を実現するのは難しかった。その点、コンセッションのような、民間の発想でメリハリの利いたお金の使い方ができる制度は、公共資産に新しい価値を生むきっかけになると思っている。

森田 愛知県有料道路運営等事業(*7)では、当社も参加する特別目的会社が2016年8月に契約を締結し、国内初の道路コンセッション事業が動き出した。

*7 愛知県有料道路運営等事業(有料道路コンセッション)は、愛知道路コンセッション(前田建設工業を中心に、森トラスト、大和リース、大和ハウス工業、セントラルハイウェイが出資・設立したSPC〔特別目的会社〕)が、愛知県道路公社と契約して有料道路8路線を運営している。契約期間は2016年8月31日~46年3月31日。運営権対価は1377億円。事業者の主な業務は、運営権設定路線の維持管理・運営業務、改築業務、パーキングエリア(既設6カ所、新設2カ所)の建設、営業、地域活性化(道路区域内外の任意事業)。
地域活性化事業で整備するパーキングエリア隣接の商業施設「愛知多の大地」のイメージ(資料提供:愛知県)
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 当社はパーキングエリアの新築2件と改修2件を担当するほか、パーキングエリアに隣接した商業施設でファーマーズマーケットの整備を検討している。並行して、地元酪農家から買い取る牛ふんなどを用いたバイオガス発電を行い、そこでつくられた有機肥料を地元農家に回す。そして、その肥料を使って地元で取れた有機野菜を出すという、地産地消を実現したいと思っている。道路施設の価値をいかに高めるかという視点から発想したものだ。

 携帯電話とインターネットとカメラを組み合わせてスマホが生まれ、駐車場とトイレとマルシェ、レストランを組み合わせて道の駅ができた。異なる機能を複合することで新しい価値が生まれる。

河野 私たちは、六本木ヒルズや虎ノ門ヒルズに公開空地を持っているが、どういう仕掛けをしたら楽しくなって人が集まるかをまず考える。地域に賑わいが生まれることが、公益にもつながっていく。

 都市公園についても、民間が収益を出しながら管理する公園全体のマネジメントを担えるようになれば、平時のために集客の仕組みをつくり、発災時に震災施設として機能させるといった発想が可能になる。

 例えば、公園にジョギングコースをつくり、更衣室とシャワールームを備えたランニングステーションを何カ所か設けて民間で運営する。いざ地震が発生した際には、ランニングステーションは乳児の授乳や赤ちゃんのオムツ替えを行う衛生施設になる。

涌井 公園に限らず、河川や道路など従来のインフラは、目的とする機能以外での利用を排除してきた。しかし今後は、他の機能も複合化させて価値を高めようという意識が必要だ。社会資本を重層的に考え、多機能化を図ることで、無駄な公共投資も防げる。そうした方向性が生まれてくれば、民間企業が関わる機会は増えるだろう。

赤池 多様な機能を組み合わせる場合、生産性向上というビジネスの「分母」の話も大切だが、付加価値向上という「分子」について、もっと考えるべきだ。そのときに事業益と公益を両立させるCSVの考え方も有効になってくる。

 鹿児島県のメーカー(下堂園)と一緒に開発した「ボトリングティー吟醸茶」という商品は、栽培地の常温の水で有機栽培の茶葉からお茶を抽出しているが、このときに超音波の技術を使ってうま味を抽出している。1本5400円という価格だが、JR九州の「ななつ星」やANAの国際線のファーストクラスなどでも提供され、年間で2万4000本ほど売れた。すると、有機JAS認定を取りたいという地元の茶葉生産者も増えていく。

 こうして地域のいろいろな事業者を連携させて付加価値を高めた商品を開発していけば、生産者の増加につながり、国内・海外での競争力も高まる。現実的な地方創生へと結び付いていく。

森田 ビジネスの世界では、弱みを補っても他社と同じになるだけだ。価値を高めるには、強みを重ねる必要がある。お互いが強みを磨き、それを重ねることで新たな価値が生まれてくる。そうした積み重ねが大事だと感じている。

涌井 本来、科学と技術と技能は一体であるべきだ。しかし今日の日本では、科学と技術はつながっているが、技術から技能へという流れが断絶してしまっている。

 日本人は古来、扱いが難しく多様な自然と向き合いながら豊かな感性と洞察力を身に付けてきた。しかし今、それらに基づく技能が急激に失われつつある。

 今後、日本人が新たな技術やジャンルを開発できるようになるには、かつて備えていた感性や洞察力を再び取り戻す必要がある。

(写真:北山 宏一)
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*「新・公民連携 円卓会議 2016」(開催日:2016年12月22日 場所:TKPガーデンシティPREMIUM秋葉原〔東京都千代田区〕 主催:日経BP総合研究所)より。各氏の発言内容、所属組織、肩書きは会議開催時のものです。
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