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人口は減っても元気なまちづくり

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第6回 和歌山県有田川町――民間・若者が中心となり“日本のポートランド”を目指す

佐保 圭=フリーライター【2017.7.4】

民間のまちおこしがポートランド流で加速

 時を同じくして、住民側でも「町の人口減少を食い止める取り組み」が動き出す。

 和歌山県の持続可能なよりよい社会の実現に取り組む「PLUS SOCIAL」の有井安仁氏は、まちづくりに興味を持ち、取り組み始めた頃、たびたび、ポートランドを訪れるようになり、当時、ポートランド市の開発局で働いていた山崎満広氏と出会い、交流を深めていった。

 そんなある日、山崎氏から、ポートランドと連携で真剣にまちづくりに取り組んでくれる町を紹介してほしいと頼まれた。有井氏の頭に浮かんだのが「有田川町」だった。有井氏はかつて、映画「ねこにみかん」の制作の仕事で、ロケ地である有田川町の住民が果敢に新しいことにチャレンジする人たちだと実感していた。そこで、この町でポートランド型のまちづくりができるのではないかと考え、知人で有田川町民の上野山栄作氏に声をかけた。

 有井氏と上野山氏は、有田川町の住民の30代後半の高校教師、40代半ばのみかん農家の経営者、そして、当時32歳の丸十家具の森本信輔代表の3人を居酒屋に呼び、思いを語った。

 こうして「有田川町 まち・ひと・しごと創生総合戦略」の作成開始と同じ頃の2015年4月末、住民による地方創生プロジェクト「有田川という未来 ARIDAGAWA2040」、通称「AGW(KEEP ARIDAGAWA WEIRD)」が立ちあがった。

 有田川町とポートランド市には共通点があった。環境を重視していることと、住民がまちの活性化の取り組みに積極的であることだ。この共通点を背景に、ポートランド市側でも、有田川町の取り組みの支援に積極的な姿勢をみせた。町の職員である高垣氏も、有田川町の住民としてAGWに参加し、行政と住民の橋渡し的役割を担った。

 同年7月、プロジェクトは、ポートランド市開発局の職員による講演会やワークショップ、フィールドワークなどの開催から活動をスタートさせた。

 2015年10月に行われたワークショップでは「廃園となり取り壊される予定の田殿保育所をまちの拠点として生まれ変わらせるとしたら、どういったリノベーションをしたいか」「周辺住民や自然環境と、どのような関わり方ができたらよいか」というテーマで話し合われた。参加住民を約15名ずつ4つのテーブルに分け、ポートランドから来た7名のゲストが各テーブルに入り、持参したキットを活用しながら、参加者がアイデアを出せるようにサポートした。

 旧田殿保育所は現在、AGWのメンバーの持ち出しとDIYでリノベーションが行われ、地域住民が集まる交流拠点へと生まれ変わっている。定常的に維持していくために、2017年4月には行政が獲得した地方創生拠点整備補助金を活用して、民間の運営事業者を株式会社 地域創生(本社:和歌山県有田川町)に決めた。同社は、AGWのメンバーなど住民と有田川町とで協議会を作って連携しながら運営方針を決め、2017年7月にはテナントとしてカフェなどの事業者を入れる準備を進めている。

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町民が旧保育園をDIYでリノベーションして交流拠点が誕生。思い出写真の展覧会も開催された(下)(写真:2点とも有田川町)
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 町役場の「有田川町 まち・ひと・しごと創生総合戦略」と同様に、AGWも「女性が住みたい町づくり」を重要課題の1つとしていた。しかし、結成当初、AGWには女性メンバーがいなかった。そこで、女性のまちづくりの参加者を増やすため、「有田川という未来 ARIDAGAWA2040」の取り組みの一環として、20〜39歳の女性限定のまちづくりフォーラムを開催した。有田川町役場は「主催」となることで、AGWの取り組みを支援した。

 俳優の伊勢谷友介氏をゲストに迎えたフォーラムは“ヒット企画”となった。 伊勢谷氏は、栃木県那須塩原市の黒磯駅前エリアの再開発に伴う中心市街地のまちづくりで、ポートランドの事例を参照して市民参加型のワークショップを実施するなど、未来における生活を新たなビジネスモデルと共に創造していくことを目的とした「リバースプロジェクト」代表でもある。このフォーラムには100人を超える女性の参加者があり、女性のまちづくりグループ「有田川女子会(=Up Girls)」が結成されるきっかけにもなった。こうして女子会による町のガイドブックの作成や料理講習会などのイベントの取り組みが始まった。

 現在、AGWの登録者は約50名を数えるが、女子会などで活躍している人の多くがこの数に入っていないし、そもそも、登録者以外の活動やメンバーについては、はっきりとは把握していないという。

 AGWの立ち上げメンバーで、現在、代表を務める森本氏は言う。「AGWの活動には、ピクニック、婚活イベントなど、いろいろある。講師を呼んでガチでまちづくりを学ぶ会もあり、ポートランドのまちづくりを学んでいるのも、その事業の1つです。自分が参加したいところに行けばいい。まちづくりという固いものに縛られてなくてもいい。AGWは、協力はしても、批判と干渉はしない。この町でこういうことがしたいと思ったとき、共感した人が協力できる母体、それがAGWのあるべき姿だと思っています」。

 結果、有田川町では、若い住民を中心としたまちづくりの取り組みやイベントが活発化し、その準備や話し合いのための集会も飛躍的に増え、若者たちが有田川町の魅力を再発見し、有田川町の住民としてのプライドの醸成につながっているという。この若者たちの活き活きとした暮らしぶりが、有田川町のイメージアップにつながり、県内はもちろん、県外からの若者の移住者も目に見えて増えてきつつあるという。

 「ポートランドもそうだと聞いていますが、『住んで』『移住してきて』とは言ってない。そんなこと言わなくても、その町の住民が楽しく暮らしているのを見た人たちが、移住してくると思うんです。僕らも、肩肘張らずに『まちづくり』を楽しんでやれば、おのずとそういう方向に向かっていくんじゃないかって。2040年には『日本で1番住みたい町になる』みたいなこと言っていますが、あながち、そんなむちゃくちゃなことじゃないと思っています」(森本氏)

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