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人口は減っても元気なまちづくり

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第6回 和歌山県有田川町――民間・若者が中心となり“日本のポートランド”を目指す

佐保 圭=フリーライター【2017.7.4】

学校や図書館設備を充実、教育から子育て支援につなげる

 「経験からいうと『お金がないから、やめておこう』というのが一番悪い発想やと思います」。そう真剣な表情で語る中山町長の町政の特徴は、たとえ目に見える“回収”のメドがなくとも「教育」と「子育て支援」には町からのお金の投入を惜しまない点だ。

 有田川町長になってすぐ、中山町長が保育所も含めて学校に冷房を入れ始めた頃には、まだ国からの補助金がなかったという。「昔と違って、いまは家にクーラーが入っている。それなのに、南向きの窓の大きな鉄筋校舎では、夏なんかほんまにたいへんやと聞いたんで、やっぱり環境をよぉせな、成績も上がらんということで、冷房を入れた。おかげで小、中学校では、40日間の夏休みを10日間短縮して、プログラムを増やして授業ができるし、子どもたちは給食も全部食べるから、先生も喜んでます」(中山町長)。

 1969年の建築で耐震化が課題となっていた吉備中学校も3年前に42億円かけて改築した。「普通は『耐震補強で済まそう』という発想やけど、この際、思い切ってやった。議会も含めて『教育は大事や』という認識があるから、大きな反対はなかった」(中山町長)。

 教育現場の自主性も重視している。「県下でどこもやってないと思いますが、年に1度、小、中学校の全校に『こんな授業をやりたい』というアイデアを募集して、採用された各学校に『独自に自由に使いなさい』って、予算1000万円のうちから分配しています。たぶん、そんな自治体は、県下にはないと思います」(中山町長)。

 子育て支援にも力を入れている。学童保育を充実させ、中学生まで医療費は無料だ。

 教育と子育て支援を重視する象徴的な例が「図書施設」による取り組みだ。

 『有田川ライブラリー』と呼ばれる4つの図書施設があり、それぞれ連携しながら、町民が家族で楽しめるコミュニティスペースを形成している。

 中心となるのが、2009年にオープンした有田川町地域交流センター「アレック(ALEC: Aridagawa-cho Longlife Education Center)」だ。

有田川町地域交流センター「アレック」は、「本のあるカフェ」をコンセプトとする図書施設で、いわゆる「図書館法の図書館」ではない(写真:佐保 圭)
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 アレックは、建物の面積が約2300平方メートル、サークルテラスと芝生広場、駐車場など全体面積は約1万2800平方メートルの図書施設で、一般書は約4万冊、マンガの蔵書も約4万冊を誇る。館内にはBGMが流れ、カフェでお茶やランチを楽しみながら読書ができて、館内での会話も、幼い子どもたちが駆け回るのもOK。屋内ステージでは落語などのイベントも行われ、地域の交流の場となっている。屋外でも、コンサートや地域の盆踊りなどが活発に行われている。また、年に一度『有田川町絵本コンクール』が開催され、プロ・アマを問わず毎年200作近くの応募があり、アマチュア入賞者がコンクールをきっかけに絵本作家デビューした例も出ている。

 2008年3月リニューアルされたJR紀勢本線(きのくに線)の藤並駅には、有田川町ちいさな駅美術館「Ponte del Sogno(ポンテ・デル・ソーニョ)」がある。

 定期的に絵本の原画を展示し、約2000冊の絵本の蔵書があり、子どもたちや地域住民の憩いの場となっている。有名絵本作家のおはなし会やサイン会も行われ、週に1回、有田川町の女性が集まり、子育ての悩みなどを語り合う会も続けられている。

ちいさな駅美術館「Ponte del Sogno」(写真:佐保 圭)
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 金屋図書館は、町内の児童向け図書サービスの中心となる図書館として、児童書、子ども向けの調べものの資料・図鑑が充実し、子どもを対象としたワークショップなども開催される。

 有田川上流の清水地域にある八幡中学校内の図書室『しみず図書室』には、児童書から一般書までがそろっている。

 これら4つの図書施設で頻繁に催されるイベントの中には、町民主導で行われるものもあり、教育と子育て支援、町民の憩いの場の提供だけでなく、まちの暮らしの向上と活性化の取り組みに住民が積極的に参加・参画する機運の醸成にもつながっている。

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