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人口は減っても元気なまちづくり

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【番外編】

50年間人口が増え続ける、和歌山県上富田町の秘密

農業の町を商工業から教育の町へと変貌させて魅力を維持

取材&文=佐保圭【2017.3.22】

魅力ある教育と住宅を整備し「住みたいまち」をつくる

 2010年に議決された第4次総合計画のテーマは「みんなが学んで花ひらく口熊野かみとんだ」で、それを代表するのが、2006年にNPO化された総合型地域スポーツクラブ『特定非営利活動法人くちくまのクラブ(通称 Seaca)』の活動だ。

 総合型地域スポーツクラブは、1995年から文部科学省が実施するスポーツ振興施策で、全国に存在する。しかし、スポーツセンターと文化会館を有する上富田町のSeacaの充実ぶりは、群を抜いている。毎月500円の会費さえ払えば、サッカー、野球、バレーボール、バスケットボール、バトミントン、空手、柔道、剣道、ダンスなどのスクール、英会話、卓球、カヌー、レスリングなどのサークルに自由に参加できるのだ。現在、上富田町の約870人の小学生のうち約500人が参加。これらの運営も町民のボランティアが主体となり、商店も含めた地元企業160社の寄付金やイベント時の参加賞の提供などでサポートされている。

 「町に人が増える要素では教育が大事だと思います。Seacaに子どもを通わせたいからと上富田町に移り住む人もいます」と小出町長は胸を張る。実際、上富田町以外の市町村からも150人ほどの小学生がSeacaに参加しているという。

 働く場所(仕事)があり、住民たちが積極的にイベントや教育活動に参加し、自分たちの暮らす町に誇りと愛着を持っている上富田町は、近年、田辺市や白浜町で働く人たちに「住む場所」としても選ばれ始めた。とりわけ、瀟洒な住宅が並びセンスの良い飲食店も点在する「南紀の台」エリアの人気は高く、造成・開発が積極的に進められ、町の人口増加に直結している。

上富田町のみならず、周辺の田辺市、白浜町で働く若いファミリー層からも人気の高い住宅地「南紀の台エリア」
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 こうして「住み続けたい町」の魅力に「移り住みたい町」の評価を加えた上富田町では、転入者が転出者を上回り、今も人口増加を維持している。それでも「金がない」という事実に変わりはないという。

 小出町長は、悪びれることもなく「うちは学校給食の実施が和歌山県で一番遅い」と告白する。「学校の耐震化とか、保育所をつくるなど、公でがやるべきことは役場で優先的に実行する。その代わり、学校給食は後回し。個人でカバーできる部分はできるかぎり個人でしてほしいという旨を町民に伝えている。学童保育も民間にやってもらう。財政が貧弱だから、できない部分は民間の人が助けてくれる。昔からそうだ」(小出町長)。

 上富田町の行政の特徴は「したたかさ」だ。「町財政の脆弱さ」を武器に変え、住民や地元企業の協力・支援を得ることで、「移り住み、住み続けたくなる町づくり」を“自分ごと”として実現させてきた。それが「人口増加」の秘密を解く鍵だった。

 最後に、どうすれば住民や地元企業が町に誇りと愛着を持てるようになるのか、尋ねた。

 「一番大事なのは、人のつながり。人の和を大事にしたら、必然と、他の人も大事にしてくれます」

 上富田町の取り組みは、地方創生はもちろん、日本全体の今後を考えるうえでも示唆に富んだ実例と言えるだろう。

企画・運営
  • 日経BP総研


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