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麓幸子の「地方を変える女性に会いに行く!」

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「農家の母さんだからできることがある」その志が年商2億円の事業へと発展

Vol.08 石垣一子さん(陽気な母さんの店代表取締役社長)

聞き手:麓幸子=日経BPヒット総合研究所長・執行役員、取材・文:熊谷渓子=石山デザイン事務所【2017.1.11】

100人の女性の嘆願書を否決された悔しさをばねに

――そこで、リヤカーで農産物を売り歩く直売活動を始めたのですね。固定客が増えて活動が軌道に乗り始める中、常設の直売所がほしいと思ったきっかけは何でしょうか。

石垣 農業を「家業」ではなく「職業」にしたかったからです。農家は収穫がなく無収入の時期もある不安定な仕事で、家長の指示に従って休日もなく働かなければなりませんでした。でも、収入を計画的にコントロールすることで、安定した収益を上げて休日を取ることができるのではと考えたのです。

 目の前の仕事をこなすだけではなく、自分で仕組みをつくらなければ状況は何も変わりません。農業に夢を託していきたいと思っても、農家の女性が軽く見られる風潮は根強くありました。私は胸を張って、農業を職業として選んでいると伝えたい。だから、農家の女性の活動を発信できる拠点がほしいと思うようになりました。

――店舗を構えることは覚悟が必要だったと思いますが。

石垣 地域の女性農業従事者たちと共に、行政に女性の思いを話す活動を地道に続け、2000年に、常設直売所の設立を要請する女性100人の嘆願書を市議会に提出しました。しかし、結果は7人の男性の反対により却下されてしまったんです。あまりの悔しさに声を上げて泣いたことを覚えています。

 でも、女性はすぐにあきらめるという前例をつくってしまったら、今後さらに女性の活動は認められにくくなる。女性だからこそあきらめてはいけない、仲間たち全員でどんな形でも実現すると腹をくくり、任意団体「友の会」を設立。会員が1人3万円ずつ出資しました。結局、01年に15年間のリース契約を結んで借りた土地と建物で、「陽気な母さんの店」はスタートしました。

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国道103号線沿いにある「陽気な母さんの店」。「新鮮」「安心」「安全」をモットーに旬の農産物や手作りの味を販売。生産者の顔写真が並ぶ。ここの出荷者全員が、堆肥利用と減農薬栽培の「エコファーマー」認定を受けている。併設されている食堂では伝統の中山手打ちそばなどを提供する(写真:大槻純一)

生産者であり消費者であることが強み

――厳しい状況でもあきらめずに一歩を踏み出したのですね。事業内容とコンセプトについて教えてください。

石垣 事業の柱は「販売・宅配・食堂・体験」の4つです。「販売」部門は、出荷者全員が、堆肥利用と減農薬栽培の「エコファーマー」認定を受けており、生産者の名前を明示して旬の農産物を提供しています。また、地元には車をもたず買い物に不便を感じる高齢者も多く住んでいるので、「宅配」部門も欠かせません。さらに、「そばの会」で販売した打ちたての生そばを「ぼろぼろ切れてしまう」と言われた経験から、本当の中山そばを知らない人がいることが分かりました。本物を伝えるのも生産者の責任だと思っています。「食堂」や「体験」を通じて地域に伝わる食文化を伝え、社会の「母さん」になることを目指して立ち上げました。

――社会の「母さん」というのは具体的にはどういう存在ですか。

石垣 私たちは生産者でもあり、消費者でもあります。農家と主婦、両方の気持ちが分かることが強みです。ただ売るだけではスーパーにかないません。でも、スーパーで野菜を買っても、おいしい食べ方を店員に聞くことはあまりないですよね。そんな素朴な疑問を投げかけやすい雰囲気をつくりたい。

 例えば、以前「旬のものを買うと毎日同じ野菜ばかり食べてしまって」という悩みをお客さんから聞きました。私たちも毎日家族の食事をつくるので、その気持ちはよく分かります。その上で、旬の野菜の効能を説明し、料理のレパートリーを提案しました。

 生産者も質問に答えられるよう勉強を重ねますし、消費者の気持ちを聞くことで生産に生かすこともできます。食品市場は日々ものすごいスピードで変化しています。だからこそ、生産者と消費者の間に双方向の直接的な交流を生み出せる「母さん」の存在が重要だと思うんです。その一環として、旬の野菜でつくった料理を無料で店頭客にふるまう「ふるまいの日」を毎月設けています。6人の野菜ソムリエが、食材の摂取量や料理法のアドバイスもします。

頭に手ぬぐいと絣の着物。一見農家の母さんそのものだが、強いリーダーシップとマネジメント力で事業を拡大する(写真:大槻純一)
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――「友の会」の組織の仕組みを教えてください。

石垣 会員はほとんどが農業従事者で、弁当部・弁当加工部・環境部のいずれか1人1役を担っています。各々の農産物を持ち寄り、売上の88%を受け取る仕組みです。残りの12%は販売手数料として店に納め、運営費に使います。少しでも早く会員にお金を手にしてほしいので、振り込みは月に2回。立ち上げ当時は夫が通帳を管理することが一般的でしたが、私は会員に自分の通帳をもつように勧めました。自分の労働の成果を数字で見られるようになったことが、女性の意欲につながったと思います。

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