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麓幸子の「地方を変える女性に会いに行く!」

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歴史的建造物の保存・活用プロデュースを通じて、市民活動を育てる

Vol.12 東田秀美さん(NPO法人旧小熊邸倶楽部理事長)

聞き手:麓 幸子=日経BP総研マーケティング戦略研究所長・執行役員、取材・文:北室かず子【2017.12.20】

高校生の時に接した小樽運河保存運動で
市民のための運動とは何かを考える

──旧小熊邸保存運動は、2001年に第10回札幌市都市景観賞を受賞するなど、その取り組みは高く評価されました。東田さんの歴史的建造物の愛着の原点はどこにあるのでしょう?

東田 私は小樽生まれ小樽育ち。建築の本に載るような味わいあるアパートに住んでいたし、小学校も図書館も小児科医院も古い木造で、小学生の頃から建物が大好きでした。

 高校生の時、70年代の小樽運河保存運動を目の当たりにしました。北大の大学院生が頑張っている姿や、小樽市民が大議論している姿に接することができたのは大きかったです。ただ、運動には東京で学生運動をやっていて小樽に移住してきた方々も加わっており、赤ヘルメット、角棒、座り込み、拡声器……。これって小樽市民の運動なのかなという気持ちもありました。

──小樽運河は、保存にこぎ着けることができたんですよね。

東田 運河の南側が半分ほど埋め立てられ、歩道が整備されたのですが、運動の中心の一部の人たちは「あれは小樽運河じゃない、負けた」と。でも私にしてみればその姿も小樽です。その後、道外資本がどっと入ってきて空き倉庫が買われ、瞬く間に観光地化されていきました。

 そういう経験から、対立の構図ではなく、行政とちゃんと意見交換をし、市民エゴを抑えて対話によるまちづくりのやり方はないのかなと思うようになったんです。

ろいず珈琲館旧小熊邸で開設当時のことを話す東田さん(写真::大槻純一)
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──高校卒業後、百貨店に就職されました。歴史的建造物保存の市民運動のノウハウはどこで身に着けられたんですか。

東田 さっぽろ東急百貨店に販売員として就職し、組合活動に参加するなかで、年数回、東京へ研修に行き、全国百貨店協会のセミナーなども受けるうちに、企業として営利を追求しながら、組合活動という非営利活動ができることを知りました。女性社員がモチベーションを高めて、接客態度や技術を向上させるにはどうしたらいいか。組織運営、意見交換、役割分担の仕方を学びました。当時は男女雇用機会均等法施行直後で、大卒総合職の女性社員と一緒に、アメリカ帰りの講師から女性のリーダーセミナーを受講することもできました。10人に対して話す声の張り方と、50人、100人では違うといった実践的な内容でした。

 配属は家庭用品売り場で、当時は販売員が自分の判断で買い取りをし、ディスプレイし、返品もやっていたんです。催事のための内装業者への発注、見積り、原価計算、人の回転率と人件費の割り出し方などを日常の業務として。24歳で出産退職して3年間、主婦をした後、新聞配達をして自分のお金を作りながらカルチャーセンターでインテリアコーディネーターの講座を受講してみたら、私は図面が引けて見積りもできるということで、28歳で講師になりました。でも、やっぱりインテリアではなく建築そのものやまちづくりが好きだと気付いて講師を辞めたんですが、その時、講座の生徒さんから旧小熊邸の保存活動を聞いたのが始まりです。

──講師を辞めてから生活費はどうしていたんですか。

東田 2007年頃まで新聞配達を続けていました。ただ小熊邸復元の1年の間に、他の建物の保存の相談がきたので、あ、これはいけるかなと(笑)。やがてあちこちからの相談に応じて、その建物で事業化していくパターンができてきました。すると北海道庁から、市民活動の支援センターをつくるから相談窓口として協力してほしいという要請があって、今はNPO活動の相談員をしています。

NPO法人歴史的地域資産研究機構(れきけん)の事務所で(写真::大槻純一)
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──2012年に発足したNPO法人歴史的地域資産研究機構(れきけん)とはどのような組織ですか。

東田 旧小熊邸以後、累計で約700軒の建物に関わっているうちに、街路樹やトンネルといった、建築、土木、景観、都市計画、歴史資料、コンサルティング、レンガや瓦などの職人仕事が関係してくることが分かりました。「れきけん」はそうした専門家のチームです。角教授が北大を退官するタイミングで代表理事になっていただいて立ち上げました。

──2011年の東日本大震災の被災者の姿も「れきけん」につながったとか。

東田 気仙沼、仙台、登米など各地に行って、歴史的建造物が全壊し、文化財の歴史資料も流されてなくなった現場に衝撃を受けました。そんななかで被災者は、自分の家が壊れているのに、歴史的建造物の泥出しをしたり、山から木を切り出してきて新しい鳥居を作ったりしていました。福島県飯館村では、線量が高くて滞在時間が限られたなかで神社を復元しようとしていました。それがないと故郷じゃない、と。歴史は命なんだとわかって、感動で大号泣してしまいました。

札幌市内にあるNPO法人れきけんの事務所にて。建築、土木、景観、都市計画、歴史資料、コンサルティング、レンガや瓦などの職人仕事などの専門家がチームを組む(写真::大槻純一)
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