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麓幸子の「地方を変える女性に会いに行く!」

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里山保全で地域に愛され、100年続く産廃会社にする

Vol.07 石坂典子さん(石坂産業代表取締役社長)

聞き手:麓幸子=日経BPヒット総合研究所長・執行役員、取材&文=西尾英子【2016.12.1】

私たち自身も変わることで世の中の評価を変えたい

(写真:鈴木愛子)
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――そもそも石坂さんは、アメリカで学んだネイルの技術をいかし、その開業資金を貯めるために入社されたと伺いました。いつ頃から思いが変わり、会社の存在価値を感じるようになったのですか?

石坂:父の会社に入社して数年経ち、リサイクルのことや工場の動きが読めるようになると、私たちの事業はすごく価値ある仕事だと思うようになりました。ここには、1日にダンプ300台の廃棄物が運ばれてきます。ゴミですから汚いし、仕分け作業も過酷です。でもそれを受け入れるところがなければ、町中ゴミであふれてしまう。“こうした仕事に関わる人たちがいるから快適に暮らせる”と思えるマインドを持つ社会でないといけないと感じました。そのためには、みんなに廃棄物のことをもっと知ってもらう必要があるだろうと。

 しかし、そんな矢先に起きたのが、所沢ダイオキシン騒動でした。農作物から高濃度のダイオキシンが検出されたとの誤報により、怒りの矛先が私たちに向けられ、産廃処理施設が悪い、出ていけと猛烈なバッシングにあいました。

――99年のことでしたね。

石坂:まだ父が社長をしていた頃です。地域にそっぽを向かれて非常に厳しい状況でしたが、誤解を受けたまま撤退すると業界のイメージが回復できずに終わってしまう。「しょせん産廃屋」という見られ方を変えていく必要性があると決意し、2002年に社長に就任するとともに、様々な取り組みを始めました。

――当初は、社員との軋轢もあったと聞きました。

石坂:社員の4割が辞めました。挨拶しよう、歩き方を変えようというところから始めたせいか、古参の社員からは「女性は細かくてイノベーションを起こせない」とも。恐らく彼のいうイノベーションは、多角経営や規模拡大という意味だったと思います。でも、“人の価値観を変える”“マイナスなものをプラスに転換する”というのも大事なイノベーションです。

 これまで日本は、経済活動の発達とともに様々なモノを生み出し、私たちはその恩恵を受けて快適な暮らしを手にしてきました。けれどその一方で、たくさんの廃棄物も生まれてきた。それらを“片づける人”と“つくり出す人”の評価価値に差がありすぎるのは、良い社会とはいえないと思うのです。そんなメッセージを発しながら、私たち自身も変わることで、世の中の評価を変えたい。チャレンジはそこからスタートしました。

――石坂産業に一歩足を踏み入れると、どの方も丁寧に挨拶をしてくださり、ホスピタリティにあふれた対応に驚かされます。2013年には経産省の「おもてなし経営企業」に選出、14年「埼玉県おもてなし大賞」も受賞していますが、やはり、そうした心が従業員の方にも浸透しているのでしょうか。

石坂:ありがとうございます。当初は、指示通りに行動するのが精いっぱい、それ以前になると、言われたことさえ反発するというところからのスタートでしたが、ようやく自分たちをどう見せるのかを考え、行動できるようになってきたのだと思います。“何をすればお客様の満足につながるかを考えましょう”と言い続けてきたことが実を結んできたのかなと。

――自身がメディアに出るのは、業界のイメージアップと活性化のためだと伺いました。

石坂:この業界は世界的に見ても非常に価値があるから、もっと自信を持って積極的に展開していこうと発信していきたいと思っています。この業界は平均年商が13~14億円くらいで中小企業が多いんです。生き残るには、やはり地域に特化して選ばれる会社であることが大事です。

 私がメディアに出ることで、「あの会社は儲からない事をたくさんやっているけれど、どうやらそうした取り組みが地域の評価につながるらしい」と知ってもらい、付加価値がつくような活動について、それぞれが考えるきっかけになればいいなと思います。今、若い2代目社長に代替わりをしている会社も多く、明るい兆しを感じています。

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くぬぎの森交流プラザは現代の名工・宮大工による木材のみ使用した伝統建築物。プラザ内にはカフェも併設(写真:鈴木愛子)
<インタビューを終えて>
広大な敷地の1割が主要事業である産廃プラント、残りの9割の敷地に美しい多様性の森が広がります。なぜここに年間1万人もの見学者が訪れ、世界中から注目されているのかわかりました。それは、奇跡的な場所だからでしょう。なぜ、一民間企業がそこまでやるのか?「地域に愛されるため。地域に愛されるためのコストは未来への投資です」「儲かる会社だけでは足りない、信頼できる会社、応援したくなる会社をつくりたい」と石坂さんは語ります。CSV(共通価値の創造)経営の実践を学ぶことができました。
麓幸子
麓 幸子(ふもと・さちこ)
日経BPヒット総合研究所長・執行役員
麓 幸子(ふもと・さちこ) 1984年筑波大学卒業。同年日経BP社入社。88年日経ウーマンの創刊メンバーとなる。06年日経ウーマン編集長。12年ビズライフ局長。日経ウーマン、日経ヘルスなど3媒体の発行人となる。14年日経BPヒット総合研究所長・執行役員。15年日経BP総合研究所副所長。16年現職。2014年法政大学大学院経営学研究科修士課程修了。内閣府、林野庁、経団連・21世紀政策研究所研究委員などを歴任。筑波大学非常勤講師。一男一女の母。著書等に『女性活躍の教科書』『なぜ、あの会社は女性管理職が順調に増えているのか』(日経BP社)、『企業力を高める―女性の活躍推進と働き方改革』(共著、経団連出版)、『就活生の親が今、知っておくべきこと』(日本経済新聞出版社)などがある。
■訂正履歴
初出時、リード文が一部重複していたため、重複部分を削除しました。 [2016/12/8 22:25]
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