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麓幸子の「地方を変える女性に会いに行く!」

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川を中心にまちを再生、目指すは小さな世界都市

Vol.06 森山奈美さん 御祓川代表取締役社長

聞き手:麓幸子=日経BPヒット総合研究所長・執行役員、取材&文=西尾英子【2016.10.12】

小さな世界都市という未来を育てる

――インターン生のアイデアなんですね。それがまさに想定外の結果につながったと。

森山:まさか元銀行が学校になるとは(笑)。ここの名前である「banco(バンコ)」も学生がつけました。イタリア語で銀行を指す言葉です。リノベーションの計画段階で、まちの人たちから意見を聞くなか、“子どもたちにまちに戻ってきてほしい”と思っている親たちが多いと知りました。でも、仕事がないから口に出せない。それならきちんとこのまちで仕事ができ、スキルも学べる場所があればいいのではということで、学校に決まったんです。

――資金の一部は、クラウドファンディングを使って集めたと伺いました。

森山:事業費として2700万円かかっていますが、ほとんどは地元の信用金庫からの融資。クラウドファンディングでは、125万円を集めました。御祓川大学で使えるチケットやお礼の品などで還元された分もありますが、残った分を使っています。

 学校を作る過程では、地域の人たちに意見を聞くなど、交流しながら進めました。「この場所をどうするか」を発表するためのシンポジウムには80人が集まっています。プロジェクトの経緯を「インターン生通信」としてまちの人に配ったり、ここで出たゴミを使ったガラクタアートを子どもたちと企画したりもしましたね。

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600年以上続く商店街、一本杉通りには明治25年創業の高澤ろうそく店(上)、大正15年創業の鳥居醤油店(中)など老舗が並ぶが、セレクトショップやおしゃれなカフェ、ギャラリーなど新しいショップも続々オープンしている。雑貨店「歩らり」(下)もそのひとつ。森山さんの会社はこの通りの一角にある(写真:鈴木愛子)

――事業の使命として「“小さな世界都市”という未来を育てる」というビジョンを掲げています。「小さな世界都市」とはどういった都市を想定されているのですか。

森山:小さくても世界に通用する文化や思想・商品などを持った都市を目指すものです。実はこれは、父の世代のマリンシティ構想の頃から言われていた言葉だったようです。「食祭市場」ができたのは、平成3年のバブル絶頂の頃。そんなイケイケの時代に、「小さな」とあえて掲げる彼らはすごいと改めて思います。

 七尾の有名な祭りに1000年前から続く「青柏祭(せいはくさい)」という祭りがあります。高さ12メートル、重さ20トンの日本一の山車が3日間かけてまちのなかを運行するお祭りです。明治時代あたりに書かれた祭りの祝詞のなかに、「七尾の港から世界の平和を祈る」といった内容が書かれているとか。当時から世界を見据えていたのかなと思うと感慨深いです。

社名の由来となった御祓川をバックに。七尾は中心市街地を流れる御祓川を中心に港町として発達してきた(写真:鈴木愛子)
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――七尾の開拓者たちは、視座が高くてスケールが大きい。それが森山さんにも引き継がれていると感じます。これまでまちづくりに取り組んできて、御祓川は5年目より単年度黒字を達成、現在5400万円(16年6月期)の売上となっています。成功のポイントはなんだと思われますか?

森山:もちろん私たちもまだ成功しているとは言えませんが、一番大事なのは、まちの未来を育くむ「人」を育て続けることではないでしょうか。まちは人間の寿命よりも長く続いていくものです。時代の変化に対応しながら、自分たちの手でまちをよくしていく人たちがどんどん育っていけば、100年後もまちは続いていく。そう確信しています。

<インタビューを終えて>

 森山さんを取材して感じたのはとても深い故郷・七尾への愛です。80年代、まちの再生に尽力した父親世代の情熱が継承されています。森山さんの取材の後、600年以上続く商店街である一本杉通りの老舗商店を森山さんの案内で訪れました。皆さん、森山さんと同じようにまちを愛し誇りを持ってのれんを守っています。まちには新たに移住した人のお店のオープンも続き、伝統と新しさが融合した、得も言われぬ魅力を放っています。

 明治の頃から世界を見据えていたという港町・七尾。森山さんの目指す「小さな世界都市」の、豊かで深い文化を垣間見ることができました。

麓幸子
麓 幸子(ふもと・さちこ)
日経BPヒット総合研究所長・執行役員
麓 幸子(ふもと・さちこ) 1984年筑波大学卒業。同年日経BP社入社。88年日経ウーマンの創刊メンバーとなる。06年日経ウーマン編集長。12年ビズライフ局長。日経ウーマン、日経ヘルスなど3媒体の発行人となる。14年日経BPヒット総合研究所長・執行役員。15年日経BP総合研究所副所長。16年現職。2014年法政大学大学院経営学研究科修士課程修了。内閣府、林野庁、経団連・21世紀政策研究所研究委員などを歴任。筑波大学非常勤講師。一男一女の母。著書等に『女性活躍の教科書』『なぜ、あの会社は女性管理職が順調に増えているのか』(日経BP社)、『企業力を高める―女性の活躍推進と働き方改革』(共著、経団連出版)、『就活生の親が今、知っておくべきこと』(日本経済新聞出版社)などがある。
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