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麓幸子の「地方を変える女性に会いに行く!」

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地方を拠点にオーガニックコットンで社会変革

Vol.04 渡邊智惠子さん(アバンティ代表取締役)

聞き手:麓幸子=日経BPヒット総合研究所長・執行役員、取材&文:吉楽美奈子【2016.7.28】

オーガニックコットン(認証機関に認められた農地で、栽培に使われる農薬・肥料の厳格な基準を守って育てられた綿花)による製品を扱う事業を25年前に立ち上げ、日本に普及させた先駆者が渡邊智惠子さんだ。日本を代表する社会起業家である。現在は、オーガニックコットンを通じた社会貢献事業も展開している。その拠点の1つが、2011年に長野県小諸市で開設した「小諸エコビレッジ」。来年には、本社も東京都新宿区から長野県小諸市に移転する予定だという。

「企業の本社が東京のような都会にあることを求められる時代ではない。ましてやオーガニックコットンのような事業であれば、土や自然に囲まれた中で会社経営をするという選択肢は自然な考えです。企業の本社を地方に移し、地方をもっと元気にする。それが今求められていると思います」と渡邊さんは言う。

渡邊智惠子(わたなべ・ちえこ)
1952年北海道生まれ。75年明治大学商学部卒業後、光学機器メーカーの日本代理店タスコジャパンに入社。英文経理、総務などを担当し、31歳で副社長に就任。85年、子会社として設立されたアバンティの代表取締役に33歳で就任。90年、タスコジャパンとの子会社関係を解消し、独立。オーガニックコットンの輸入を開始。96年より自社ブランド「プリスティン」を展開し、服や寝具など200アイテム以上を全国の直営店(8店舗)やオンラインで販売している。現在、従業員数53人、売り上げ約11億円(2015年度)。ソーシャル事業部門として09年に長野県小諸市に「小諸エコビレッジ」を開設。2011年「東北グランマの仕事づくり」、2012年「ふくしまオーガニックコットン」プロジェクトを立ち上げる。09年日経WOMAN「ウーマン・オブ・ザ・イヤ―」受賞。同年経済産業省「日本を代表するソーシャルビジネス55選」選出。10年NHK『プロフェッショナル仕事の流儀』に社会起業家として取り上げられる。著書に『女だからできたこと』(budori)(写真:大槻純一)
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女性が生活と仕事を両立しやすい「村」をつくりたかった

――オーガニックコットンの事業を25年前に立ち上げ、日本に普及させた先駆者として知られる渡邊さんが、2011年に長野県小諸市に「エコビレッジ」をつくりました。一度訪ねてみたいと思っていたのですが、今日、初めて見せていただき、とても広くて驚きました。

渡邊:ここ「小諸エコビレッジ」は、敷地が約1万4000坪あるんです。丘の向こうには綿や野菜を栽培しているオーガニック農園があり、その横には子どもたちが駆け回れるグラウンドがあります。林の奥には体育館や野外ステージ、炊事場などが点在しています。ここは東京都港区が所有する土地で、もともと港区内の学校の林間学校用施設(旧・港区小諸高原学園)として、昭和40年代から利用されていたのです。

――だから立派な体育館もあるのですね。

渡邊:そうなんです。施設の一部にアスベストが使われていたことや耐震性の問題で、2003年頃に廃止され、放置されていました。

 2009年に港区が土地の有効活用のため民間事業者に貸し出し募集を行ったとき、私たちが手を挙げて、港区と賃貸契約を結んだのです。長年使われていなかったので、当初は土地が背丈ほどの草に覆われて、大変でした。自分たちで草刈りや開墾をしたり、建物の修理をしたりして、7年かけて整備したんですよ。

――「小諸エコビレッジ」の運営はどのように行っているのですか?

渡邊:私どもの会社アバンティと、地元・小諸の住民主体でロハスな暮らしを推進する任意団体「こもろはす倶楽部」、太陽光発電の普及を進める「特定非営利活動法人 太陽光発電所ネットワーク」の3団体で、「一般社団法人 小諸エコビレッジ」を設立し、共同で運営しています。

――エコビレッジ内では具体的にどんな活動をしているのですか。

渡邊: 一つは「アバンティ農園」。敷地内に畑をつくり、オーガニック農法によるコットンや大豆、野菜などを育てて販売しています。農業体験も受け入れていて、国内だけでなく海外からも若者が滞在しに来ています。また、毎月一度、地元の生産者によるオーガニック野菜や天然酵母パン、手作り品などを販売する「ビオマルシェ」を開いています。毎回20店舗あまりが出店し、200人ほどのお客様が県内外から集まります。野外ステージではコンサートやイベントも開催して、地元出店者とお客様との交流の場をつくっています。

――敷地内に、小さな藁の家が建っていましたね。あれはなんですか?

渡邊:2013年から始めた「わくわく のびのび えこども塾」で子どもたちが建てたものです。この活動では、子どもたちが農作業をしたり、綿花から糸をつむいだり、小さな家を建てるワークショップを実施して、自然とふれあいながら「衣・食・住」を学べる場を提供しています。これまでに福島県の被災地の子どもたちや、児童養護施設の子どもたちを招待しました。

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「小諸エコビレッジ」を運営するメンバーたちと(左上)。毎月一度ビオマルシェを開催する(上中央)。田んぼも借りてお米をつくる(右上)。綿や野菜を栽培するオーガニック農園(左下)。もとは東京港区の林間学校用の施設だったので、体育館もある(右下)。(写真:上中央はアバンティ提供、それ以外は大槻純一)
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敷地内には、子どもたちがつくったわらの家と木の家がある。木の家の中は天井まで子どもたちの描いた絵が(写真:大槻純一)
小諸市で農業体験ができる(写真提供:アバンティ)
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――地方に新たな拠点をつくったのには、どんな意図があったのですか?

渡邊:いつか職住近接の「アバンティ村」をつくりたいというのが最大の目的です。私自身の経験からも、女性が結婚して子育てをしながらキャリアも高めるためには、保育と介護を企業が何らかの形でサポートしなくてはいけないと思っているんですね。住まいのそばに職場と託児所、託老所があって、その周りにオーガニック綿畑が広がっている――。そんな、女性が生活と仕事を両立しやすい「アバンティ村」の構想を、私は20年以上前から思い描いてきたんです。10年ほど前から、その拠点を探して地方をいろいろと見て回りました。その中で出会ったのが、この小諸の地だったのです。

――小諸での経験から、地方で活動を成功させるには何が必要だと感じていますか?

渡邊:あきらめないこと、でしょうか。外から地方に来て何かするには、準備が必要で、時間がかかります。私たちもここで7年間かけて準備を進め、ようやく来年、本社を移転させる目途が立ってきました。もう1つは、地元の方たちとコミュニケーションをちゃんととって、根っこの部分でつながっていくこと。私は、地元の自然と歴史を築いてきた方の知恵を大事にしたいといつも思っているんですね。何か決めるのにも、地元の方のいろいろな声を聴くので、正直、大変です。でも、活動を根付かせるためには、地元の方が持つ情報やつながりがとても大事なんですよね。

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