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麓幸子の「地方を変える女性に会いに行く!」

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沖縄ならではの産業を――県内初・創薬ベンチャー

Vol.15 奥キヌ子さん(レキオファーマ代表取締役社長)

聞き手:麓幸子(日経BP総研フェロー)、取材&文=金丸裕子【2018.6.18】

「沖縄ならではの産業を興したい」。戦後の沖縄が米軍統治下で復興へと立ち上がる時勢の中で育った一人の少女の強い思いは決して揺らぐことはなかった。沖縄県で育った奥キヌ子さんは、1991年沖縄初の創薬ベンチャー「レキオファーマ」を創業し、2005年、痔の治療薬「ジオン注」の開発に成功した。痔を切らずに治す画期的な薬剤で、現在では日本全国2400の医療機関で採用され、これまで55万人の治療に使われた。奥さんはなぜ沖縄で産業を興すことに挑み続け、創薬メーカーを設立したのだろうか。

奥キヌ子(おく きぬこ)
1946年沖縄県糸満市生まれ。23歳で貿易業を起業し、1980年より飲食店経営を始める。1988年頃に中国で痔疾患治療薬の存在を知り、1991年に医薬研究開発会社「株式会社中薬研」を設立。94年同社代表取締役に就任。2000年「レキオファーマ株式会社」に社名変更。2004年厚生労働省より新医薬品「ジオン注」の製造承認を取得し、翌年発売開始。2004年、「ジオン注」開発の実績を評価され経済産業大臣賞を受賞。2006年「ウーマン・オブ・ザ・イヤー」リーダー部門受賞。2017年「琉球新報賞」受賞。(写真:河野哲舟)
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クラブ経営者が医薬品と出会い、創薬ベンチャーを起業

――奥さんの仕事にかける情熱の原点には「沖縄に貢献したい」「沖縄ならではの産業を興したい」という、故郷に対する強い愛情があると感じます。昨年は、新薬や健康補助食品の研究開発・製品化を通じて沖縄経済の発達に寄与したということで琉球新報賞を受賞されました。しかも1964年に創設された同賞で、女性初の「経済・産業功労」分野での受賞でしたね。

奥社長(以下、奥) 「沖縄ならではの産業を興したい」という思いは、子どもの頃からありました。私が育った沖縄県糸満市は女性が働き者で、照屋敏子や金城夏子といった女性起業家を多く輩出しています。その土地柄に影響を受け、戦後の米軍統治下の環境を憂いながら育ちました。復帰後も沖縄は基地経済に依存し、基幹産業のサトウキビも助成金があるから成り立っています。こうした特異な環境に反対を唱えるだけの先輩たちに不甲斐なさを感じていました。私は、このままでいく訳にはいけない。何かを興して、私はここまでやったよ、次はあなたたちが引き継いでね、と後輩たちに託したくてここまでやってきました。

――沖縄で産業というと観光がすぐに浮かびますが、奥さんが選んだのは、創薬業であり、医療・健康分野です。成功のハードルが高い挑戦だと思うのですが、どういう経緯で、沖縄で創薬業の起業をすることになったのでしょうか。

 大学卒業後、最初に起業したのは貿易業でした。琉球大学では栄養学を専攻していましたが、所属した中国語クラブでの活動に夢中でした。クラブの先輩方から「中国、アジアとの架け橋となるように」との薫陶を受けたことがきっかけで、大学の2年次を休学して台湾留学したのです。台湾が緑豊かで地産自立をしていることに影響を受けまして、大学卒業後、一人で貿易会社を立ち上げました。沖縄を台湾のように緑豊かにし、サトウキビよりも付加価値のある基幹植物を見つけ出そうと思ったんです。沖縄と同じような気候風土の国を回り、亜熱帯植物を輸入販売することを始めました。仕事は面白いほどうまくいったのですが、農業を産業化させるには広大な土地を確保する必要がありました。

 結婚と出産で一時休止しましたが、農地確保のために再び始動しました。そうしたときに、たまたまスナックに行ったら酒を仕入れ値の4倍で出すと聞き、こんな利益率の高いビジネスはないと思って経験もないのに妹と二人でクラブを始めたのです。まともにご挨拶もお話もできない私なのに、なぜか繁盛してやめられなくなり、約20年続けることになったのです。

――クラブを経営しながらも、沖縄ならではの産業を探していたのですね。

 そうですね。夜の営業をし、昼間は沖縄にもっとふさわしい産業があるのではと探し続けていました。ある日、大学時代の先輩から、こんなにすごいものがあると「消痔霊」という内痔核(イボ痔)の薬を見せられました。手術をせずに注射することで治ると聞かされ、「あっ、これだ」とひらめきました。離島である沖縄では、小さくて付加価値があり、飛行機で輸送してもペイするものが必要だということを思っていたからです。薬であればそれにかなう、ずっと探し求めていたものに出会えたという思いがありました。

 ちょうどその頃、中国から帰国された方にお会いする機会がありました。「中国に10年住んで何が一番良かったかといえば、消痔霊で痔を治したこと」とおっしゃるのを聞き、この薬が持つ可能性を確信し、すぐに北京へと飛びました。開発者の教授にお会いすると、何と中国以外の国で開発するすべての権利を任されることになりました。北京では実際に「消痔霊」で痔を完治させた事例も紹介していただき、日本でのこの薬の開発は必ず成功すると自信を持ちました。

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