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麓幸子の「地方を変える女性に会いに行く!」

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飛騨の森林と世界中のクリエイターをデジタルでつなぎ、新たな地域産業を創出する

Vol.09 林千晶さん(飛騨の森でクマは踊る 代表取締役社長)

聞き手:麓幸子=日経BPヒット総合研究所長・執行役員、取材・文:谷口絵美【2017.2.22】

ポスト資本主義時代に、
世界に発信できることが日本にはたくさんあるはず

(撮影:大槻純一)
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――これまでの成果はどのようにとらえていますか。

 会社を設立した2015年はほとんど事業が動いていなかったのですが、2年目はカフェもオープンし、目標としていた年間3000万円程度の売り上げはほぼ達成しています。木材販売や合宿事業の手応えも確実にあり、きちんと告知できるようになったらもっといろんな人に来てもらえるだろうなと感じています。

 カフェ事業は人があまり通らない立地なので厳しいかなと思っていたのですが、300万円の売り上げ目標に対して倍近くを達成。2017年期は木材販売の領域をもっと伸ばしたいと思っています。

 ヒダクマは外部からの評判はすこぶるいいんです。FabCafeはすごく人気があるので、「うちの市でもやってくれませんか」という相談は多いですね。

――地元での評判はいかがですか。

 飛騨市の人々からすると、何をやっているかわかりづらい、という印象でしょう。最初からすぐに、「ようこそ」と受け入れてはもらえません。

 義務として何かを変えようと取り組んでいたら、心がくじける場面はたくさんあったと思います。よかれと思っていても、邪魔だと言われることだってある。でも、何を言われても「それはそうだ、自分だけが正しいわけじゃないよね」と思って続けてこれたのは、ベースに面白さや気持ちよさがあったからです。

 私たちは「広葉樹にはもっと可能性がある」ということを発信していますが、ベースにあるのは森の美しさに感動したことや、東京では味わえない感覚にワクワクしていることです。地方再生というと、とかく「やらねばならぬ」という文脈で語られることが多いですが、人は「楽しい」「おいしい」「面白い」がないと、継続的に動きません。

 それに、ちょっとしたものをすぐ「いいね」と飛びつくような文化だったら、この古川の美しい街並みは残っていなかっただろうと気づきました。外から来て仲間に入れてもらい、飛騨の文化を教わる「間借り」のプロセスを経て、じわりじわりブレンドしていくと何が起こるのか。この先が楽しみです。

――いま、国の政策として都会から地方への移住が促進されていますが、そのことについてはどう思いますか。

 私は1年地方、1年都会というように、両方につながっていることがいいと思っているんです。都会と地方では担っている役割が違いますし、東京や関西の窓口が、世界から来た人たちをどう受け止めているのかは知っている必要がある。プロジェクト的に地方に滞在しながら人と人とが交流することで、価値が生まれてくるような気がしています。

 ただ私自身、市が外部人材をアドバイザーとして招く施策の予算で呼ばれて、それがヒダクマを設立することにつながりました。そういう意味では、いろんな人にまずは来て体験してもらうことは大切だと思います。

――地方の再生に必要なものは何だと思いますか。

 私は出張でいろんな国に行く機会があるのですが、タスマニアでタクシーの運転手に「日本は俺たちのように古いものを捨ててしまわないというから、どんな国なのか行ってみたい」と言われたことがありました。聞けばその人の家は大きなバナナ農園をやっているという。今のバナナ栽培は、クローン技術で一つの細胞から全く同じバナナを大量に作るというもの。そうやってできたバナナは昔のようなおいしさはちっとも感じられないのだけれど、もう前のやり方には戻せない。でも日本の農業は違うと聞いている、と。

 日本の企業は変化を起こしづらいとよく言われますが、続けることの価値もあると思うんです。もちろん何も変わらなくてもいいわけではなく、長く続いたものを大切にしながら、変えなくてはいけないことは変えていく。そういう日本的なやり方って、ポスト資本主義になったときに世界に発信していける一つのあり方ではないでしょうか。

 幸せに生きることという価値がまず先にあって、お金を稼ぐことはそのための手段であるならば、利益だけを追求する時代の先に目指すべき答えは、案外日本にたくさん残っている気がします。

(撮影:大槻純一)
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<インタビューを終えて>
 このシリーズで林業を取り上げたいと思い、林業で活躍する女性はいなか…と探していたとき、「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2017」授賞式で林さんにお会いして、即取材を申し込みました。場所は「FabCafe Hida」。在来線が運休するくらいの大雪の日に取材しました。カフェに入ったら外国人の方がいて、カフェの奥には地元の若者が家具を作っていました。昨年は国内外のクリエイター200人がここを訪れたそうです。そのような多様な人たちが交流しデジタル技術を使って作り出される家具は、一点ものとも大量生産とも違う新たな「イノベーション家具」だと林さんは語ります。この中規模・中ロット戦略といえるものは、地域の産業振興の参考になるのではないでしょうか。次の時代に世界に誇れるものが、日本の地方にはたくさんある――。それを飛騨で実感しました。
麓幸子
麓 幸子(ふもと・さちこ)
日経BPヒット総合研究所長・執行役員
麓 幸子(ふもと・さちこ) 麓幸子(ふもと・さちこ) 1984年筑波大学卒業。同年日経BP社入社。88年日経ウーマンの創刊メンバーとなる。06年日経ウーマン編集長。12年ビズライフ局長。日経ウーマン、日経ヘルスなど3媒体の発行人となる。14年日経BPヒット総合研究所長・執行役員。15年日経BP総合研究所副所長。16年現職。2014年法政大学大学院経営学研究科修士課程修了。内閣府、林野庁、経団連・21世紀政策研究所研究委員などを歴任。筑波大学非常勤講師。一男一女の母。著書等に『女性活躍の教科書』『なぜ、あの会社は女性管理職が順調に増えているのか』(日経BP社)、『企業力を高める―女性の活躍推進と働き方改革』(共著、経団連出版)、『就活生の親が今、知っておくべきこと』(日本経済新聞出版社)などがある。
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