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地方で活発化する“人”への投資

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【加賀市】「米百俵」の精神で、IoT教育のモデル地域に

“人づくりの日本”を取り戻す――加賀市長 宮元 陸氏に聞く

河井 保博=日経BPクリーンテック研究所【2017.4.4】

――新型交付金の申請内容を見ると、人材育成と同時に、産業創出イノベーション推進事業も含まれています。

宮元 人材を育てたのはいいけれど、それが東京、大阪に吸い込まれていってしまうのでは意味がありません。だから人材を地元に定着させるための仕組みも作っていく必要があります。そのための策の一つが、IoT人材育成機関によるスタートアップ企業のインキュベーションです。神山町のように、「ここでやってみたい」と思わせるような環境を醸成していけば、企業は自然と集まってくるはずです。そのための下地を作っていきます。

 とはいえ、まずフォーカスするのは地元の企業です。人を育てて地元の企業に戻していく。このサイクルを作れば、それぞれの企業の中で動きが生まれていきます。企業を改革したり、IoTでの新事業の流れを作ってもらったり。そして相乗効果で外からも人が入ってきて、という流れに期待しています。どんな化学変化が起こるかは分かりません。でも、だからこそ、とにかくこれを続けていくべきだと考えています。ただ、出口感としてはまだ足りない。もっといろいろ仕掛けていかないと。

――IoT人材を育てれば、既存の地域産業も活性化しますか。

宮元 もちろんです。加賀市には伝統文化も、工芸品も、梨やぶどうといった特産の農産物もあります。優秀な部品メーカーもある。そういうところをもっと伸ばしていくことも、もう一つの柱でなければいけません。

 こうした産業の活性化や、新しい価値創造にIoTが役立つと考えています。その意味では、加賀市を様々なIoTの実証の場にしていけたらと考えています。例えば石川県にはルビーロマンという品種のぶどうがあります。石川県の農業試験場が開発した品種で、初競りでは最高で1房100万円くらいの値が付きます。加賀市にも大きな産地が2カ所くらいあります。ところが、これが栽培が難しく、40%くらいしか出荷できません。この生産規模では、海外輸出には堪えられません。そこで、出荷率を高めるためにIoTを使おうとしています。栽培中のデータを取って、最適な栽培方法を探るわけです。もちろん、観光業でもIoTは活躍するはずです。製造業も、IoTやロボット技術は欠かせません。

 実は、ロボット研究開発のために地元企業と立ち上げたロボット研究会は、最初は自分たちでロボットを作ろうという方針でしたが、メンバーが乗り気ではありませんでした。それが、徐々にロボットを使って自分たちの生産性を高めようというように、活動の方向性が変化して、自主的に活動するようになってきました。こうした動きが、いろいろな領域に生まれてくることを期待しています。

――産業振興として、今後どのような展開をお考えですか。

宮元 貿易(輸出)をもっと強化したいと思っています。伝統工芸品や農産物の海外への販路拡大ですね。2016年10月に加賀市貿易推進機構を発足させ、アジアなど他国へのルートづくりに着手しました。今後、欧州、手のついていないイスラム圏などにも手を広げていきたい。既に民間企業同士で貿易はしていますが、企業がもっと安心して乗ってこられるように、それを市としてバックアップしていく考えです。

 もう一つは、海外交流に関する取り組みに注力します。2017年度から第2次総合計画の基本構想を作りますが、そこでの将来像は「自然・歴史・伝統が息づく住んでいたい、来てみたい街」です。これを加速させるために、海外交流に今まで以上に注力します。

 もちろん、それに伴って市内の環境整備も必要です。例えば交流が深い台湾からは、年間に3万人以上の観光客が来ます。外国人観光客5万数千人の半分以上です。これをもっと増やしていきたいのですが、現状では体験観光が手薄です。そこをもっと充実させる必要があります。雪や料理、伝統工芸などにからめた体験観光を強化していくつもりです。

 そうした動きの一つとして、地理的に近隣である福井県4市1町に声かけてインバウンド推進機構を立ち上げました。観光産業で伸びているところは、主に県庁所在地や首都圏周辺です。加賀市は県境だから、よほどのことをやらないと増えない。そこで、県境を逆手にとって福井県の市町と組みました。そのほうが観光資源もバリエーションが出ますから。これには、県をまたいだ地方創生として地方創生推進交付金ももらっています。

 もちろん、IoTやロボットの活用促進も力を入れます。企業や起業家を焚き付けて、IoTやロボット技術を使って何ができるかを分かってもらうことが先決ですね。

 技術革新は、おそらく想像できない進み方をするはずです。その中で、加賀市の人材育成から産業活性化の取り組みが、日本の地方創生のモデル、ないし手本になればいい。自分のところだけがよくなっても意味がない。加賀市は、そのための実験場ととらえてもらってもいいかもしれません。ロボットやAIが普及することで47%の職がなくなると言われますが、一方では今は存在していない職も生まれるでしょう。それを先取りできる社会づくりを、加賀市で先陣を切って進めたいと考えています。

宮元 陸(みやもと・りく)
加賀市長
宮元 陸(みやもと・りく) 1956年生まれ。法政大学法学部卒業。衆議院議員(森喜朗氏)秘書。1999年、石川県議会議員に初当選。以後、4期連続石川県議会議員。県議会副議長・県監査委員・県議会運営委員会委員を歴任。2013年10月、加賀市長に就任。趣味は読書とウォーキング。
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