POSデータは万能ではない

 商品がずらりと並ぶ小売店の売り場で人工知能が活躍する――そう聞いてあなたはどんな光景を思い浮かべるだろう。スタッフの代わりにロボットが接客する姿だろうか。しかしここで紹介するのはロボットではなく、形をもたないシステムが売り場の問題点をあぶり出し、改善を促す事例である。

 これまで正しく把握されていなかった来店者の属性や行動を収集・解析し、来店したのになぜ買わずに店を出たのか、その原因を把握するのに人工知能(AI)が活用されているという。

ABEJA社長でCTOの岡田陽介氏(写真:中野和志)

 「商品が1個しか売れなかった場合、お客が10人来て1個売れたのか、それとも100人来て1個なのか。それによって改善策はまったく違います。しかし今までの小売店のマーケティングではそこが見過ごされてきました。POSを活用した購入者のデータはあっても、『買わなかったお客』のデータが存在しなかったからです」

 そう語るのはABEJA(アベジャ)社長の岡田陽介氏。ABEJAは人工知能の一種であるディープラーニングの活用を得意とし、商用化を進めている世界でも数少ない企業だ。

 ディープラーニングとは、コンピュータに深い階層的な学習をさせ、精度の高い認識を行う技術である。たとえば任意の画像から人物のみを抽出し、顔認証を行って年齢や性別を割り出すのも、ディープラーニングが得意とする領域だ。

 その技術を使って、店舗に設置したカメラで捉えた動画から来店者を抽出し、曜日や時間別に何人が訪れ、買い物したかを把握すれば、接客スタッフのシフト調整がより適切に行えるだろう。さらに動画をコンピュータに解析させて来店者の年齢や性別を自動的に集計し、見込み客の属性を割り出せば、マーケティングへの幅広い活用が期待できる。もちろん活用法はそれだけに留まらない。

Nextお客の動線は「売り」に直結する